時限措置に振り回されたくない人へ|3つの実例で学ぶ「保険の入り方」と「家計の守り方」

時限措置に振り回されたくない人へ|3つの実例で学ぶ「保険の入り方」と「家計の守り方」
このシリーズのDay1・Day2では、2026年分の生命保険料控除に「1年間だけの時限措置」があり、特に子育て世帯(23歳未満の扶養親族がいる人)の一般生命保険料控除が広がること、そして実際の節税効果は数千円レベルにとどまるケースが多いことをお話ししました。
頭では分かっていても、
「実際に、どんな失敗が起きやすいのか?」
「家計を見直した人は、何がきっかけで変われたのか?」
といった「リアルなイメージ」がないと、自分ごととして考えにくいですよね。
そこでDay3では、
- 特例をきっかけに保険を増やしてしまい、家計が苦しくなったご家庭
- 本当は対象外なのに、特例を口実に保険を勧められた独身サラリーマン
- 「家計全体」を見直すFPと出会い、すっきり立て直せたご家庭
という3つのケースを通して、保険との付き合い方・FPの選び方のポイントをお伝えします。
ご紹介するのは、あくまでイメージしやすいように整理した「架空の事例」ですが、実際によくあるパターンを元にしています。
特例につられて保険を増やし、家計がじわじわ苦しくなったAさん一家
Aさん(30代前半・会社員)は、専業主婦の奥さま、小学生と保育園のお子さん2人の4人家族。
もともと、
- 住宅ローンの返済
- 学童・保育料
- 食費・光熱費
などで、「なんとか黒字だけれど、貯金にまわせるのは毎月1〜2万円程度」という状態でした。
「2026年は控除枠が増えますよ」という営業トーク
ある日、以前から付き合いのある保険担当者から、こんな電話がありました。
「2026年分から、子どもがいるご家庭の生命保険料控除が広がるんです。
今のうちに少し保障を厚くしておけば、節税しながらお子さんの安心も増やせますよ。」
ちょうど、下の子が生まれてから保障を見直していなかったこともあり、Aさん夫婦は「たしかにそろそろ見直しが必要かも」と感じていました。
月々5,000円の上乗せなら…と契約した結果
保険担当者から提案されたのは、
- ご主人の死亡保障を増やすための定期保険(一般生命保険)
- お子さん2人の学資保険のような積立商品
トータルで月々5,000円の保険料アップでした。
「5,000円なら、なんとかなるかな…」
「節税もできるなら、やっておいたほうが安心だよね」
そう話し合って契約したのですが、実際に1年ほどたつと、次のような変化が起こりました。
- 食費や日用品を少しずつ削るようになった
- クレジットカード利用額がじわじわ増え、毎月の引き落としがギリギリに
- ボーナス時の臨時出費(家電の買い替えなど)に対応しづらくなった
年末調整でたしかに税金は少し戻ってきましたが、戻ってきた金額は数千円程度。
「あれ、このために毎月5,000円増やしたんだっけ…?」と、だんだん違和感が大きくなっていきました。
問題の本質は「控除の話」ではなかった
Aさん家族のケースで、いちばん問題だったのは、
- 「2026年の特例」ありきで保険を決めてしまったこと
- 家計全体の収支や、将来の教育費の見通しをちゃんと整理しないまま話が進んだこと
でした。
もし、
- 家計の固定費を洗い出す
- 公的な遺族年金や、会社の死亡退職金などの制度を確認する
- 教育費や老後資金をどう準備するか、大まかな方向性を決める
といったステップを踏んでいたら、
「今は保険より、生活防衛資金と教育資金を優先しよう」という判断もできたかもしれません。
本当は特例の対象外なのに、なんとなく不安で契約してしまったBさん
Bさん(30代後半・独身・賃貸暮らし)は、会社の同僚から「2026年から保険の控除が増えるらしい」と聞き、自分も何かしたほうがいいのか気になっていました。
「今の制度を活かさないと損ですよ」と言われて…
ちょうどその頃、職場に保険会社の営業担当が来て、個別相談をしていました。
「今は税制も変わってきていますし、2026年は生命保険料控除が広がるチャンスなんですよ」
Bさんは詳しい条件までは分からないまま、
「なんとなく、今のうちに動かないと損かもしれない」
という気持ちになり、がん診断保険と死亡保障をセットにした保険に加入しました。
あとで知った「自分は特例の対象ではなかった」という事実
数か月後、ネットで制度のことを調べているうちに、Bさんはある事実に気づきます。
- 今回の時限措置は、23歳未満の扶養親族がいる人が対象であること
- 自分は独身で扶養する子どももいないため、特例の条件には当てはまらないこと
「えっ、自分には関係なかったの?」
「あのときの説明、なんだかすごく『今動かないと』という雰囲気だったのに…」
もちろん、加入した保険がまったく不要だったとは限りませんが、「制度の話」をきっかけに、よく分からないまま加入を決めてしまったことに、モヤモヤが残りました。
