エイジフレンドリーの基本|「転倒・腰痛」を減らす考え方と優先順位(Day2)

エイジフレンドリーの基本|「転倒・腰痛」を減らす考え方と優先順位

一次情報(厚生労働省の案内):
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/newpage_00007.html

はじめに

Day1で「2026年4月に向けて、高年齢労働者の労災防止を“形にする”必要が出てくる」という全体像を整理しました。

ただ、ここで多くの方がつまずきます。
「対策って、結局なにをすればいいの?」
「お金がかかりそうで怖い…」
「現場が忙しくて動けない…」

なのでDay2は、難しい用語をできるだけ使わずに、 “事故が起きる流れ”を見つけて、優先順位をつけるところまでを一緒に整理します。 ここができると、対策が一気に現実になります。

高年齢になると事故が増えやすい「理由」

まず大前提として、これは誰かを責める話ではありません。
年齢を重ねると起きやすい変化があり、それが事故の“きっかけ”になりやすい、というだけです。

よくある変化(例)

  • 段差や凹凸が、若い頃より気づきにくくなる
  • とっさの踏ん張りが少し遅れる
  • 無理が翌日に出やすい(回復に時間がかかる)
  • 「慣れ」で危ない動きを普通にやってしまう

だからこそ、対策は「注意してね」ではなく、 環境と作業のやり方を、事故が起きにくい形に整えることが中心になります。

エイジフレンドリーを一言でいうと?

エイジフレンドリーは、かんたんに言うと、年齢に合わせて“つまずきにくい・痛めにくい・無理しにくい”職場にすることです。

ここがポイント

ベテランの力を借りながら長く働いてもらうには、本人の気合いに頼らないのが一番です。
仕組みと環境で守れるようにすると、結果的に若手にも優しい職場になります。

危ないところの見つけ方(超かんたん3ステップ)

ここからは、いわゆる「リスクを見つける作業」です。
難しくしません。次の3つを順番に埋めるだけでOKです。

3ステップ(紙1枚でOK)

  1. どこで?(場所:倉庫、階段、厨房、現場、事務所の通路など)
  2. 何をして?(作業:運ぶ、上る、しゃがむ、急いで移動、積み替えなど)
  3. どうなる?(結果:転ぶ、落ちる、腰を痛める、ぶつけるなど)

例:よくある書き方(短くてOK)

  • 倉庫の入口で/荷物を運んで/段差でつまずきそう
  • 厨房で/急いで移動して/濡れ床で滑りそう
  • 現場で/脚立に上って/バランスを崩しそう
  • 搬入口で/荷物を持ち上げて/腰が痛くなりそう

これが書けたら半分勝ちです。
次は「どれから直す?」を決めます。

優先順位の付け方(小さな会社向けの決め方)

対策は全部を一気にやろうとすると止まります。
小さな会社ほど、“決め方”をシンプルにすると動きます。

優先順位は、この3つで決める

  • よく起きそうか:毎日通る?毎日やる作業?
  • 起きたら重いか:転んだら大ケガになりそう?長く休む?
  • 直しやすいか:今週中に変えられる?費用ゼロでできる?

そして、迷ったらこのルールがおすすめです。

「重い事故になりそう」×「直しやすい」を最優先にする。
これが一番、効果が出て“次が続く”順番です。

よくある最優先の例

  • 転倒:暗い通路/段差/滑る床(直しやすく、事故が重くなりやすい)
  • 腰痛:持ち上げ+ねじり+中腰が続く作業(改善の当たりが出やすい)
  • 墜落:脚立の使い方が雑/足場が不安定(1回で大事故になりやすい)

対策メニュー(費用ゼロ→小コスト→投資)

ここは「結局なにを変えるの?」に答えるパートです。
大切なのは、費用ゼロの改善から始めて、必要なところだけお金を使うことです。

① 費用ゼロでできる(まずここ)

  • 通路・床の物を減らす(つまずき要因を消す)
  • 濡れ床のルールを「気づいた人がすぐ拭く」にする(担当固定にしない)
  • 段差に目立つテープを貼る(見落としを減らす)
  • “急がせる段取り”を見直す(締切直前に運ばせない)
  • 重いものは置き場を変える(持つ距離・回数を減らす)
  • 脚立・踏み台の置き方を統一する(探して無理な物を使わない)

