今日から間に合う!年末までにやっておきたいサイバー対策チェックリスト【中小企業・個人事業主向け】

今日から間に合う!年末までにやっておきたいサイバー対策チェックリスト【中小企業・個人事業主向け】
Day1〜3で「なぜ年末にリスクが高まるのか」「どんなリスクがあるのか」「どんな事故が起きているのか」を見てきました。Day4では、いよいよ「では何をすればいいのか」を具体的なチェックリストの形で整理します。
はじめに:「全部やる」は難しくても、「ここだけは」という優先順位を決める
サイバー対策の情報を集めると、
- 「ゼロトラスト」「EDR」「SOC」など専門用語が多い
- やるべきことが多すぎて、どこから手をつけたらいいか分からない
と感じる方も多いと思います。
そこでこの記事では、
「年末までに、現実的にできる範囲」
「コストを抑えながら、効果が大きいところ」
「中小企業・個人事業主にも実行しやすい内容」
にしぼって、5つのカテゴリー別チェックリストにまとめました。
すべてを完璧にやる必要はありません。
まずは「A:必須(できれば年末までに)」「B:できれば早めに」「C:時間を見て順次」というイメージで、優先順位をつけて見ていきましょう。
目次
4-1. チェック1:人・ルールに関する対策(連絡体制・注意喚起)
技術的な対策よりも、まずは「人」と「連絡体制」を整えるだけで、防げるトラブルはかなり多くなります。
✅ 1-1. 休暇中にインシデントが起きたときの連絡フローを決めたか A:必須
- 「何かおかしい」と感じたときに、最初に連絡する人(窓口)が決まっている
- システムベンダー・セキュリティベンダー・ネットワーク事業者などの緊急連絡先が一覧でまとまっている
- その一覧を、紙・クラウドなど社外からも見られる形で共有している
→ 「誰に連絡すればいいか分からない」は、被害を広げる最大の要因のひとつです。
✅ 1-2. 従業員への「年末の注意喚起メール」を送る準備をしたか A:必須
- 年末の前に、全員に向けて次のような内容をまとめたメールを送る準備ができている
- 不審なメール(添付ファイル・URL)への注意
- 「振込先の変更」「急ぎの支払い依頼」は必ず別経路で確認すること
- トラブル時の連絡先と「してはいけないこと」(勝手に電源を切る、など)
→ 1通のメールで、従業員全体の「心理的なスキ」をかなり減らせます。
✅ 1-3. 社外持ち出しやテレワーク時のルールを年末向けに再確認したか B:できれば早めに
- ノートPC・USBメモリ・紙資料などの社外持ち出しルールがある
- カフェ・実家・コワーキングスペースなどから接続するときの注意点を共有している
- 「自宅PCからの業務は禁止/許可」の線引きをはっきりさせている
4-2. チェック2:メールとID周りの対策(フィッシング・なりすまし対策)
Day3でも見たように、年末はメール経由のインシデントが増えやすい時期です。ここを重点的に固めると、効果が高くなります。
✅ 2-1. 主要クラウドサービスの「多要素認証(MFA)」を有効にしたか A:必須
- メール(Microsoft 365 / Google Workspaceなど)
- クラウドストレージ(OneDrive / Google Drive / Boxなど)
- 主要業務システム(会計・販売管理・顧客管理など)
について、パスワードだけでなく、SMS・認証アプリなどによる多要素認証を有効にしているか確認します。
→ 「ID・パスワードが漏れても、すぐには乗っ取られにくくなる」ため、コストに対して非常に効果が高い対策です。
✅ 2-2. パスワードの「使い回し」をやめる方向で動き始めたか B:できれば早めに
- 少なくとも、社内の重要システムだけは「同じパスワードを使わない」方針にする
- パスワード管理ツールの利用を検討する、あるいは推奨する
- 「誕生日+会社名」など、推測しやすいパスワードを使っていないか確認する
✅ 2-3. 「お金」が絡むメールの確認ルールを決めたか A:必須
- 振込先の変更・急ぎの支払い依頼などは、必ず電話・チャットなど別経路で確認する
- 金額の大きな送金には、2名以上の承認を入れるルールを設ける
