改正下請法が改正で強化された具体的規制ポイント


はじめに
前回は、改正下請法の背景と全体像を整理しました。今回は、中小企業や個人事業主が特に注目すべき具体的な改正点を解説します。取引交渉・支払条件・物流まで幅広く影響するため、要点を正しく理解して備えることが重要です。
目次
1. 一方的な価格決定の禁止(交渉プロセス重視)
2. 手形払いの全面禁止
3. 運送委託の対象化(物流取引の追加)
4. 従業員数基準の新設
5. 用語変更とイメージ刷新
1. 一方的な価格決定の禁止(交渉プロセス重視)
これまで「買いたたき行為」が禁止されていましたが、今回の改正では「交渉そのものを行わない」行為にも規制がかかります。
・受託側から価格交渉を申し入れても無視
・必要な説明資料を出さずに一方的に価格を決定
こうした行為は新たな違反行為として禁止されます。
2. 手形払いの全面禁止
従来は手形払いが慣習的に使われてきましたが、改正後は支払手段として手形を認めないことになります。
さらに、電子記録債権やファクタリングであっても、支払期日までに代金満額を得られない場合は認められません。
これにより、資金繰りを不必要に圧迫する取引慣行が解消されることが期待されます。
3. 運送委託の対象化(物流取引の追加)
改正により、新たに運送の委託が規制対象に加わります。これは、荷待ちや荷役の無償提供といった物流現場の不公正取引に対応するためです。
これにより、発荷主と元請運送事業者との間でも、適正な価格転嫁・交渉が促進されます。
4. 従業員数基準の新設
これまでの適用は主に「資本金規模」で判断されていましたが、今後は従業員数基準も導入されます。
・製造委託等:300人以下
・役務提供等:100人以下
これにより、資本金が少ない大企業や、形式的に対象外とされていた企業も規制対象となります。
5. 用語変更とイメージ刷新
法律上の用語も見直されます。
・「下請事業者」 → 「中小受託事業者」
・「親事業者」 → 「委託事業者」
・法律名 → 「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」
この変更には、「上下関係」的な響きを薄め、発注者と受注者の対等な関係を示す意図があります。
まとめ
重要ポイントは以下の4つです。
・交渉プロセスを無視した一方的価格決定の禁止
・手形払いの禁止
・運送取引の追加
・従業員基準の導入
FAQ
Q1. 手形払い禁止はいつからですか?
A. 2026年1月1日施行です。ただし一部規定は公布日から適用されています。
Q2. 従業員基準は資本金基準と併用されますか?
A. はい、資本金基準に加えて従業員数基準が導入されます。
Q3. 運送取引はどの範囲が対象ですか?
A. 発荷主から運送事業者への委託取引が対象に追加されます。