2025年4月に遡って変わる「通勤手当の非課税限度額」とは?中小企業が最初に知るべきこと

2025年4月に遡って変わる「通勤手当の非課税限度額」とは?中小企業が最初に知るべきこと

2025年4月に遡って、マイカー・自転車通勤者の通勤手当の非課税限度額が引き上げられることになりました。 「うちの会社も何かしないといけないの?」「年末調整でバタバタしたくない…」という経営者・経理担当者の方に向けて、 まずは全体像をわかりやすく整理します。

はじめに

「通勤手当の非課税限度額が、2025年4月に遡って変わるらしい」と聞いて、

  • 「うちの会社も何かしないといけないの?」
  • 「年末調整でバタバタしたくない…」

と、不安になっている経営者・経理担当者の方も多いのではないでしょうか。

今回の改正は、マイカー・自転車などで通勤している従業員の通勤手当の「非課税限度額」が引き上げられたというものです。 所得税法施行令の改正は2025年11月20日に施行されますが、 2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に遡って適用されるという点が大きなポイントです。

一見すると「上限が上がるなら、会社にとってはプラスでは?」と思えますが、 “4月に遡る”ことにより、 年末調整での対応が必要になる場合があるという点に注意が必要です。

この記事(Day1)では、まず「何がどう変わるのか」という全体像を、 難しい言葉をできるだけ避けながら整理します。 明日のDay2では、「では実際に、年末調整までに何をしておけば良いのか」という 実務ステップを解説していきます。

2025年の通勤手当税制はどこが変わるのか

今回の改正のポイントを一言で言うと、

マイカー・自転車通勤者に支給する通勤手当の「非課税限度額」が、通勤距離ごとに引き上げられた

国税庁のタックスアンサー「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」では、 片道距離に応じた1か月当たりの非課税限度額が表で示されています。 最新の表では、例えば片道55km以上の場合の非課税限度額は38,700円というように、 距離が長いほど非課税で支給できる金額の上限が大きくなります。

この金額表は、2025年11月20日に施行される所得税法施行令の改正により、 非課税限度額の引き上げ後の金額が反映されたものです。 そして、この新しい限度額は2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に遡って適用されます。

なぜ「2025年4月に遡って」適用されるのか

背景には、国家公務員の通勤手当の見直し(令和7年人事院勧告)があります。

  • 2025年8月:令和7年人事院勧告で、自動車などの交通用具使用者の通勤手当引上げが勧告
  • その内容の一部(距離ごとの額の引上げ)が、2025年4月1日に遡って実施されることに
  • これに合わせて、所得税の通勤手当非課税限度額も見直され、同じく2025年4月1日に遡って適用されることになった

つまり、 「制度として決まったのは11月だけれど、『4月以降に支払った分』までさかのぼって新しいルールを適用しましょう」 というイメージです。

影響を受けるのはどんな会社・どんな従業員?

今回の改正で特にチェックが必要なのは、次のような会社です。

  • マイカー通勤・自転車通勤の従業員が多い会社(郊外・工場・物流拠点など)
  • 片道距離が長い社員がいる会社(20km以上〜50km超の通勤者)
  • 通勤手当を「距離×単価」で細かく支給している会社
  • 駐車場代なども含めて通勤関連手当を払っている会社

一方で、次のような会社は今回の改正の影響はほとんどありません。

  • 電車・バスのみで通勤している社員しかいない会社
  • 定期券代実費支給のみで、マイカー・自転車通勤者がいない会社

今回のテーマは「マイカー・自転車など交通用具を使用して通勤する人」の通勤手当の非課税限度額の引き上げであり、 電車・バス通勤者の非課税限度額(定期券代等)とは別のルールになります。

新しい「非課税限度額」のイメージ

詳細な金額は、必ず国税庁の最新情報で確認していただきたいのですが、 ここではイメージだけ押さえておきましょう。

  • 片道2km未満:従来どおり全額課税
  • 片道距離が伸びるほど、非課税で認められる上限額が段階的に増える
  • 一番距離が長い区分(片道55km以上)の非課税限度額は、改正前は約31,600円 → 改正後は38,700円 に引き上げ

