終活・エンディングノートの準備:相続・贈与・整理を見据えた書き方完全ガイド(連載①)

終活を「まだ早い」と先送りしていませんか。
最初の一歩でつまずかないために、まずはエンディングノートを整えることが有効です。
本記事は60代の親世代と、その親を支える子世代が、相続・贈与・整理までを見据えて準備を始めるための実践ガイドです。
連載(①エンディングノート/②葬儀とお墓/③財産の整理と把握/④デジタル情報の整理)の第1回として、今日から書き始められる具体的手順と注意点をまとめました。

目次

エンディングノートとは?遺言書との違い

エンディングノートは、もしもの時の連絡先、医療・介護の希望、葬儀や供養、財産や重要書類の所在、人生のメッセージなどを自由形式でまとめるノートです。
遺言書のような法的効力はありませんが、家族が判断に迷わないための意思表示と情報整理の道具として大きな役割を果たします。

項目エンディングノート遺言書
法的効力なし(意思伝達が目的)あり(方式要件を満たす場合)
主な役割希望・情報の整理と共有財産の分配を法的に指示
柔軟性高い(自由に加筆・更新)低い(厳格な形式)
費用低コスト/自作で可方式により費用が発生

親世代・子世代それぞれのメリット

親世代のメリット

  • 準備と整理:資産・契約・デジタル情報の所在を明確化。
  • 意思の可視化:延命治療や葬儀の希望、形見分けの考えを共有。
  • トラブル予防:相続・贈与の方向性をあらかじめ示せる。

子世代のメリット

  • 意思決定の負担減:急な判断が必要な場面で迷わない。
  • 手続きの効率化:連絡先や書類の所在がわかり、手続きが迅速。
  • 家族間の調整が円滑:事前に話し合いができ、誤解や温度差を減らせる。

書くべき内容チェックリスト(相続・贈与・整理に効く)

  • 基本情報:氏名・生年月日・連絡先・かかりつけ医。
  • 家族・関係者:親族図、キーパーソン、緊急連絡先。
  • 医療・介護の希望:延命治療、在宅/施設の希望、代理意思決定の考え。
  • 葬儀・お墓の希望:宗派、形式、規模、予算、納骨方法。
  • 財産の概要:不動産、預貯金、有価証券、保険、負債(おおまかな所在)。
  • 重要書類の所在:通帳、印鑑、保険証券、年金、マイナンバー、契約書などの保管場所。
  • デジタル情報:主要サービス名、端末の引き継ぎ方法(パスワードは別管理)。
  • 形見分け・贈与の意向:思い出の品の行き先、生前贈与の考え。
  • メッセージ:家族・友人・地域への言葉、伝えたい価値観。
カテゴリ具体例
金融資産銀行名・支店名・口座種別/証券会社名(残高は書かず所在のみでも可)
不動産所在地、登記簿・固定資産税の通知の保管場所
保険保険会社・商品名・証券番号・担当者
負債借入先、毎月の引落口座、残高確認方法
デジタルスマホ・PCの保管場所、主要クラウド/サブスク名、バックアップ方法

相続・贈与・整理との関係と注意点

相続:エンディングノートは遺産分割の指針になりますが、法的拘束力はありません
分け方を確実に反映したい場合は、遺言書(公正証書遺言など)を検討しましょう。

贈与:生前贈与は税制や手続きにルールがあります。
ノートには「意向」を残し、具体の実行は専門家に相談のうえ進めるのが安全です。

整理:死後の片付けや契約解約をスムーズにするには、所在情報の明記が最重要。
解約・名義変更の連絡先や契約IDまで残せると実務が早まります。

※本記事は一般的な情報提供であり、法的・税務上の助言ではありません。個別事情は専門家へご相談ください。

統計・最新動向

各種調査では、エンディングノートの作成経験者は概ね1〜2割関心はあるが未着手の層が約半数という傾向が見られます。
家族での事前対話が進んでいる世帯ほど、医療・葬儀・相続の意思決定が円滑になるという指摘もあります。
まずは「所在情報だけ」でも書き始める人が増えています。

準備の5ステップ(今日からできる)

1)ノートの選び方

市販のテンプレ付きノート/自作(紙やデジタル)いずれでもOK。
家族が見つけやすい場所に保管し、表紙や冒頭に「ここに大事な情報があります」と明記。

2)資産と契約の棚卸(所在から)

まずは一覧だけ。
例:銀行名・支店名/証券会社/保険会社/年金/公共料金/サブスク/携帯・インターネット等。

3)医療・介護・葬儀の希望を言語化

延命治療の考え、介護方針、葬儀の規模や宗派、予算上限、連絡してほしい人などを簡潔に。

4)重要書類とデジタルの保管動線

通帳・印鑑・保険証券・年金手帳・不動産関連・パスポート等の置き場所を統一。
パスワードは別紙やパスワードマネージャーにし、保管方法のみをノートに記載。

5)更新ルールを決める

誕生日・年末・確定申告後など、年1回の見直し日を固定。
更新履歴(更新日・更新箇所)を残すと家族が把握しやすい。

よくある失敗と回避策

  • 失敗:残高やパスワードを直接記載→回避:所在と保管方法だけを記録。
  • 失敗:ノートを誰にも知らせない→回避:保管場所と連絡先を家族代表に共有。
  • 失敗:一気に完璧を目指す→回避:「目次→所在→希望」の順で段階的に。
  • 失敗:独りで決めてしまう→回避:家族と短時間でも定期的に対話。

子世代ができるサポート

  • ヒアリングの同席:医療・介護・葬儀の希望を一緒に確認。
  • 所在マップ作成:家・金庫・引き出し・クラウドの位置関係を図に。
  • デジタル引き継ぎ:端末ロック解除方法の管理方針を決める(方法のみ記載)。
  • 更新の伴走:年1回の見直し日をカレンダー共有。

そのまま使える見出しテンプレ

  • 私の連絡先/緊急時の連絡先
  • 医療・介護の希望(延命治療/意思決定の代理)
  • 葬儀・お墓の希望(形式/規模/予算/宗派)
  • 財産の概要(不動産/預貯金/証券/保険/負債)
  • 重要書類の所在(通帳・印鑑/保険証券/年金/契約書)
  • デジタル情報(端末・クラウド・サブスク)
  • 相続・贈与に関する考え(意向)
  • 形見分けの希望
  • 大切な人へのメッセージ
  • 更新履歴(更新日・更新箇所)

連載の全体像と次回予告(②葬儀やお墓)

本連載は全4回。
①エンディングノート(本記事)→②葬儀やお墓(費用相場・形式・選び方)→③財産の整理と把握(資産棚卸とリスク整理)→④デジタル情報の整理(アカウントと端末の備え)。
次回は「葬儀やお墓」について、判断ポイントと準備リストを解説します。

まとめ

エンディングノートは終活の土台です。
法的効力はなくても、相続・贈与・整理の実務に直結する「所在情報」と「意思」を可視化できます。
完璧を目指すより、今日できる最小単位(所在だけ、希望の見出しだけ)から。
年1回の更新ルールを決め、家族と共有すれば、将来の不安はぐっと小さくなります。
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