2026年「6万円特例」で実際いくら得?年収・保険料別にざっくりシミュレーション

2026年「6万円特例」で実際いくら得?年収・保険料別にざっくりシミュレーション
このシリーズのDay1では、2026年分の生命保険料控除に「1年間だけの時限措置」があり、一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に広がること、そして「控除のために保険を増やすのは本末転倒になりがち」というお話をしました。
では、実際のところ、いくらぐらい税金が軽くなるのか気になっている方も多いと思います。
そこでDay2では、
- 年間の保険料ごとに、控除額がどれくらい変わるのか
- 年収(税率)の違いで、実際の「手取り」の差はいくらぐらいなのか
- 「本当に得しやすい人」と「そうでもない人」の違い
を、できるだけシンプルな数字でイメージできるように整理していきます。
数字を見ると、「控除のために保険を増やすより、家計全体を整えたほうが大事」という理由が、よりはっきり見えてきます。
まずはおさらい:2026年の「6万円特例」で何が変わる?
今回のシミュレーションの前提になる部分だけ、簡単におさらいします。
- 対象は23歳未満の扶養親族がいる人(子どもなど)
- 対象となるのは、新制度の「一般生命保険料控除」(新契約)
- 2026年分(令和8年分)の所得税に限り、控除の上限が4万円 → 6万円に拡大
- 介護医療保険料控除・個人年金保険料控除を含む合計上限は12万円のまま
さらに、一般生命保険料控除(新契約)の計算式そのものも、2026年分だけ次のように変わる予定です。
2026年分(特例年)の一般生命保険料控除(新契約)の計算イメージ
※「年間の一般生命保険料(新制度・新契約)」を前提にしています。
- 年間保険料 3万円以下:保険料の全額が控除額
- 3万円超〜6万円以下:保険料 × 1/2 + 1万5,000円
- 6万円超〜12万円以下:保険料 × 1/4 + 3万円
- 12万円超:一律 6万円(上限)
※ここでは分かりやすさを優先してざっくりと整理しています。実際の計算は、年末調整や確定申告の際に配布される早見表や、税務署・国税庁の情報でご確認ください。
年間保険料ごとの控除額を比較してみる
では、2025年までの通常年と、2026年の特例年で、一般生命保険料控除(新契約)がどのくらい違うのかを、いくつかの金額で比較してみましょう。
ここでは、わかりやすくするために次の前提で考えます。
- 対象:新制度の一般生命保険(新契約)の年間保険料
- 旧契約や、介護医療・個人年金などは一旦置いて、一般の生命保険だけを切り出して考える
例1:年間3万円の一般生命保険料の場合
| 年間保険料 | 通常年(〜2025年)控除額 | 2026年特例年 控除額 | 控除額の差(増えた分) |
|---|---|---|---|
| 3万円 | 2万5,000円 | 3万円 | +5,000円 |
通常年は、
- 2万円超〜4万円以下:保険料 × 1/2 + 1万円
というルールなので、
3万円 × 1/2 + 1万円 = 1万5,000円+1万円 = 2万5,000円
特例年は「3万円以下は全額控除」なので、3万円が控除額になります。
例2:年間6万円の一般生命保険料の場合
| 年間保険料 | 通常年(〜2025年)控除額 | 2026年特例年 控除額 | 控除額の差(増えた分) |
|---|---|---|---|
| 6万円 | 3万5,000円 | 4万5,000円 | +1万円 |
通常年は、
- 4万円超〜8万円以下:保険料 × 1/4 + 2万円
なので、
6万円 × 1/4 + 2万円 = 1万5,000円+2万円 = 3万5,000円
特例年は、
- 3万円超〜6万円以下:保険料 × 1/2 + 1万5,000円
なので、
6万円 × 1/2 + 1万5,000円 = 3万円+1万5,000円 = 4万5,000円
例3:年間12万円の一般生命保険料の場合
| 年間保険料 | 通常年(〜2025年)控除額 | 2026年特例年 控除額 | 控除額の差(増えた分) |
|---|---|---|---|
| 12万円 | 4万円(上限) | 6万円(上限) | +2万円 |
通常年では、8万円を超えると一律4万円が上限になります。
特例年では、
- 6万円超〜12万円以下:保険料 × 1/4 + 3万円
となるので、
12万円 × 1/4 + 3万円 = 3万円+3万円 = 6万円
例4:年間18万円の一般生命保険料の場合
| 年間保険料 | 通常年(〜2025年)控除額 | 2026年特例年 控除額 | 控除額の差(増えた分) |
|---|---|---|---|
