取適法で揉めやすい業種とは?よくあるトラブルと対策(委託側・受託側)

取適法で揉めやすい業種とは?よくあるトラブルと対策(委託側・受託側)

取適法の話は「法律だから全部同じ」と思われがちですが、実際はそうでもありません。
取引のクセ(商習慣)が強い業界ほど、揉めやすいポイントが決まっているからです。

Day3では、よく問題になりやすい業種を中心に、どんな揉め方が起きやすいかと、 委託する側(発注側)・受託する側(受ける側)がそれぞれ何を整えるべきかを、 できるだけ現場の言葉でまとめます。

“揉める業種”に共通する3パターン

まず大前提として、揉めやすい業種には共通点があります。
どれも「悪い人がいる」ではなく、仕組みがないと自然に事故が起きるタイプの問題です。

共通パターン①:追加・変更が起きやすい

最初の発注内容がざっくりで、途中から「これもお願い」「やっぱりこうして」と増えていく。
その結果、受託側が無償で抱え込み、最後に揉める——よくある流れです。

  • 口頭での追加依頼が多い
  • 修正回数・範囲が決まっていない
  • 「ついでに」「簡単だから」で作業が増える

共通パターン②:単価が固定されやすい

毎年同じ単価、数年同じ単価、見積りを取り直さない。
コストが上がっても反映されず、受託側の負担が積み上がっていきます。

  • 単価改定のルールがない
  • 値上げの話を切り出しにくい空気がある
  • 「相場より安い」ことが当たり前になっている

共通パターン③:支払いが遅れやすい(検収が長い・支払サイトが長い)

受託側から見ると、支払いが遅れるほど資金繰りに直撃します。
委託側に悪気がなくても「検収が終わらない」「社内手続きが長い」で遅れがちです。

  • 検収の期限が決まっていない
  • 受領日(いつからカウントするか)が曖昧
  • 経理処理の都合で支払日が伸びる

物流(運送):待機・付帯作業・価格交渉が火種になりやすい

物流は、現場で「見えにくい負担」が発生しやすいのが特徴です。
たとえば、荷待ち(待機)や荷役(積み降ろし)など、運賃とは別の作業が当たり前に発生し、 それが料金に反映されないと不満や赤字が積み上がります。

物流で起きがちな揉め方

  • 「待機が長い」「付帯作業が多い」けど、運賃は同じ
  • 繁忙期だけ条件が厳しくなる(時間指定・急な変更など)
  • コスト上昇(燃料・人件費)があるのに、価格交渉が進まない

委託側(荷主側・発注側)の対策

  • 運ぶ料金と、付帯作業(待機・荷役など)を分けて明確にする
    どこまでが運賃で、どこからが別料金かを最初に決めておくと、揉め事が激減します。
  • 条件変更があったら、すぐに共有する
    時間指定、ルート変更、積み方の指定などは「追加の負担」になりやすいので、後出しを減らします。
  • 価格の話し合いを避けない
    「忙しいから後で」「うちはこの単価で」と先延ばしが続くと、関係が悪化しやすくなります。
  • 支払い方法と支払日をシンプルにする
    複雑な相殺や手数料負担などは誤解を生みやすいので、ルールを明確にします。

受託側(運送側)の対策

  • 付帯作業を「サービス」にしない
    待機・荷役・手待ちなどを、見積りや請求書の項目として見える化します。
  • 条件が変わったら、即座に「確認」を文章で残す
    「本日の条件は◯◯で進めます」と短文でよいので、記録が残る形にします。
  • 価格交渉は“お願い”ではなく“確認”で出す
    「条件変更により単価の協議をお願いします」と、候補日を添えて出すと進みやすいです。

建設:追加工事・変更・支払サイトが揉めやすい

建設は、工事が進むほど「現場で追加が出る」のが自然です。
だからこそ、変更の扱いを決めていないと、最後に「こんなはずじゃなかった」が起きます。

建設で起きがちな揉め方

  • 口頭で追加工事が増え、最後に金額で揉める
  • 工程がずれて、追加の人件費や手配が発生する
  • 支払サイトが長く、下位の受託側が苦しくなる

委託側(元請・発注側)の対策

  • 変更が出たら「変更指示」を必ず出す
    口頭のまま進めるほど、後で揉めます。短い文書やメールでもよいので形に残します。
  • “ついで作業”を頼むなら、金額か工数の合意を取る
    「少しだけ」「簡単に」こそ、揉めやすいポイントです。
  • 検収と支払いの流れを短くする
    検収が長いほど支払いが遅れます。検収の期限を決めるだけでも改善します。

受託側(下請・協力会社側)の対策

  • 変更依頼には「追加見積り」をセットにする
    「対応は可能です。追加分のお見積り(または工数・納期調整)をご相談させてください」と返すだけで守りが強くなります。
  • 無償対応が必要なら「範囲」を区切る
    「ここまでなら無償、ここからは有償」の線引きを言葉にします。
  • 受領日・検収の扱いを確認する
    支払いが遅れる原因の多くは、ここが曖昧なことです。

