共有部分の火災保険「契約方式・補償範囲・免責・保険料要因」を一気に理解|Day2

共有部分の火災保険「契約方式・補償範囲・免責・保険料要因」を一気に理解

はじめに

いきなり見積比較に走る前に、まずは言葉合わせ(共通言語化)を行うと議論が早く、ミスも減ります。
本日は契約方式→補償範囲→免責→保険料の決定要因の順に整理し、Day3以降の実践へ橋渡しします。


契約方式(共用部分一括付保方式)

管理組合が共有部分を一括で付保するのが基本です(専有部分は各戸が個別契約)。
契約にあたっては、管理規約上の共有範囲と図面の整合を事前に確認しましょう。


  • 対象:廊下・階段・エレベーター・外壁・屋上防水・機械設備 等
  • 評価:再調達価額(推奨)か時価か、付保割合の方針を明確化
  • 関連:施設賠償の付帯有無、管理会社の包括契約の利用可否

混乱を避けるコツ:「共有/専有の線引き表」をつくり、理事会で合意→以降の見積依頼に添付。

補償範囲(物的損害・賠償・地震)

物的損害(建物・設備)

  • 火災・落雷・爆発
  • 風災・雹災・雪災
  • 水災・水濡れ・漏水
  • 盗難・破損 等

※対象・免責・限度額は約款や特約で差が出やすい項目です。


賠償責任(施設賠償)

共有部分の欠陥・管理上の過失等で第三者に損害を与えた場合の賠償をカバー。
限度額と免責の設計を、来客動線・設備リスクから逆算します。


地震保険(特約)

加入の要否・保険金額は地域性・耐震性能・予算で最適化。
部分付保限度額設定で現実解を探ります。


免責(自己負担)設計と小口事故の扱い

事故頻度が高いほど保険料は上昇します。小規模事故は自費対応とし、免責を引き上げることで保険料の抑制を狙う設計が有力です。
ただし、現金準備(修繕積立金)と意思決定ルールが前提条件になります。


事故規模基本方針理事会で決めること
10〜30万円未満原則自費領収・写真・原因の台帳化/翌期対策へ反映
30〜100万円免責と比較して申請判断閾値・承認フロー・再発時の対策条件
100万円超原則申請復旧範囲と専有/共有の役割分担の明文化

保険料の主な決定要因(5要素)

  1. 戸数・規模(延床):母集団が大きいほどリスクが分散する一方、設備点数が増えて事故ポテンシャルも増加。
  2. 築年数・構造・地域:経年劣化や災害リスクの分布により料率へ影響。
  3. メンテナンス状況:屋上防水・配管・外装等の更新履歴がエビデンス。
  4. 補償範囲・付保割合・評価方法:再調達/時価、限度額、特約の要不要。
  5. 事故履歴:件数・金額・再発性。多頻度は翌年の見積に直結
総コスト=年間保険料+(平均事故件数×自費分)+予防メンテ費用 で判断すると、免責引上げ×予防工事の価値が比較しやすくなります。

まとめ

用語の統一→免責設計→事故運用までが基礎。
土台が合えば、見積比較の「条件ブレ」を防げます。
Day3では、この基礎を使って診断→対策→更新交渉の事例をみていきます。


FAQ(よくある質問)

Q1. 施設賠償の目安金額は?
A. 来客動線や設備リスクで異なります。事故シナリオから逆算し、財政余力と合わせて設計してください。
Q2. 地震保険は全額付保が良い?
A. 予算と耐震性能次第。部分付保限度額設定も現実解です。
Q3. 漏水はどこまで補償?
A. 原因・損害範囲・専有/共有の帰属で変動。約款の確認と事前合意が重要です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の契約・設計は各社の約款や管理規約、物件状況により異なります。