年末年始はサイバー攻撃のかき入れ時?中小企業が知るべきサイバーリスクの現実

年末年始はサイバー攻撃のかき入れ時?中小企業が知るべきサイバーリスクの現実
年末年始はサイバー攻撃が増えると言われますが、「うちはあまり関係ない」と感じていないでしょうか。本記事では、中小企業・個人事業主の方に向けて、まずは「なぜ年末にサイバーリスクが高まるのか」をやさしく整理します。
はじめに:年末は“人もシステムもゆるみやすい”タイミング
毎年、年末が近づくと、こんな空気にならないでしょうか。
- 「決算や請求書、年末調整でバタバタ」
- 「ようやく片付いたら、あとは休むだけ」
- 「システムもメールも特に問題なく動いているから大丈夫だろう」
多くの企業が「とにかく忙しい」「早く休みたい」というモードに入る一方で、
攻撃者は“これからが本番”とばかりに動き出すとも言われています。
実際、日本の公的機関や企業は、年末年始に向けて毎年のようにセキュリティに関する注意喚起を出しています。
たとえば IPA(情報処理推進機構)は、「年末年始はシステム管理者が不在になりやすく、インシデント対応が遅れて被害が拡大しやすい」と繰り返し警告しています。
一方で、中小企業や個人事業主の方からは、次のような声もよく聞きます。
- 「大企業が狙われる話でしょう?」
- 「うちは機密情報なんてないから大丈夫」
しかし、ここ数年のインシデント事例や統計を見ると、
「規模の小さい会社だから安全」という考えは、もはや通用しないのが現実です。
このシリーズでは、年末に向けて高まるサイバーリスクを、5日間に分けて
「理解 → 納得 → 対策 → 習慣化」まで一緒に整理していきます。
Day1でのゴールは、
「なぜ年末にサイバーリスクが高まるのか」
「自社も例外ではない」
と自分ごととして認識すること
目次
4-1. 年末にサイバーリスクが高まる3つの理由
理由①:人が減り、監視の目がゆるむから
年末年始や大型連休は、システム担当者やセキュリティ担当者が交代勤務になったり、不在時間が長くなりがちです。
その結果、次のような状況が起こりやすくなります。
- 夜間・休日はアラートに気づくのが遅れる
- 怪しいメールや挙動を見ても、誰に相談すればいいかわからない
- ベンダーのサポート窓口が特別体制になっていてすぐにつながらない
こうした状況は、攻撃者から見ると「非常に都合のいいタイミング」です。
海外の調査でも、休日や大型連休のタイミングでランサムウェア攻撃が増えるという結果が出ており、
現場の人手が薄くなるタイミングを狙っていることがうかがえます。
理由②:システムやソフトの更新が止まりやすいから
もうひとつの理由が、アップデートの遅れです。
- 「年末はトラブルを避けたくて、更新を先送りにしている」
- 「ギリギリまで本業が忙しく、気づいたら古いまま」
という状況は、多くの企業で起こりがちです。
一方で、攻撃者は日々、新しい脆弱性(セキュリティの穴)情報をチェックし、
「パッチが当たっていない企業」を探しています。
そのため、OSやソフトウェア、セキュリティソフトの更新が止まっている状態は、
いわば鍵を古いままにしてドアを開けているのと同じとも言えます。
理由③:人の“心理的なスキ”が増えるから
年末は、仕事もプライベートもイベントが多く、気持ちが慌ただしくなります。
そのタイミングを狙って、次のようなメールが送りつけられることがあります。
- 「お世話になっている会社からの年末のご挨拶かと思って開いた」
- 「お得な年末セールと書かれていて、ついURLをクリックした」
普段なら「怪しいな」と感じて疑うようなメールでも、
“年末のご挨拶”や“セール情報”と書かれているだけで、つい開いてしまうことがあります。
海外の調査では、ホリデーシーズンはフィッシング攻撃が25%以上増えるという数字も報告されています。
それだけ、季節イベントを利用しただましの手口が多いということです。
年末は「人が減る」「システム更新が止まりがち」「心理的にも油断しやすい」
→ 攻撃者にとっては“3拍子そろった好機”になりやすいタイミングです。
4-2. もし被害に遭うと何が起きる?中小企業目線での影響
「それでも、実際に被害を受けるのは大企業では?」
と思うかもしれません。
しかし、各種の事例集を見ると、
年末年始に中堅・中小企業、自治体、学校など、さまざまな組織が影響を受けていることが分かります。
被害に遭ったとき、中小企業・個人事業主の立場で困るポイントは、次のようなものです。
1. 業務停止による売上の機会損失
- ECサイトや予約システムが止まり、注文や予約が取れなくなる
- 請求書や支払い処理が遅れ、キャッシュフローに影響する
2. 復旧対応で、通常業務がほぼ止まる
- 社内のキーマンが復旧対応に張り付き、本来の業務ができなくなる
- 顧客対応・社内調整・ベンダーとのやり取りが一気に増える
3. 顧客や取引先からの信頼低下
- 「大丈夫なのだろうか?」という不安が広がる
- 今後の取引条件の見直しや、監査対応の増加につながる可能性
4. 想定外のコスト発生
- 専門家やベンダーへの緊急対応費用
- システムの入れ替えや、追加のセキュリティ対策費
特に中小企業の場合、
「1回の大きなインシデントが致命傷になりかねない」というリスクは、
大企業よりもむしろ高いと言えます。
4-3. まずはここから:自社の「年末サイバーリスク度」を簡易チェック
いきなり高度なセキュリティ対策を完璧にやろうとすると、息切れしてしまいます。
まずは、次の3つの質問に「はい/いいえ」で答えてみてください。
「いいえ」が多いほど、年末に向けたリスクは高めと考えられます。
質問1:長期休暇中にインシデントが起きたときの“連絡フロー”は決まっていますか?
