2026年だけ生命保険料控除が増える?時限措置の正体と3つの注意点

2026年だけ生命保険料控除が増える?時限措置の正体と3つの注意点
2026年分の所得税から、生命保険料控除が一時的に拡大される──そんなニュースや、保険会社からのお知らせを目にして、
「今のうちに保険を増やしたほうが得なのかな?」
「うちも子どもがいるから、何かしたほうがいい?」
と感じている方も多いのではないでしょうか。
実はこの制度、対象となる人・期間・金額がかなり限られています。しかも、「控除が増えるから」といって、そのまま保険を増やすと、家計を圧迫してしまうリスクもあります。
この記事ではまず、
- 2026年分の生命保険料控除の時限措置は「何がどう変わるのか」
- 誰が対象で、どのくらい得になるのか
- 今のうちに「焦ってやらないほうがいいこと」
を、できるだけやさしい言葉で整理します。
2026年分だけの「時限措置」とは?基本をやさしく整理
まずは今回のテーマである「時限措置」から整理します。
2026年分(令和8年分)の所得税について、生命保険料控除のうち、「一般生命保険料控除(新制度)」の上限額が一時的に引き上げられます。
- 現行:年間の控除上限 4万円
- 2026年分だけ:上限 6万円
となるイメージです。
ただし、この上限6万円になるのは「所得税」の一般生命保険料控除部分だけで、介護医療保険料控除や個人年金保険料控除を含めた合計の上限は12万円のまま変わりません。
さらに、この拡大は2026年分だけの1年間限りの措置とされています。
誰が対象?23歳未満の扶養親族がポイント
今回の時限措置は、すべての人が対象ではありません。条件は次のとおりです。
対象となる人の条件(概要)
- 2026年分の所得税の計算をする人(2026年の収入に対する税金)
- その人に23歳未満の扶養親族がいること(子どもなど)
- 対象となる生命保険は「新制度の一般生命保険料控除」の対象契約
- 一時払の生命保険など、一部は特例から除外されるケースもある
ここで重要なのは、
「子どもがいるご家庭向けの、子育て世帯支援としての制度」だということです。
つまり、独身のサラリーマンで扶養親族がいない場合は、この時限措置による控除枠拡大の直接の恩恵はありません。
とはいえ、独身の方にもこのニュースをきっかけに、「保険に入りませんか?」という営業トークが来る可能性はあります。そのときに何が自分には関係して、何が関係ないのかを知っておくことが大切です。
いくら得する?増える控除額と税金の軽減イメージ
では、この時限措置で実際にどのくらい得をするのかを、ざっくりイメージしてみましょう。
- 控除上限:4万円 → 6万円(+2万円)
- 控除が増える=「課税される所得」が2万円少なくなる、ということ
ここから減る税金の金額は、おおまかに 「2万円 × あなたの所得税率」 です。
たとえば:
- 所得税率 5%の人:2万円 × 5% = 1,000円
- 所得税率 10%の人:2万円 × 10% = 2,000円
- 所得税率 20%の人:2万円 × 20% = 4,000円
といったイメージになります(住民税は今回の特例の対象外)。
ここでお伝えしたいのは、「控除枠が増えたからといって、何万円も手取りが増えるわけではない」ということです。
もちろん、少しでも税金が軽くなるのはありがたいことです。ですが、
「控除のために、月々の保険料をムリに増やす」
ということをしてしまうと、増えた控除額以上に、家計の負担が重くなる可能性があります。
今から焦って「やらないほうがいい」3つのこと
2026年の時限措置を前に、これだけは焦ってやらないほうがいいことを3つ挙げておきます。
① 「控除枠を埋めるためだけ」に保険を増やす
「せっかく6万円まで控除できるなら、その分まで保険に入らないと損」
「今ならおトクですよ」と言われて、その場で保険料を増やしてしまう
こうした行動は、本末転倒になりがちです。
控除で戻ってくるお金は「数千円レベル」なのに、毎月の保険料は何千円〜何万円も増えることがあるからです。
② 一時払保険など、大きな保険料を“税金対策目的だけ”で契約する
一時払の生命保険の一部は、今回の時限措置の対象外とされています。
「税金対策になるから」と言われて、大きなまとまったお金を保険に振り分けてしまうと、
- 生活資金や教育資金が手元から減る
- 解約するときに元本割れする可能性がある