| 18万円 | 4万円(上限) | 6万円(上限) | +2万円 |
18万円のように大きな保険料を払っている場合でも、控除額そのものは4万円 → 6万円への増加で、差は2万円です。
※ここでは一般生命保険料控除だけを取り出して比較しています。実際には、介護医療・個人年金との合計上限(12万円)や、旧契約との組み合わせなども関係します。
年収・税率別で見る「実際の手取りの差」
では、控除額が増えたことで実際に減る税金はどのくらいでしょうか。
基本的な考え方は、とてもシンプルです。
「増えた控除額 × あなたの所得税率 = 減る所得税の金額」
代表的なケースでざっくりイメージ
先ほどの例で出てきた「控除額の差」をそのまま使って、年収(税率)の目安ごとに表にしてみます。
| 年収のイメージ | 所得税率の目安 | 控除差 5,000円のとき | 控除差 1万円のとき | 控除差 2万円のとき |
|---|---|---|---|---|
| 年収 400〜500万円台 | 5% | 約250円 | 約500円 | 約1,000円 |
| 年収 600〜700万円台 | 10% | 約500円 | 約1,000円 | 約2,000円 |
| 年収 800〜1,000万円台 | 20% | 約1,000円 | 約2,000円 | 約4,000円 |
たとえば、
- 年間12万円の保険料 → 控除額が2万円増える
- 所得税率 10%の方 → 2万円 × 10% = 2,000円
- 所得税率 20%の方 → 2万円 × 20% = 4,000円
といったイメージになります。
※住民税については、今回の「6万円特例」の対象外とされているため、変わるのはあくまで所得税部分です。実際の税率は、扶養状況や他の所得控除などによって変わります。
得しやすい人・そうでもない人の違い
ここまでの数字をふまえて、「比較的メリットを受けやすい人」と「そうでもない人」をざっくり整理してみます。
① 比較的メリットを受けやすい人
- 23歳未満の子どもを扶養している(子育て世帯)
- 一般生命保険の年間保険料が、すでに6万円〜12万円程度ある
- 他の区分(介護医療・個人年金)を合わせても、まだ合計12万円の上限に達していない
- 所得税率が10%以上のゾーンにいる
こうした方は、特に何も新しい保険に入らなくても、「すでに払っている保険料」で控除額が自動的に増える可能性があります。
大きな金額ではありませんが、数千円程度の節税効果が期待できるイメージです。
② あまり大きな差が出にくい人
- 一般生命保険の年間保険料が、そもそも小さい(2〜3万円程度など)
- 介護医療・個人年金などを含めると、すでに生命保険料控除全体で12万円の上限近くまで来ている
- 所得税率が5%のゾーンで、もともとの税額自体がそれほど大きくない
この場合、控除額が増えても数百円〜1,000円前後の差にとどまることも多くなります。
③ そもそも今回の特例の対象外の人
- 独身で、扶養している子どもがいないサラリーマン
- 子どもがすでに23歳以上になっている世帯
この方たちは、今回の「6万円特例」の枠そのものが適用されません。
それでも、ニュースや広告をきっかけに「保険に入りませんか?」という営業を受けることはありますので、「自分には直接関係がない制度」という前提を知っておくことが大切です。
ファミリー層が気をつけたい3つのポイント
小さいお子さんがいるご家庭ほど、「子育て世帯向けの支援」と聞くと、どうしても気になりますよね。
ただ、数字を見てきた通り、節税効果そのものは数千円レベルにとどまるケースが多くなります。
そこで、ファミリー層が特に意識しておきたいポイントを3つに絞ってお伝えします。
ポイント1:2026年だけの「一度きりのオマケ」と考える
この特例は、今のところ2026年分の所得税だけに適用される「時限措置」です。
つまり、1年のために10年・20年の保険を決めてしまわないことが大切です。
保険は「長く続けられるか」「家計が苦しくならないか」が何より重要なので、オマケの制度に合わせてムリな契約をするのは避けたいところです。
ポイント2:「控除のために保険を増やす」はやっぱり本末転倒
控除額が増えても、実際の節税は数千円レベルです。
それに対して、保険料は毎月・毎年の固定費です。
「控除枠を埋めたいから、月々の保険料を増やす」という発想で動いてしまうと、
- 教育費や住宅費がきつくなる
- 貯金が思うように増えない
など、長い目で見るとマイナスになることもあります。
ポイント3:「保険単体」ではなく「家計全体」を一緒に見てくれるFPを選ぶ
今回の特例をきっかけに相談するなら、
- 保険の話に入る前に、家計の収支や将来の希望をきちんと聞いてくれるか
- 「控除のため」ではなく、万が一・病気・老後など、家族の不安から優先順位を考えてくれるか
