中小企業こそ要注意:なぜ今ランサムウェア被害が増えているのか?

はじめに
ニュースで「大手企業がサイバー攻撃でシステム停止」といった見出しを見るたびに、こんなふうに感じたことはないでしょうか。
「うちは小さい会社だし、そこまで狙われることはないだろう」
ところが、各種調査では、ランサムウェアの被害を受けた企業のうち、規模の小さな企業が多数を占めるというデータが出ています。大企業だけでなく、中小企業・小規模事業者も、例外なく標的になっているのが現実です。
それでも、現場の感覚としては、
- IT担当者がいない
- 情報システムは外注任せ
- とりあえずウイルス対策ソフトは入っている
といった理由から、「何とかなるだろう」と後回しになりがちです。
そこでこの5日間シリーズでは、
- 今、どんなランサムウェア被害が起きているのか
- 中小企業にとって、どこが一番危ないのか
- そして、今からでも間に合う、現実的な対策
を、できるだけ専門用語を避けてお伝えしていきます。
Day1の今日は、「現状を知ること」に集中します。怖がらせるためではなく、正しく恐れて、ムリなく対策するための第一歩です。
目次
- ランサムウェアとは?サイバー攻撃の「身代金ビジネス」
- 日本で実際に起きている被害の傾向
- なぜ中小企業が狙われやすいのか?3つの理由
- 「うちは大丈夫」と思ってしまう心理的な落とし穴
- 今日からできる、まずは意識を変える3つのポイント
- まとめ:正しく怖がれば、対策はまだ間に合う
1. ランサムウェアとは?サイバー攻撃の「身代金ビジネス」
ランサムウェアは、社内のパソコンやサーバーのデータを勝手に暗号化し、「元に戻してほしければお金を払え」と要求する攻撃のことです。
最近では、
- データを暗号化するだけでなく、
- 盗み出したデータを「公開するぞ」と脅す
といった、「二重脅迫」型の攻撃も増えています。
つまり、 「復旧したいから支払う」のか、 「情報をばらまかれたくないから支払う」のか、 どちらにしても企業側が追い詰められやすい構造になっています。
2. 日本で実際に起きている被害の傾向
日本国内でも、ここ数年でランサムウェア被害は増え続けてきました。
- 被害の報告では、中小企業の件数が大企業を上回るという傾向が指摘されています。
- 民間の調査でも、被害企業のうち中小企業が半数以上を占めるとされるレポートがあります。
被害が起きると、
- 数週間〜1か月以上、システムが止まる
- 取引先とのやり取りが止まり、売上が落ちる
- 顧客情報の漏えいで信用が傷つく
といった、経営に直結するダメージになります。
中には、復旧に1,000万円以上の費用がかかった、という事例も報告されています。
ニュースでは大手企業の話題が取り上げられがちですが、実際には「名前の知られていない中小企業」の被害が多いことは、あまり報道されていません。
3. なぜ中小企業が狙われやすいのか?3つの理由
理由1:セキュリティ投資が手薄になりやすい
- 専任の情報システム担当者がいない
- 古いVPN機器やサーバーをそのまま使っている
- ソフトウェア更新(アップデート)が後回しになりがち
侵入経路の多くが、VPN機器やリモートデスクトップなど、テレワーク用の仕組みの弱点を突かれているケースだと報告されています。
「メールの怪しい添付ファイルに気をつけていれば大丈夫」と思われがちですが、最近は機器やソフトの「設定の甘さ」や「古さ」のスキを狙うパターンが主流になっています。
理由2:取引先・サプライチェーンの“入口”として狙われる
中小企業そのものの情報だけでなく、その会社の先にいる大企業や自治体を狙って攻撃されることもあります。
- 大企業の下請けとしてシステムに接続している
- 共通のクラウドサービスを利用している
こうした関係を悪用し、「弱いところ(中小企業)から突破する」やり方です。
理由3:支払いに応じてもらえる可能性が高いと見られている
攻撃者からすると、
- セキュリティは強くない
- でも業務が止まると資金繰りが厳しくなる
- 情報漏えいが公になると、取引停止のリスクも大きい
という中小企業は、「お金を払ってくれるかもしれないターゲット」に見えてしまいます。