など、リスクのほうが大きくなる場合もあります。
③ 2026年の特例だけを軸に、長期の保険を決めてしまう
生命保険は、多くの場合10年、20年、あるいは一生続く契約です。
それを「2026年だけの時限措置」を軸に決めてしまうのは、“1年のために10年以上縛られる”ようなものになりかねません。
だからこそ「保険」より先に「家計」を見直す必要がある
ここまでお読みいただくと、
「じゃあ、どう考えればいいの?」
と思われるかもしれません。
結論から言うと、「保険の見直し」だけに飛びつくのではなく、まず「家計全体」を見直すことが大切です。
たとえばこんな順番です。
- 今の家計の収支(毎月いくら入ってきて、いくら出ているか)
- すでに加入している保険・住宅ローン・教育費の見込み
- 万が一のとき、病気になったとき、老後…どこが不安か
- その不安をカバーするために、
- 公的な保障(遺族年金・健康保険など)でどこまで足りるか
- その上で、民間保険がどれくらい必要なのか
この流れで考えた結果として、
「ちょうど必要な保障を増やすタイミングが2026年ごろになりそう」
であれば、そのときに“おまけとして”時限措置を活かすのがよい使い方です。
まとめ:2026年特例は「おまけ」と考え、冷静に準備を
ここまでのポイントを整理します。
- 2026年分の所得税で、23歳未満の扶養親族がいる人は、一般生命保険料控除の上限が4万円 → 6万円に一時的に拡大されます(所得税のみ)。
- これは1年間だけの時限措置で、控除の合計上限は12万円のままです。
- 実際に減る税金は、控除の増えた分×所得税率で数千円レベルのことが多く、「控除枠を埋めるためだけの保険加入」は家計を圧迫するリスクがあります。
- 一時払保険の一部は特例の対象外であり、税金対策だけで大きな保険料を払うのは危険です。
- まずは家計全体と将来のライフプランを整理し、そのうえで2026年特例を“おまけ”として活用する姿勢が大切です。
- 保険商品だけでなく「家計全体」を一緒に見てくれるFPを選ぶことが、これからの対策の第一歩になります。
次回(Day2)では、「実際にどれくらい税金が変わるのか?」をざっくりシミュレーションしながら、
「本当に得する人」と「そうでもない人」の違いを、もう少し具体的に見ていきます。
この記事の要点まとめ
- 2026年分の所得税に限り、23歳未満の扶養親族がいる人は、一般生命保険料控除の上限が4万円→6万円に一時拡大されます。
- これは1年間だけの子育て世帯支援の時限措置で、介護医療・個人年金を含めた控除の合計上限12万円は変わりません。
- 控除枠が広がっても、実際に減る税金は数千円レベルのことが多く、「控除枠を埋めるためだけの保険加入」は家計を圧迫するリスクがあります。
- 一時払保険の一部は特例の対象外であり、税金対策だけで大きな保険料を払うのは危険です。
- まずは家計全体と将来のライフプランを整理し、そのうえで2026年特例を“おまけ”として活用する姿勢が大切です。
- 保険商品だけでなく「家計全体」を一緒に見てくれるFPを選ぶことが、これからの対策の第一歩になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年分の生命保険料控除の時限措置は、住民税にも関係ありますか?
A. いいえ、今回の拡大は所得税の一般生命保険料控除のみが対象で、住民税の控除上限(合計7万円)は現時点で変更なしとされています。
Q2. 独身で子どもがいないサラリーマンですが、何か対策は必要ですか?
A. 今回の時限措置による「控除枠の拡大」は、23歳未満の扶養親族がいる人が対象です。直接の恩恵はありませんが、このニュースをきっかけに「保険に入りませんか?」という提案を受ける可能性はあります。そのときは、自分の必要な保障額と家計への負担を基準に判断しましょう。
Q3. 2026年までに新しく保険に入らないと損ですか?
A. 「時限措置のためだけ」に保険に入る必要はありません。保険は長期の契約なので、1年間の控除額よりも、今後の家計やライフプランとのバランスのほうがずっと重要です。必要な保障を増やすタイミングがたまたま2026年前後なら、そのときに特例を“プラスの要素”として活かせば十分です。
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