- 商品ではなく、家計全体のバランスを一緒に整理してくれるか
といった視点でFP(ファイナンシャルプランナー)を選ぶのがおすすめです。
「保険の見直し」だけを切り取るのではなく、「家計の見直し」の一部として保険を考えるイメージですね。
独身サラリーマンが知っておきたいポイント
独身で子どもがいないサラリーマンの方は、今回の「6万円特例」の直接の対象ではありません。
それでも、ニュースや会社の年末調整の案内を見て、
「自分も何かやらないと損なのでは?」
と感じることがあるかもしれません。
対象外でも「話題として使われる」ことがある
保険の営業トークの中には、
- 「今、生命保険料控除が拡大されているタイミングでして…」
- 「税制優遇を活かすなら、今のうちに入りましょう」
といった、ざっくりした説明だけで話を進めるケースもあります。
そのときに、「自分は23歳未満の扶養親族がいないから、今回の特例とは関係ない」と分かっているだけで、余計な不安を持たずに済みます。
独身だからこそ「会社の保障」と「公的保障」をまず確認
独身の方は、
- 会社の死亡退職金・弔慰金の制度
- 健康保険からの傷病手当金
- 障害年金などの公的保障
を確認したうえで、不足する部分だけを保険で補う、という考え方が基本になります。
ここでもやはり、「保険だけの相談」ではなく「家計全体+将来のライフプラン」の相談ができるFPに話を聞くのがおすすめです。
まとめ:数字で見ても「保険より家計」がやっぱり大事
Day2では、2026年の「6万円特例」を数字で見てきました。
最後にポイントを整理します。
- 年間保険料が大きい人ほど、控除額は最大2万円程度増える可能性がある
- とはいえ、実際に減る税金は数百円〜数千円レベルのケースが多い
- 子育て世帯で、すでに保険料をしっかり払っている人は「何もしなくても少し得をする」イメージ
- 一方で、「控除枠を埋めるために保険を増やす」と、家計の負担が重くなりやすい
- だからこそ、「保険の見直し」よりも先に「家計全体の見直し」をすることが大切
2026年の特例は、上手に使えればたしかにプラスですが、主役はあくまで家計とライフプランです。
「うちの場合はどう考えたらいいのかな?」と感じたら、一人で悩まず、家計全体を一緒に見てくれるFPに相談してみてください。
この記事の要点まとめ
- 2026年分の所得税では、23歳未満の扶養親族がいる人を対象に、新制度の一般生命保険料控除の上限が4万円→6万円に一時拡大される。
- 一般生命保険料控除(新契約)の計算式も、3万円・6万円・12万円を境目とする新しい形に変わり、年間6万〜12万円程度の保険料を払っている人ほど控除額の増加幅が大きくなる。
- 控除額が増えても、実際に減る所得税は「増えた控除額×所得税率」であり、数百円〜数千円レベルの差になるケースが多い。
- すでに介護医療・個人年金を含めて控除合計額が12万円近くになっている人や、もともとの保険料が少額の人は、特例による差が小さくなりやすい。
- 今回の特例は23歳未満の扶養親族がいる人限定であり、独身サラリーマンなどは直接の対象外だが、営業トークのきっかけとして使われる可能性がある。
- 数字で見ても「控除のために保険を増やす」メリットは限られており、保険の見直しよりも先に家計全体の見直しをしてくれるFPに相談することが重要である。
よくある質問(FAQ)
Q1. ここで紹介されているシミュレーションの金額は、必ずその通りになりますか?
A. いいえ、この記事の数字はあくまでイメージしやすくするための一例です。実際の税額は、年収やボーナス、他の所得控除(扶養控除、社会保険料控除など)、介護医療・個人年金の加入状況によって変わります。最終的な金額は、年末調整の結果通知や確定申告で確認してください。
Q2. 子どもが2人いる場合、6万円の上限が2倍になるのですか?
A. いいえ、そうではありません。一般生命保険料控除の上限6万円は、あくまで「その年に所得税を計算する人」1人あたりの上限です。子どもの人数によって6万円が「2倍・3倍」になるわけではありません。ただし、夫婦それぞれが子どもを扶養に入れている場合など、世帯全体で見ると複数人分の控除が使えることもあります。
Q3. 節税を考えるなら、2026年までに新しい保険に入ったほうが有利ですか?
A. 「節税のためだけ」に新しい保険に入ることはあまりおすすめできません。控除による節税効果は数千円レベルである一方、保険料は毎月・毎年の固定費になるからです。まずは、今の家計や将来のライフプランを整理し、本当に必要な保障かどうかを確認したうえで検討するのが安心です。
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