2026年4月「高年齢労働者の労災防止」努力義務化|中小企業が今から備えるチェックリスト

2026年4月「高年齢労働者の労災防止」が努力義務化|中小企業が今から備えるチェックリスト

参考:厚生労働省の案内(このテーマの一次情報)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/newpage_00007.html

はじめに

「ベテランがいて助かっている。でも最近、つまずきそうになった話が増えた」
「腰が痛いと言いながら、無理して働いている」
こんな“小さな違和感”が、ある日いきなり大きな事故につながることがあります。

2026年4月からは、高年齢労働者(主に60歳以上)に配慮した労災防止対策が、事業者の努力義務になる流れです。 ここで大事なのは、「努力義務だから後回しでいい」ではなく、事故が起きたときに一番困るのは現場と経営だという点です。

このDay1では、難しい言葉をできるだけ避けて、まず全体像今日からできる準備を整理します。

努力義務化で「何が変わる?」

まず「努力義務」という言葉を、やさしく言い換えます。

  • 義務:やらないと法律上まずい(罰則がつく場合もある)
  • 努力義務:「やるように努めてね」という位置づけ(国として“やるのが当たり前”の方向へ進める合図)

今回は、高年齢労働者の特性に配慮した労災防止(転倒しにくい環境、腰に負担をかけない作業の組み方など)を、 会社として“ちゃんと考えて、対策していく”ことが求められる流れになります。

つまり、現場で「気をつけてね」だけで終わらせず、環境ややり方を見直すことがテーマです。

なぜ今、高年齢労働者の労災が注目される?

理由はシンプルです。働く人の年齢が上がり、現場の中心がベテランになるほど、 事故が起きたときのダメージが大きくなりやすいからです。

特に現場で増えやすいのが、次のようなタイプです。

  • 転倒:段差・滑り・暗さ・急ぎ作業が重なる
  • 腰痛:持ち上げ・ねじり・中腰が続く
  • 墜落・転落:脚立・はしご・高所の「慣れ」が油断を生む

経営目線では、事故は「その人のケガ」だけで終わりません。
欠勤による人手不足 → 納期遅れ → 現場の負担増 → さらに事故が起きやすくなる
こういう連鎖が起きやすいのが、いまの現実です。

エイジフレンドリー(年齢にやさしい職場)とは?

「エイジフレンドリー」は、かんたんに言うと年齢に合わせて、働きやすく・安全にする職場づくりです。

大切なのは、ベテランに「気合い」や「注意力」でカバーさせないこと。
たとえば、こんな考え方です。

  • 転びにくくする:床・段差・照明・動線・靴の見直し
  • 腰を守る:持ち上げを減らす(台車・補助具・置き場の工夫)
  • 無理を減らす:休憩の入れ方、急ぎ作業を生まない段取り

「お金がかかりそう」と感じるかもしれませんが、実は費用ゼロでできる改善も多いです。 まずは“気づける形”を作るのが第一歩です。

まず整える「5つの土台」チェックリスト(今日からできる)

ここからが本題です。
いきなり完璧を目指さなくて大丈夫。まずは事故を減らす土台を作ります。

土台1:危ない場所を「3つだけ」書き出す

例)入口の段差/倉庫の床が滑る/バックヤードが暗い、など。
まずは3つでOKです。増やすのは後からで大丈夫。

土台2:「ヒヤリ」を言った人が損しないルールにする

ヒヤリ(ヒヤッとした、危なかった)を言うと、怒られる・責められる。
これがあると、情報が消えて事故が増えます。
逆に、ヒヤリが集まる職場は事故が起きる前に直せます

土台3:作業を「重い・高い・急ぐ」で分ける

事故が起きやすい条件は、だいたいこの3つが混ざったときです。
「重い物を」「高いところで」「急いでやる」
この組み合わせを減らすだけで、事故は下がります。

土台4:朝の5分で「今日の無理」を確認する

高年齢になるほど、睡眠不足・痛み・ふらつきが事故につながりやすくなります。
だから、朝の一言でいいので確認します。
例)「今日は腰が痛い」「寝不足」などを言いやすくする(言っても責めない)。

土台5:もしもの時の連絡順を、紙で貼る

事故が起きたときは、誰でも焦ります。
だからこそ、「誰が・誰に・何を」を紙にして貼っておく。
これだけで初動が安定します。

ここまでできれば、すでに「やるべきことが見えている会社」です。
Day2で、これを“現場に落とす方法”をもっとかんたんにします。

まとめ+要約

  • 2026年4月から、高年齢労働者の特性に配慮した労災防止対策が「努力義務」になる流れ。
  • 対策は「気をつけて」ではなく、環境・動線・作業の組み方を見直すことが中心。
  • 最初は「危ない場所TOP3」「責めないヒヤリ報告」「重い・高い・急ぐの分類」から始めると進めやすい。
  • 勤務間インターバル等の話題は、疲れを減らす視点として安全対策に取り入れると相性が良い。

FAQ(よくある質問)

Q1. 努力義務なら、やらなくても罰則はないんですか?

罰則だけで判断すると動けなくなります。現実には、事故が起きた後に「なぜ対策しなかったのか」が問題になります。
まずは費用ゼロでできるところから“形”にしておくのが安心です。

Q2. 対象は60歳以上の人だけ考えればいい?

優先は「高年齢の方が多い部署・作業」からでOKです。
ただ、床や照明、動線の改善は、年齢に関係なく全員の事故を減らします。

Q3. 何をやれば「取り組んでいる」と言えますか?

まずは次の流れが回っていれば十分強いです。
(1)危ない所の洗い出し →(2)対策 →(3)周知 →(4)見直し
Day2以降で、これを“紙1枚”で回す方法に落とします。

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