中小受託取引適正化法(取適法)とは?—2026年1月施行の全体像と経営者が最初に確認すべき点

中小受託取引適正化法(取適法)とは?—2026年1月施行の全体像と経営者が最初に確認すべき点

価格転嫁や支払条件の是正が注目される中、2026年1月1日から「下請法」は中小受託取引適正化法(通称:取適法)へ。
対象範囲の拡大と禁止行為の追加など、中小零細企業でも“委託する側”として無関係ではいられない変更が入ります。
本記事では3回シリーズの初回として、全体像を俯瞰し最初に押さえるべき論点を整理します。


取適法の位置づけと改正ポイント

  • 名称が「下請法」から中小受託取引適正化法(取適法)へ。
  • 禁止行為の拡充(協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払いの禁止 等)。
  • 対象拡大:従来の資本金基準に従業員基準が追加。
  • 運送分野の課題に対応し、対象取引に特定運送委託を追加。

誰が対象か(資本金+従業員の二本立て)

新たに従業員基準が導入され、以下の目安が加わります。

  • 製造委託等:300人
  • 役務提供等:100人

経営者の視点:自社が「委託する側」になると義務と禁止の対象になります。
資本金・従業員数だけで「対象外」と決めつけず、相手先との相対関係取引類型で毎件判断するのが安全です。

何の取引が対象か

  • 製造委託/修理委託
  • 特定運送委託(新規):製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託
  • 情報成果物作成委託(例:プログラム作成など)
  • 役務提供委託(情報処理・倉庫保管・一部運送など)

義務と禁止行為の全体像(まず俯瞰)

主な義務

  1. 発注内容の明示(書面・メール等の電磁的方法可)
  2. 書類作成・2年保存
  3. 60日以内かつできる限り短い支払期日設定
  4. 遅延時の年14.6%の遅延利息

主な禁止(抜粋)

  • 受領拒否/支払遅延/減額/返品/買いたたき/購入・利用強制/報復措置/不当なやり直し等
  • 協議に応じない一方的な代金決定の禁止
  • 手形払いの禁止

フリーランス法との関係

フリーランス・事業者間取引適正化等法は主に個人の受託者(従業員なし)との取引をカバーし、就業環境の配慮まで含みます。
一方、取適法は事業者間の価格・支払等にフォーカス。
案件によっては両法の適用領域が重なるため、二重チェックが安心です。


まとめ

  • 2026/1/1から取適法が施行。対象拡大&禁止強化。
  • 従業員基準(300人/100人)追加で、中小でも“委託側”の義務が生じ得る。
  • 手形払いの禁止協議に応じない一方的な代金決定の禁止は要注意。

FAQ

Q1. うちは中小なので関係ないのでは?
従業員基準の追加により、中小でも委託側として義務・禁止の対象になり得ます。発注ごとに関係性取引類型を確認しましょう。
Q2. メールだけで発注条件を明示してよい?
電磁的方法(メール等)で明示可です。相手の承諾の有無にかかわらず明示でき、記録は2年保存が基本です。
Q3. 手形は短期ならOK?
取適法では手形払いそのものが禁止です。電子記録債権や一括決済も、期日まで満額を得られないスキームは不可となります。

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