このように、長距離通勤者ほど「非課税で支給できる枠」が広がるイメージです。 会社としては、今まで課税扱いにしていた部分が、新しい限度額の範囲内に入る可能性があります。

今日押さえておきたい3つの確認ポイント

ここまでで、

  • マイカー・自転車通勤の通勤手当の非課税限度額が
  • 2025年4月に遡って引き上げられる

という全体像が見えてきたと思います。

Day1の締めくくりとして、今日のうちに最低限チェックしておきたいポイントを3つ挙げます。

① マイカー・自転車通勤の従業員リストを把握しているか

まずは、次の情報を整理できているか確認しましょう。

  • 誰がマイカー・自転車通勤なのか
  • 片道何kmで登録しているのか
  • 月額いくら通勤手当を支給しているのか

給与ソフト・勤怠システム・雇用契約書などから、 「一覧で見られる状態」にしておくことが大切です。

② 2025年4月支給分以降の通勤手当の履歴を追えるか

今回の改正は、2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当が対象です。

次のような情報を後から確認できるようにしておくと、 Day2でお伝えする「年末調整での対応」がスムーズになります。

  • 2025年4月〜11月支給分(見込みを含む)の通勤手当
  • 支給額・通勤距離・通勤方法

③ 顧問税理士・社労士と情報共有する準備ができているか

今回のテーマは所得税(源泉所得税)の話ですが、 通勤手当は社会保険の標準報酬月額にも関わるため、 全体としてどう扱うかは顧問の先生との連携が欠かせません。

例えば、次の情報をまとめておくと、相談がスムーズになります。

  • 「通勤手当の非課税限度額が4月に遡って引き上げになる」こと
  • 「マイカー・自転車通勤者が何名いて、主な距離帯はどのくらいか」

まとめ・要点整理

この記事のポイント

  • 2025年11月20日施行の改正により、マイカー・自転車通勤者の通勤手当の非課税限度額が引き上げられる
  • この引き上げは、2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に遡って適用される。
  • その結果、年末調整での対応が必要になる場合がある
  • 特に、マイカー通勤・長距離通勤者の多い中小企業は、自社の通勤手当の支給実態を早めに整理しておくことが重要。

Day1では「何が変わるのか」という全体像を押さえました。 Day2では、「年末調整までに会社として何をすれば良いのか」を、 具体的なステップに分けてお伝えしていきます。

FAQ

Q1. 電車・バス通勤の社員にも影響はありますか?

今回の改正は、マイカー・自転車など交通用具を使用して通勤する人の非課税限度額の引き上げが対象です。 電車・バス通勤者の通勤手当の非課税限度額は別ルールで定められており、今回の改正とは直接関係しません。

Q2. 4月に遡って適用されるということは、4月以降の給与計算を全部やり直す必要がありますか?

給与明細をすべて作り直すイメージではありませんが、 「旧限度額を超えて課税扱いにしていた部分」が、新しい限度額の範囲内になる場合には、 年末調整で過不足を精算する必要が出てくる可能性があります。

具体的な計算方法や源泉徴収簿の書き方については、国税庁の「年末調整の手引き」や 「年末調整がよくわかるページ」の最新情報を必ず確認してください。

Q3. 社会保険(厚生年金・健康保険)の計算にも変更がありますか?

今回の改正は所得税(源泉所得税)の非課税限度額に関するものです。 社会保険での通勤手当の扱いは別のルールに基づくため、 社会保険の標準報酬月額にどう影響するかは、年金事務所や顧問社労士に確認することをおすすめします。

個別の状況で相談したい方へ

通勤手当の改正は、「制度としてはわかったけれど、うちの会社の場合はどうすれば?」という疑問が出やすいテーマです。 マイカー通勤者の人数構成や距離、過去の支給実績によって、取るべき対応は変わってきます。

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