建設業法改正の全体像:2025年12月までの施行スケジュールと実務影響


建設業法改正の全体像:2025年12月までの施行スケジュールと実務影響
資材価格の高止まりや人手不足が続くなか、改正建設業法は「契約前の情報開示」「契約後の誠実協議」「労務費・工期の下限ガード」「ICT活用と専任合理化」を柱に、現場のしわ寄せを抑制する仕組みを整えます。
本稿では全体像と重要日付、経営者の初動をまとめます。
1. 改正の背景:人手不足・賃金・資材価格
- 就業者は長期減少・高齢化(55歳以上が約37%、29歳以下は約12%)。
- 賃金は全産業平均より低く、労働時間は長めという構造的課題。
- 資材費は高止まりし、価格転嫁の遅れが現場の処遇や安全に影響。
2. 施行スケジュール(経営者が押さえる日付)
ポイント:段階施行。2025年12月までに全面適用される想定で準備を。
- 2024年:価格転嫁協議の円滑化(おそれ情報通知/契約書への変更方法明記/誠実協議)、ICT活用、専任義務の合理化などを順次施行。
- 2025年:公布から1年6か月以内(目安:12月中)に、著しく低い労務費の禁止/受注者の原価割れ契約の禁止/工期ダンピング対策強化が施行。
3. 価格転嫁ルールの要点(契約前/後)
契約前:情報通知と契約書の整備
- 資材供給不足・価格高騰等のおそれ情報を、統計やメーカー告知等の客観資料とともに通知。
- 契約書に請負代金の変更方法を法定記載。無効な「変更しない」等の文言を排除。
契約後:誠実協議の実務
- 高騰が顕在化した場合、受注者は変更協議を申出可能。
- 注文者は誠実協議(公共は義務)に応じ、合理的期間・根拠資料をもって判断。
4. 働き方改革・生産性向上(工期・ICT・専任)
- 工期ダンピング対策:著しく短い工期による契約締結を受注者側にも禁止。
- ICT活用:遠隔監理やデータ共有の指針整備、施工体制台帳の提出合理化(公共)。
- 専任義務の合理化:条件を満たせば、営業所専任技術者の現場兼務が可能(移動容易性・遠隔確認・兼務現場数の上限等)。
5. 経営者の初動チェックリスト
- 契約書雛形:変更方法条項の整備/「変更しない」等の無効文言の排除
- 社内フロー:おそれ情報の収集→通知→証跡保存
- 現場運用:遠隔監理の機器・手順、兼任ルールの整備
- 見積運用:労務費の基準を踏まえた内訳提示と原価割れ禁止の教育
- 協議記録:誠実協議の記録テンプレ運用
まとめ
- 2025年12月までに、価格転嫁の制度化/工期・労務費の下限ガード/ICT・専任合理化が出揃う。
- 「契約・見積・現場」を三位一体で整備することが、紛争と逸失利益の回避に直結。
FAQ
「おそれ情報」は何を根拠に通知すれば良いですか?
国・業界統計、メーカー値上げ通知、報道等の客観資料を添付し、見積書交付時に電磁的方法で通知します。
「契約変更を認めない」旨の条項は許されますか?
法定記載事項の趣旨に反するため不可。変更方法を明記し、協議前提で運用します。
専任合理化の実務要件は?
現場間移動の容易性、ICTによる遠隔確認、兼任現場数の上限など、指針に沿った体制整備が必要です。
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