- 請求書ファイルは、送信元アドレスだけでなく、内容や文面にも違和感がないかを確認する
→ ビジネスメール詐欺は「文面がとても自然」なことが多いため、メール以外の確認手段をルール化することが重要です。
4-3. チェック3:PC・スマホ・社内ネットワークの対策
次は、実際に使っている端末やネットワークまわりです。
「年末は大きな変更を避けたい」という気持ちも分かるので、リスクが高い部分から優先的に見ていきます。
✅ 3-1. OS・ソフト・セキュリティ製品の更新状況を確認したか A:必須
- Windows / macOS / スマホOS が最新に近い状態になっているか
- ウイルス対策ソフトやEDRの定義ファイル・エージェントが最新か
- ブラウザ(Chrome / Edge / Safari 等)の更新が適用されているか
→ 「大きなバージョンアップ」は慎重でOKですが、セキュリティ更新(脆弱性対応)は優先度高と考えましょう。
✅ 3-2. 重要データのバックアップを「オフライン」も含めて確認したか A:必須
- 基幹システムやファイルサーバーのバックアップが正常に取得されているかを確認
- バックアップデータを、ランサムウェアから守るために「ネットワークから切り離したコピー」として保管している
- 復元テストを一度もしたことがない場合、一部データだけでも試しに復元してみる
✅ 3-3. 社内Wi-Fiやルータの設定を見直したか B:できれば早めに
- Wi-Fiのパスワードが「簡単すぎる」「初期設定のまま」になっていないか
- 業務用Wi-Fiと来客用Wi-Fiがネットワーク的に分かれている(分けられていると理想)
- ブロードバンドルータのファームウェア更新が長期間行われていない場合、更新を検討する
4-4. チェック4:クラウド・重要システムの見直しポイント
クラウドサービスは便利で安全性も高い一方、
設定や運用の仕方次第でリスクが増えも減りもします。
✅ 4-1. アカウントの「権限が強すぎる人」がいないか確認したか B:できれば早めに
- 退職者や長期不在者のアカウントが残ったまま・管理者権限のままになっていないか
- 管理者権限(Admin)の人数を、本当に必要な人だけに絞っているか
- 共有アカウント(共通ID)に、必要以上の権限がついていないか
✅ 4-2. 共有リンクやフォルダの設定を確認したか B:できれば早めに
- クラウドストレージの共有リンクが「リンクを知っている全員に公開」になっていないか
- 退職者・外部委託先に、今もアクセス権が残ったままのフォルダがないか
- 顧客情報や機密資料が入ったフォルダには、本当に必要な人だけアクセス権があるか
✅ 4-3. ログイン履歴やアラート設定を一度は確認したか C:時間を見て順次
- 管理画面から、海外IPや深夜の不審なログインがないか確認してみる
- 「一定回数以上のログイン失敗」「新しい場所からのログイン」などのアラート機能があれば有効にする
→ 日常的な監視までできなくても、「一度見ておく」「怪しいときに見方が分かる」だけでも大きな差になります。
4-5. チェック5:体制・手順・保険の見直し(「もしも」の準備)
最後は、「起きてしまったとき」のダメージを減らす準備です。
ここは年末に一気に整えるというより、今年・来年と段階的に整えていくイメージでOKです。
✅ 5-1. 「インシデント発生時にやること」のメモを作ったか A:必須
- 「メールがおかしいと感じたとき」「PCの動きが急におかしくなったとき」など、場面別の簡単な行動メモを作る
- そこに、「やること」と一緒に「やってはいけないこと」も書く
- 勝手に初期化しない
- 怪しいファイルをあちこちにコピーしない
- 自分だけで判断して放置しない
✅ 5-2. サイバー保険や事故対応サービスの有無を確認したか B:できれば早めに
- 現在加入している保険や、取引先との契約に、サイバー事故に関する補償や支援が含まれているか確認する
- 含まれていない場合でも、「どのレベルまで備えたいか」を社内で話し合っておく
→ 保険だけに頼るのではなく、「自助(自社での対策)+共助(外部サービス・保険)」のバランスを考えることが大切です。
