マンション共有部分の火災保険が高騰する理由と、理事会が最初にやるべき3つのこと

マンション共有部分の火災保険が高騰する理由と、理事会が最初にやるべき3つのこと

はじめに

更新のたびに保険料が跳ね上がる、築年数が進み引受制限に触れかけている、補償や免責のどこをどう削るべきか判断できない——理事会でこうした声が増えています。


現状を正しく整理し、共有/専有の線引き補償範囲免責と小口事故の扱い診断にもとづくメンテ計画をセットで設計できれば、無理のない保険設計と中長期のコスト最適化が見えてきます。


本シリーズでは、基礎→実践→応用→行動の順で、“マンションの診断”を起点にした見直し方法まで整理します。


共有部分の定義と責任範囲

共有部分の代表例:廊下・階段・エレベーター・エントランス・外壁・屋根・付属設備(駐輪場やフェンス等)。
これらは原則として管理組合が一括で付保します(共用部分一括付保方式)。


要点スニペット
  • 共有部分は管理組合が保険手配、専有部分は各区分所有者の個別契約が原則
  • 高騰期の原則=「建物の診断 × 補償の設計 × 免責と事故運用」の三位一体

高騰・引受制限の背景

見積が前年の1.3〜1.8倍になるケースが散見されます。
原因は、事故頻度の上昇、築年数の進行に伴うリスク顕在化、メンテナンス状況のばらつきなど。
条件の微調整だけでは翌年の再値上げを防ぎにくく、建物側のリスク診断とセットでの見直しが現実的です。


「何を削る?免責を上げる?」という条件いじりの前に、実態評価(診断)を。

専有との線引き・情報整理フレーム

理事会での混乱は、共有/専有の境界が曖昧なまま議論することに起因します。
チェックリスト化し、図面リンクを添えて合意を固定化しましょう。


  • 部位ごとの帰属(外壁・天井・配管・バルコニー等)
  • 補償の対象/対象外(破損・盗難・漏水など)
  • 申請から復旧までのルール(連絡・写真・見積・承認)

参考

施設賠償(第三者への損害)と物的損害(建物・設備)の線引きも早めに統一。
約款の表現差は条件表で吸収します。

最初の3ステップ(台帳・事故履歴・簡易診断)

  1. 資産台帳の整備:屋上防水、給排水、受水槽、機械式駐車場等の設備と更新年を一覧化。
  2. 事故履歴の棚卸し:過去5年の事故種別・再発有無・修繕費を可視化。小口事故の多発に注意。
  3. 簡易リスク診断:理事会セルフチェック+第三者のマンション診断の実施可否を決定(漏水・外装・防水・電気・機械設備)。

※診断結果は、補償の優先順位・免責水準・メンテ計画・更新タイミング(工事後の再見積)まで一貫設計する土台になります。


心理トリガーと合意形成

  • 具体化(曖昧さ回避):共有/専有の境界をチェックリストで固定。
  • アンカリング:保険料だけでなく総コスト(事故頻度×免責×メンテ)で議論。
  • 一貫性:診断→修繕→更新の一貫プロセスを標準化。

まとめ

共有部分の対象と責任を整理し、保険条件の議論を“建物の実態”に結びつけることから始めましょう。
最初の一歩は資産台帳・事故履歴・簡易診断の3点セットです。


FAQ(よくある質問)

Q1. 専有部分の火災保険は管理組合で入れますか?
A. 原則、各区分所有者が個別契約です。共有は組合が一括付保します。
Q2. 値上げ局面でまず削るべき補償は?
A. 一律の正解はありません。診断→リスク別に優先順位を付けて設計します。
Q3. 地震保険は必須?
A. 地域性と耐震性能、財政余力で判断。部分付保や限度額の設計も検討余地です。

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