「不安」だけを刺激されると、冷静な判断が難しくなる
Bさんのケースでポイントなのは、
- 自分が特例の対象なのかどうかを確認する前に話が進んでしまったこと
- 「今の制度」「チャンス」「もったいない」といった言葉で、不安や焦りの感情だけが動かされてしまったこと
です。
本来、保険を考えるときは、
- 今の貯金や、将来のライフプラン(結婚・マイホームなど)のイメージ
- 会社の保障や、公的保障(障害年金・遺族年金など)の内容
- 何が起きたときに、どれぐらいのお金が必要になりそうか
を整理したうえで、「足りない部分をどう埋めるか」を考える必要があります。
ところが、制度や税金だけを前面に出した説明になると、
「難しいけど、お得ならやっておいたほうが良さそう」
と、判断を他人まかせにしやすくなってしまうのです。
「家計全体」を見直して、むしろお金に余裕ができたCさん夫婦
Cさん夫婦(ともに30代・共働き・子ども1人)は、ニュースで2026年の特例を知り、
「うちも何かやったほうがいいのかな?」
と感じながらも、すぐに保険を増やすことには抵抗がありました。
きっかけは「今の家計のままで、大丈夫かな?」という不安
保育料・住宅ローン・車の維持費などで、毎月の出費は多め。共働きで世帯年収は悪くないものの、
- なんとなく毎月お金が出ていく感覚
- 子どもの教育費と、自分たちの老後資金が同時に心配
という状態でした。
そこでCさん夫婦は、「保険の見直し」ではなく、「家計全体を見てもらえるFPに相談してみよう」と決めました。
FPとの面談でまずやったのは「数字の見える化」
相談したFPは、最初の面談でいきなり保険の話をするのではなく、
- 毎月の収入と支出の一覧
- ボーナスの使い方
- 現在加入している保険の内容(保障額・保険料・期間)
- 今後の希望(もう1人子どもが欲しいか、家をリフォームしたいか など)
を、丁寧にヒアリングしてくれました。
そのうえで、次のような提案がありました。
- 重複している医療保険・特約を整理し、毎月の保険料をトータルで3,000円ダウン
- なんとなく続けていたサブスクや、ほとんど使っていないサービスを見直し、固定費を月5,000円カット
- 浮いた8,000円を、「教育資金」と「老後資金」の積立にまわす
そのうえで「特例はオマケとして使う」選択肢に
家計全体を整えたうえで、FPはこう提案しました。
「今の保障内容だと、Cさんご夫婦の希望から見て、ご主人の死亡保障だけ少し足りないように見えます。
もし増やすのであれば、タイミング的に2026年の特例もありますから、その年にあわせて一般生命保険を少し増やすという選択肢もあります。」
つまり、
- まずは家計と保障のバランスを整える
- そのうえで、どうしても増やしたい保障がある場合に、特例を“オマケ”として上手に使う
という順番です。
結果として、Cさん夫婦は、
- 毎月のキャッシュフローが改善し、気持ちにも余裕が生まれた
- 教育資金と老後資金を「どのくらいのペースで貯めるか」が具体的になった
- 特例をどう使うかも含めて、「うちはこの方針でいこう」と納得して決められた
と話しています。
3つの事例に共通する「つまずきポイント」
ここまで見てきた3つのケースには、共通するポイントがあります。
1. 保険の話が「家計」から切り離されている
Aさん・Bさんのケースでは、どちらも、
- 毎月いくらなら無理なく払えるか
- 他にどんな固定費があるか
- これから増えていく支出(教育費・老後など)
といった家計全体の視点がないまま、制度や商品の話からスタートしてしまっています。
2. 「今だけ」「お得」という言葉で、冷静さを失ってしまう
時限措置や税制優遇があると、どうしても、
「今動かないと損かもしれない」
という心理になりがちです。
これは、人が本能的に「損をしたくない」と感じる心理(損失回避)」が働いているためで、決して特別なことではありません。
だからこそ、
- 「この制度は、そもそも自分が対象なのか?」
- 「制度がなくても、この保険は必要だと思えるか?」
と、一度立ち止まることが大切です。
3. FPや担当者に「任せきり」になってしまう
保険や税金の話は専門用語も多く、「よく分からないから、プロにお任せで…」となりやすい分野です。
もちろん専門家の力を借りることは大事ですが、「任せきり」になってしまうと、
- 自分の家計に本当に合っているか
- 長期的に続けられるか
という視点が抜けてしまいがちです。
大事なのは、
「自分で決めるための材料を、一緒に整理してくれる人」と出会うことです。
失敗を避けるために選びたいFPのチェックポイント
では、どんなFPや相談窓口を選べば、Aさん・Bさんのような失敗を避けやすくなるのでしょうか。
ここでは、「家計全体を見てくれるFP」を選ぶためのチェックポイントをいくつか挙げておきます。
チェック1:最初から商品を勧めてこないか
最初の面談で、いきなり具体的な保険商品や金額の話が始まる場合、