✅ 5-3. 来年以降の「年中行事」として続けるイメージを持ったか C:時間を見て順次
- 「年末(12月)」= サイバーリスクチェック&対策見直しの月、としてカレンダーに組み込む
- 「半期ごと」や「決算のタイミング」など、見直しのタイミングをざっくり決める
→ Day5で詳しく扱いますが、「一度きりの対策」で終わらせず、毎年の習慣にしていくことが長期的な安心につながります。
4-6. まとめ・明日以降の予告
今日のポイント整理
- サイバー対策は「全部やろう」とすると重くなりますが、人・メール・端末・クラウド・体制の5つに分けると、どこから手をつけるか決めやすくなる。
- 特に年末までに優先したいのは、
- 連絡フローと注意喚起メールの整備(人・ルール)
- 多要素認証・お金のメールの確認ルール(メール・ID)
- OS・ソフト更新と重要データのバックアップ確認(端末・ネットワーク)
- クラウドや権限設定、保険やインシデント対応手順などは、今年〜来年にかけて段階的に整えていくテーマとして位置づけると進めやすい。
- 「うちには関係ない」と思うのではなく、「うちの規模に合った現実的な対策」を選び取る姿勢が大切。
明日のDay5では、
「今年の学びをどう振り返るか」
「来年以降も続けるための“しくみ化”のコツ」
「自社だけで抱えこまず、外部とうまく連携する考え方」
といった内容をまとめ、年末のサイバー対策を「一度きりの頑張り」で終わらせないための考え方を整理していきます。
5. まとめ
- 年末までに中小企業・個人事業主が取り組みたいサイバー対策は、「人・ルール」「メール・ID」「端末・ネットワーク」「クラウド・権限」「体制・保険」の5つに分けて整理すると分かりやすい。
- 優先度A(必須)としては、①休暇中の連絡フローと注意喚起メールの整備、②主要クラウドサービスへの多要素認証の導入、③お金が絡むメールの確認ルールの徹底、④OS・ソフト・セキュリティ製品の更新確認と重要データのバックアップ確認、⑤インシデント時の簡単な行動メモの作成が挙げられる。
- 優先度B(できれば早めに)としては、社外持ち出しルールの見直し、パスワード使い回しの削減、Wi-Fiやルータ設定の見直し、クラウド権限・共有設定の点検、サイバー保険や事故対応サービスの有無確認などがある。
- 優先度C(時間を見て順次)として、クラウドのログイン履歴やアラート設定の確認、年末や半期ごとの「サイバー対策見直し」の年中行事化など、中長期的な仕組みづくりが位置づけられる。
- ポイントは、「全部やる」ことを目指すのではなく、自社の規模や状況に合わせて優先順位をつけ、コスト対効果が高い対策から一歩ずつ進めることである。
6. FAQ
Q1. 今からだと、年末までに全部終わらない気がします。どこから手をつけるべきでしょうか?
A. まずは、この記事で優先度Aとした項目から取り組むのがおすすめです。具体的には「連絡フロー」「注意喚起メール」「多要素認証」「バックアップ確認」「お金のメールの確認ルール」の5つです。これらはコストも時間も比較的かからず、リスク低減効果が大きい部分です。
Q2. 社員が少ない会社でも、ここまでやる必要がありますか?
A. 社員数が少ない会社ほど、1人が長時間トラブル対応に取られることの影響が大きくなります。その意味で、「最低限の対策をしておく価値」はむしろ高いと言えます。人数が少ない分、ルール決めや共有が早く進む、というメリットもあります。
Q3. 自社だけで判断するのが不安です。どのタイミングで専門家に相談すべきでしょうか?
A. 例えば、次のようなタイミングが相談の目安になります。
- 「一度事故を経験しており、同じことを繰り返したくない」と感じたとき
- 「クラウド・ネットワーク構成が複雑になってきた」と感じたとき
- 取引先からセキュリティに関するアンケートや要件が届いたとき
その前段階として、この記事のチェックリストをベースに「現状こういう状態です」とまとめておくと、専門家側も状況をつかみやすくなります。
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