② 小コストで効く(次にここ)

  • 照明を追加する(暗さは転倒の大きな原因)
  • 滑り止めマット、滑りにくいテープを使う
  • 台車を増やす(持ち上げ回数を減らす)
  • 安定型の踏み台に替える(グラつきを減らす)
  • 手袋・靴の見直し(滑りやすい靴は事故のもと)

③ 投資が必要(必要なところだけ)

  • 手すりの設置、段差解消
  • 床材の変更(滑りやすい床を根本改善)
  • レイアウト変更(動線を短くする・交差を減らす)
  • 補助具・装置の導入(持ち上げを仕組みで減らす)

「投資が必要かも」と思ったら、先に費用ゼロ/小コストの改善で、 “どこにお金を使うと一番効くか”が見えてからが安心です。

疲れと安全(勤務間インターバル等の考え方)

ご要望にあった「勤務間インターバル」「連続勤務」「つながらない権利」「ストレスチェック」について、 Day2では“安全対策としての使い方”に絞って触れます。

結論:疲れを減らすだけで、転倒・腰痛のリスクが下がりやすい

高年齢になるほど、寝不足や回復不足があると、足元の判断や踏ん張りに影響が出やすいです。
つまり「疲れを溜めない運用」は、安全対策と相性が良いです。

制度がどうなるかに関係なく、今できる現実策

  • 勤務と勤務の間の休みを守りやすいシフトにする(無理な詰め込みを避ける)
  • 連続勤務になりそうなときは、前もって交代・代休をセットで決める
  • 勤務外の連絡は「緊急だけ」にして、緊急の定義を1行で決める
  • 朝の5分確認で「寝不足・痛み・ふらつき」を言える空気を作る(言っても責めない)
  • 相談窓口(社内 or 外部)を一つ決めておく(ストレスを抱え込ませない)

これらは、法律の細かい動きがどうであっても、事故を減らす方向に働きます。
「制度が確定してから動く」より、先に“疲れを減らす運用”を入れた方が、結果的に得をすることが多いです。

今日やるならこれ(最短スタート)

「理屈は分かった。でも忙しい」方へ。
今日やるなら、これだけで十分スタートになります。

最短スタート3点セット(30分〜)

  1. 紙1枚に「どこで/何をして/どうなる」を3つ書く
  2. その中から“重い事故になりそう”ד直しやすい”を1つ選ぶ
  3. 費用ゼロでできる改善を1つだけやる(片付け/段差テープ/ルール1行など)

大事なのは「完璧」より「前に進むこと」です。
1つ改善できると、現場の空気が変わります。次が続きます。

まとめ+要約

  • エイジフレンドリーは「年齢に合わせて、つまずきにくく・痛めにくい職場に整える」考え方。
  • 危険の見つけ方は「どこで/何をして/どうなる」の3ステップで十分。
  • 優先順位は「よく起きそう」「起きたら重い」「直しやすい」で決める。迷ったら「重い×直しやすい」を最優先。
  • 対策は「費用ゼロ→小コスト→投資」の順で進めると止まりにくい。
  • 勤務間インターバル等は、制度の確定を待つより「疲れを減らす運用」を先に入れると安全対策として効く。

FAQ(よくある質問)

Q1. 「危険の洗い出し」って、専門家じゃないとできませんか?

できます。むしろ現場が一番よく知っています。
難しく考えず、「どこで/何をして/どうなる」を3つ書くだけで十分スタートになります。

Q2. 現場が「面倒だ」と言って動きません…

“守れ”より、“楽になる”から入るのがおすすめです。
例えば、台車を増やす、置き場を変える、片付けで通路を広げるなど、 手間が減る改善は受け入れられやすいです。

Q3. どれくらいやれば安心ですか?

まずは「危険TOP3が見えていて、そのうち1つは改善できている」状態が作れれば十分強いです。
Day3では、業種別の“あるある”から改善例を具体化します。

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「うちの“危険TOP3”は何になる?」「どれから直すのが一番効く?」など、会社ごとに最適解が変わります。
もしよければ、あなたの業種・働き方(雇用/一人親方/フリーランス混在など)に合わせて、 紙1枚で回る形に落とし込みます。

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