「とりあえず売りたい商品が先にある」
可能性があります。
一方、
- 家計の収支
- 今の不安や、将来の希望
- すでに入っている保険の内容
などを丁寧にヒアリングしてから提案してくれるFPは、家計全体を見てくれる可能性が高いと言えます。
チェック2:「制度の説明」と「あなたの状況」をちゃんと結びつけてくれるか
2026年の時限措置のような制度の話が出たときに、
- 「これは、○○さんのご家庭の場合、こういう意味があります」
- 「逆に、ここは今回の特例とは関係ない部分です」
と、自分ごとに落とし込んで説明してくれるかどうかも重要です。
単に、
「今はお得なんです」「制度が変わるんです」
といった話だけで終わる場合は、注意が必要かもしれません。
チェック3:保険以外の選択肢も一緒に考えてくれるか
良いFPは、
- 「保険で備える」
- 「貯金や積立投資で備える」
- 「そもそも、ここは公的保障で足りている」
といった複数の選択肢を並べたうえで、一緒に優先順位を考えてくれます。
保険だけを前提に話が進む場合は、
「家計全体」ではなく「保険の枠の中だけ」で考えている可能性があります。
まとめ:事例から分かる「保険より家計」という考え方
Day3では、3つの事例を通して、「時限措置に振り回されないための考え方」を見てきました。
- 特例をきっかけに、なんとなく保険を増やしてしまうと、家計がじわじわ苦しくなることがある
- 自分が特例の対象かどうか分からないまま、「今だけ」「お得」といった言葉で動かされてしまうことがある
- 一方で、家計全体を見直したうえで特例を「オマケ」として使えば、安心とゆとりの両方を手に入れられる可能性もある
- カギになるのは、保険の見直しではなく、家計の見直しを一緒にやってくれるFPと出会えるかどうか
2026年の生命保険料控除の時限措置は、たしかにプラスの制度です。
ですが、それだけを軸に長期の保険を決めてしまうと、Aさん・Bさんのように「思っていたのと違う結果」になってしまうこともあります。
「うちの場合はどうだろう?」と感じたら、制度の話だけでなく、家計全体のバランスも含めて相談してみてください。
この記事の要点まとめ
- Case1では、子育て世帯のAさん一家が「2026年の特例でお得」と勧められ、月5,000円の保険料アップを決めた結果、年末調整で戻るお金はわずかなのに、毎月の家計がじわじわ苦しくなってしまった。
- Case2では、独身のBさんが制度の中身を理解しないまま「今の制度を活かさないと損」と不安になり、実は自分は特例の対象外だったにもかかわらず、保険契約をしてモヤモヤを抱えることになった。
- Case3では、共働きのCさん夫婦が「家計全体を見てくれるFP」に相談し、保険や固定費を整理して毎月の支出を減らしたうえで、必要な保障だけを増やし、特例を“オマケ”として活用する方針を決めた。
- 3つの事例に共通するつまずきポイントは、保険の話が家計から切り離されていること、「今だけ」「お得」といった言葉で冷静さを失いやすいこと、FPや担当者に任せきりになってしまうことの3つである。
- 失敗を避けるには、最初から商品を勧めてこないか、自分の状況と制度をきちんと結びつけて説明してくれるか、保険以外の選択肢も含めて話してくれるか、といった観点で「家計全体を見てくれるFP」を選ぶことが重要である。
- 2026年の生命保険料控除の時限措置はあくまでプラスの「オマケ」と位置づけ、保険の見直しではなく家計の見直しを優先することが、長期的に家計を守るうえで大切な考え方である。
よくある質問(FAQ)
Q1. ここで紹介されているAさん・Bさん・Cさんの事例は、実在の人物ですか?
A. いいえ、この記事で紹介している事例は、あくまでよくある失敗・成功のパターンを分かりやすく伝えるための架空のストーリーです。ただし、実際の相談現場でよく見られる傾向や、よくあるつまずき方を元に構成しています。
Q2. すでに「特例を意識して加入した保険」がある場合、どうすればいいですか?
A. まずは、その保険が「特例がなくても必要だと思えるか」という視点で見直してみるのがおすすめです。そのうえで、毎月の保険料が家計の負担になっていないか、公的保障や会社の保障と重複しすぎていないかを確認しましょう。一人では判断しづらい場合は、家計全体を見てくれるFPに相談して整理してみると安心です。
Q3. 家計の見直しと保険の見直し、どちらから始めるべきですか?
A. 基本的には、家計の見直しが先です。毎月いくらまでなら無理なく保険料を払えるのか、今後増えていきそうな支出(教育費・老後など)はどれくらいか、といった全体像が見えていないと、保険の適切な金額や期間を決めにくくなります。家計の全体像を把握したうえで、「その中の1つのパーツ」として保険を考えるのがおすすめです。
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