IT/制作/広告:仕様追加・修正地獄・固定単価の落とし穴

IT・制作・広告は「目に見える完成品があるのに、完成の定義が曖昧」になりがちです。
結果として、修正が無限に続いたり、追加の作業が当たり前になったりします。

IT/制作/広告で起きがちな揉め方

  • 仕様が固まらないまま着手し、途中で大きく変わる
  • 修正回数が決まらず、いつまでも終わらない
  • 「これも含まれていると思った」で追加費用が出せない
  • 固定単価のまま、工数だけ増えて赤字になる

委託側(発注側)の対策

  • 完成の定義(どこまでで完了か)を決める
    例:「TOP+下層◯ページ」「ログイン機能まで」「納品形式は◯◯」など、短文でよいので合意します。
  • 修正の回数・範囲を決める
    例:「軽微な修正は2回まで」「大幅変更は別見積り」など、最初に線を引きます。
  • 仕様が固まらないなら、フェーズ(段階)で区切る
    「要件定義→設計→制作→テスト」のように区切ると、追加や変更が出ても整理しやすくなります。
  • 追加が出たら、金額か納期を調整する
    追加があるのに金額も納期も変わらないと、どこかで破綻します。

受託側(受ける側)の対策

  • 着手前に「範囲・納期・金額」を短文で確認する
    例:「成果物は◯◯、納期は◯月◯日、金額は◯◯円で進めます。相違があればご連絡ください。」
  • 追加依頼は「追加費用 or 納期調整」をセットで返す
    例:「追加部分があるため、追加見積り(または納期調整)をご相談させてください。」
  • “修正”と“仕様変更”を分けて扱う
    軽い修正は修正、設計が変わるものは仕様変更。言葉を分けるだけで話が整理されます。
  • やり取りは文章で残す
    チャットでもメールでもよいので、合意と変更の履歴を残します。

クリエイティブ(動画・デザイン等):やり直し・納期圧が起きやすい

クリエイティブ領域は「好み」が入りやすく、発注側のイメージが途中で変わりやすいです。
その結果、やり直しが増えたり、納期だけ前倒しされたりしやすい特徴があります。

起きがちな揉め方

  • 「やっぱり雰囲気が違う」で大幅に作り直し
  • 素材や指示が遅いのに、納期だけ変えない
  • 確認者が多く、修正が増えて終わらない

委託側(発注側)の対策

  • 参考イメージ(好き/嫌い)を最初に出す
    「こんな感じ」が言語化できないほど、修正は増えます。
  • 社内の確認ルートを先に決める
    確認者が増えるほど修正は増えます。最終決裁者を決めておくとスムーズです。
  • 大幅変更は追加費用・納期調整が必要と共有する
    受託側の無理を前提にしない運用に変えると、品質も上がりやすいです。

受託側(受ける側)の対策

  • 初期段階で「方向性の合意」を取る
    いきなり完成品ではなく、ラフ案や構成案で合意を取り、後戻りを減らします。
  • 修正回数の目安を提示する
    「2回まで」など、回数を決めるのが難しければ「軽微は◯回、大幅は別途」と分けます。
  • 素材遅れ・指示遅れは納期に影響することを先に伝える
    後になって言うと揉めるので、最初にルール化します。

今日の結論:揉めないコツは「分けて、残す」

業種が違っても、結局は同じところで揉めます。
それは、「追加・変更」「価格」「支払い」の3点です。

ここを揉めない形にするコツは、難しいことではなく、次の2つです。

  • 分ける:本体の作業と追加作業、軽微修正と仕様変更、運賃と付帯作業…などを分けて扱う
  • 残す:合意した内容と変更点を、メールやチャットで短文でもいいので残す

次のDay4では、これを現場で回すための「すぐ使えるテンプレ(発注・変更・価格協議・支払い)」を用意します。

まとめ+要約

  • 揉めやすい業種に共通するのは「変更が多い」「固定単価」「支払いが遅い」
  • 物流は待機・付帯作業・価格交渉が火種になりやすく、見える化が重要
  • 建設は追加・変更が当たり前だからこそ、変更指示と追加見積りの運用が重要
  • IT/制作/広告は完成の定義・修正範囲・フェーズ分けで“修正地獄”を防ぐ
  • 委託側・受託側の両方が「分けて、残す」を徹底すると揉め事は減る

FAQ(3問)

Q1. 業界の慣行でやってきました。全部を変えないといけませんか?

A. 全部を一気に変える必要はありません。まずは「発注内容の明確化」「変更が出たときの扱い」「支払いのルール」の3点だけでも整えると、 多くの揉め事は減ります。

Q2. 価格交渉が苦手で、話を切り出しにくいです。

A. “お願い”ではなく“確認”として出すと角が立ちにくいです。 例:「条件変更があるため、次回分の単価について一度協議をお願いします。候補日をお送りします。」 Day4で、貼り付けて使える文面テンプレを用意します。

Q3. 変更や追加が多い取引は、どう設計すると安全ですか?

A. 「本体の範囲」と「追加の範囲」を分けて、追加が出たら“追加費用 or 納期調整”のどちらかを必ず動かす設計が安全です。 あわせて、合意した内容を短文でもいいので残すと、後から揉めにくくなります。

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