つまり、「狙いやすくて、払ってもらえそう」──この2つの理由から、中小企業が標的になりやすくなっています。
4. 「うちは大丈夫」と思ってしまう心理的な落とし穴
多くの中小企業で共通するのが、次のような心理です。
- 「うちは地方の小さな会社だから、狙うメリットがない」
- 「ITはそこまで使っていないから大丈夫」
- 「何かあったら、そのとき考えればいい」
これは人間の「正常性バイアス」と呼ばれる心理で、自分にとって都合の悪い情報を、つい「たいしたことはない」と無意識に軽く見てしまうクセです。
しかし、ランサムウェアは、
- 業種も規模も問わず攻撃してくる
- 自動化されたツールで、機械的に世界中をスキャンしている
という性質があり、「誰か特定の会社を恨んで攻撃する」というより、
「弱いところが見つかったら、そこを機械的に攻撃する」
という“量産型ビジネス”に近いものです。
ですから、「狙われるような会社じゃないから大丈夫」という考え方は、残念ながら現実と合わなくなっています。
5. 今日からできる、まずは意識を変える3つのポイント
Day1では、あえて細かい対策よりも「考え方」を整理することに集中します。具体的な技術的対策はDay2以降で詳しく扱います。
ポイント1:「大企業だけの話」ではなく「自社の経営リスク」として見る
- ランサムウェアは、売上・信頼・取引継続に直結するリスクです。
- 経営リスクとして、地震や火災と同じレベルで検討する必要があります。
ポイント2:メールより“見えない入口”が危ないと知る
- 古いVPN機器やリモート接続、弱いパスワードが攻撃の入口になりやすいことを理解する。
- 「メール対策だけでは足りない」という前提で考える。
この点は、公的機関が出している注意喚起資料でも繰り返し指摘されています。
ポイント3:「今からやる」だけで、被害を減らせる可能性は高い
- バックアップ
- アップデート
- パスワードの見直し
など、基本的な対策を継続するだけでも、被害を防げるケースは多くあります。
「完璧でなくても、今から少しずつ」──この姿勢が、ランサムウェア対策でもっとも大事なスタートラインです。
7. まとめ
本日のポイント
- ランサムウェアは「データを人質にして身代金を要求する」サイバー攻撃で、最近はデータを盗んで公開をちらつかせる手口も増えている。
- 日本でも被害は続いており、中小企業の被害件数は大企業より多いという調査結果もある。
- 侵入経路の多くは、古いVPN機器やリモート接続など、テレワーク関連の弱点を突いたものが中心で、メールだけを警戒しても不十分。
- 「うちは小さいから大丈夫」という考え方は、攻撃者の実態(自動的に“弱いところ”を探して攻撃する)と合っていない。
- 完璧である必要はなく、バックアップ・アップデート・パスワード見直しなど、基本的な対策を「今から始める」だけでも被害は減らせる可能性が高い。
次回のDay2では、「ランサムウェアはどうやって会社の中に入り込むのか?」──攻撃の入口と仕組みを、できるだけやさしい言葉で解説していきます。
8. FAQ
Q1. ランサムウェアに狙われるのは、やっぱり大企業が中心では?
A. 報道で目立つのは大企業ですが、各種調査では、中小企業の被害件数の方が多いという結果が出ています。規模に関係なく、攻撃者が「入りやすい」と判断したところが狙われているのが実情です。
Q2. セキュリティソフトを入れていれば、ランサムウェアは防げますか?
A. セキュリティソフトは重要な対策の一つですが、それだけでは不十分です。VPN機器の脆弱性や弱いパスワード、古いシステムなど、「設定」や「運用」の問題を狙う攻撃が増えているため、ソフトに加えて、運用ルールの見直しが必要です。
Q3. 具体的な対策は、社内に詳しい人がいないと難しくないですか?
A. たしかに高度な設定は専門家の助けがあった方が安全です。ただ、
- 定期的なバックアップ
- ソフトのアップデート
- パスワードの強化
など、経営者の意識と簡単なルール作りだけで始められる対策も多くあります。Day2以降で、専門知識がなくても取り組めるポイントを整理してお伝えします。
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