次のような点が決まっているか、振り返ってみてください。
- 誰が最初に気づき、
- 誰に連絡し、
- どのベンダーや外部窓口に頼るのか
これらが決まっていない場合、初動が遅れやすくなります。
休暇中の連絡体制の整備は、難しい専門知識がなくてもできる、最初の一歩です。
質問2:年末までに「重要なシステムのアップデート」計画は立っていますか?
次のようなものについて、「いつ」「誰が」「どこまで」アップデートするか決まっていますか?
- サーバーや主要な業務システム
- VPNやリモートアクセス環境
- ウイルス対策ソフトやEDRなどのセキュリティ製品
完璧でなくても構いません。
「年内にここまではやる」という目安を決めておくだけでも、リスクは大きく変わります。
質問3:従業員への“年末の注意喚起メール”を毎年送っていますか?
簡単なメール1通でも、次のような内容をまとめて伝えておくと、
従業員側の「心理的なスキ」を減らすことができます。
- 不審な添付ファイル・URLを開かないこと
- 年末の挨拶やキャンペーンを装ったメールに注意すること
- トラブル時の連絡先や報告方法
これは、費用をかけずにできる、非常に効果的な対策です。
4-4. まとめ・明日以降の予告
今日のポイント整理
- 年末年始は、「人手不足」「アップデートの停滞」「心理的な油断」が重なり、サイバー攻撃のリスクが高まる時期であること。
- 中小企業・個人事業主も例外ではなく、一度のインシデントで売上・時間・信頼・コストに大きな影響が出うること。
- まずは
- 休暇中の連絡フロー
- 年内のアップデート計画
- 従業員への注意喚起メール
明日のDay2では、
「そもそもサイバーリスクとは何か?」
「どんな種類のリスクがあるのか?」
「なぜ“ITの問題”ではなく“経営の問題”として捉えるべきなのか?」
といった点を、経営者目線で整理していきます。
5. まとめ
- 年末年始は、人の不在・アップデートの停滞・心理的な油断が重なり、サイバー攻撃のリスクが高まる。
- ホリデーシーズンにサイバー攻撃やフィッシングが増えるという調査結果もあり、攻撃者が「時期」を狙っていることが分かる。
- 中小企業や個人事業主も被害事例が多く、一度のインシデントで業務停止・信頼失墜・追加コストなどのダメージが生じる。
- まずは、
- 休暇中の連絡体制
- アップデート計画
- 従業員への注意喚起
6. FAQ
Q1. 年末年始だけ特別に対策すればいいですか?
A. 年末年始はリスクが高まる“山場”ですが、サイバー攻撃自体は通年で発生しています。まずは年末をきっかけに対策を見直しつつ、そこから通年のルールや習慣に広げていくイメージが理想です。
Q2. IT担当者がほぼいない会社でも、何から始めればいいでしょうか?
A. 専門的な機器を買う前に、
- 連絡フローの整理
- アップデートを「やる日」を決める
- 従業員への注意喚起メールを送る
といった運用面の整備から始めるのがおすすめです。必要に応じて、外部の専門家やサービスも検討するとよいでしょう。
Q3. クラウドサービスを使っているから安全、と考えても大丈夫ですか?
A. クラウドサービス自体のセキュリティは高くても、
- 弱いパスワード
- パスワードの使い回し
- 多要素認証の未設定
- フィッシングメールからのID流出
といった「人側」の要因で突破されるケースが多くあります。クラウドだからこそ、「IDとパスワードを守る」「多要素認証を使う」といった運用が重要になります。
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