一番トラブルが増えやすいのは価格交渉|「協議した」と言える状態の作り方

一番トラブルが増えやすいのは価格交渉|「協議した」と言える状態の作り方

※本記事は、2026年1月1日施行の「中小受託取引適正化法(取適法)」を前提に、価格交渉で揉めやすいポイントを「現場で再現できる形」で整理したものです。 最終的な判断は、取引の形や相手の規模、個別事情で変わります。

はじめに

取適法が始まってから、現場で増えやすいのが「値上げ相談」「原価上昇の相談」「人手不足で単価を上げたい」といった話です。
ここで怖いのは、値上げに応じる/応じない以前に、“協議になっていない”扱いになることです。

発注側も受注側も、忙しい中でのやり取りになるほど、こんな流れが起きがちです。

  • 受注側:「コストが上がっているので相談したい」
  • 発注側:「いまは厳しい。検討します」
  • (そのまま返信が止まる/結論だけが一方的に来る)

こうなると、当事者としては悪気がなくても、後から見て「協議したと言えるのか?」が焦点になりやすくなります。
Day2では、結論よりも“過程”を整えるためのコツを、発注側・受注側の両方の目線でまとめます。

本文

何が新しくNGになったのか

取適法で特に意識したいのは、受注側から価格協議を求められたのに、協議に応じずに一方的に代金を決めることが禁止された点です。

ここを短く言うと、
「相談が来たら、無視せず、材料を見て、理由を示して結論を出す」
これが“協議”の芯になります。

「協議」って、どこまでやればいい?

「協議」と聞くと、会議室で議事録を作って…と身構えがちですが、現場ではそこまで重く考えなくて大丈夫です。
答えはシンプルで、相手の話を受け止め、材料を見て、理由を示して結論を出すことです。

注意:「話は聞いた(つもり)」でも、実態として
返信がない 先延ばし 理由の説明がない 材料を出さない
こうなると“協議になっていない”と見られやすくなります。

つまり、必要なのは「形式」よりも「中身」です。
たとえば、次の3点が残っていれば、後から見ても状況が説明しやすくなります。

  • いつ相談が来て、いつ話し合ったか(日時)
  • 何を材料にしたか(条件・前提・数字・事情など)
  • なぜその結論になったか(理由)

堅い議事録がなくても、メール・チャット・簡単なメモで「過程」が追えるだけで、揉めにくさが大きく変わります。
要は、“後から説明できる状態”を作ることです。

発注側がやりがちな危ない対応

ここは「やりがち」なので、責める話ではありません。
忙しい現場ほど起きます。でも、起きやすいからこそ、先に潰す価値があります。

危ない例①

申し出を放置する(返事しない/既読スルー/先延ばし)

「今は忙しいから後で…」が積み重なると、結果的に協議の場が作れず、相手には“無視された”体験として残ります。

危ない例②

「無理」の一言で終わる(理由・代替案がない)

結論が同じでも、理由があるかないかで揉めやすさは大きく変わります。理由がないと「一方的」と受け取られやすくなります。

危ない例③

判断材料を出さずに押し切る(こちらの事情だけ)

発注量・納期・仕様・予算など、判断に使った材料が共有されないと、相手は納得のしようがありません。結果として対立が深くなります。

大事なのは、発注側が「勝つ」ことではなく、取引が続く形に整えることです。
値上げを全部受けられないときほど、「理由」と「代替案」が効きます。

受注側が通りやすくする出し方

受注側(中小企業・個人事業主・フリーランス)にとっては、「言い方」で損をしやすいのが価格交渉です。
ただ、難しい資料を作り込まなくても、次の3点を短く出すだけで、協議が前に進みやすくなります。

  • 何が上がったか(材料費、人件費、外注費など)
  • いくら上げたいか(希望)
  • 代替案(仕様変更、納期調整、数量調整、段階的改定など)

これが揃うと、発注側は「判断」しやすくなります。
逆に、根拠も代替案もないと、発注側は“怖くて動けない”状態になり、話が止まりがちです。

例(短くてOK)

「原材料が上がり、現状の単価だと赤字になりやすいです。
4月分から単価を10%改定できないか相談したいです。
もし難しければ、納期を1週間延ばす/仕様を一部簡略化などで調整も可能です。」

今日から使える“協議の型”

最後に、発注側・受注側それぞれが「今日から」使える型を置いておきます。
型があると、担当者ごとのばらつきが減り、トラブルも減ります。

発注側(委託する側)の型

  1. 申し出を受けたら、協議の場(日時)を確保する(先延ばしにしない)
  2. 判断材料を整理する(発注量、仕様、納期、予算、利益、代替手段)
  3. 結論と理由を短く出す(なぜその判断か)
  4. 代替案を添える(段階的改定、数量・仕様・納期の調整など)
  5. やり取りを残す(メール/チャット/メモでOK)

受注側(中小企業・個人事業主・フリーランス)の型

  1. 上がった要因を短く出す(ざっくり数字でOK)
  2. 希望単価と、可能なら最低ラインも添える
  3. 代替案を用意する(仕様変更、納期、数量、段階的改定)
  4. 協議の希望日を出す(「今週15分だけ」など小さく)
  5. 結論を文面で確認する(後で齟齬が出にくい)

取適法で一番ラクになる考え方はこれです。
「勝ち負けの交渉」ではなく、「条件調整の協議」に変える
そのための道具が「理由」と「代替案」と「過程の記録」です。

まとめ+要約

  • 取適法では「協議に応じない一方的な代金決定」が特にリスクになりやすい
  • 重要なのは結論よりも“過程が説明できること”
  • 発注側は放置・理由なし拒否が危ない。受注側は根拠+代替案が強い

FAQ(3問)

Q1. 何回協議すれば「協議した」ことになりますか?

A. 回数よりも中身です。相手の申し出を無視せず、材料を見て、理由と結論を示すことが大切です。 メールやチャットで過程が追えるだけでも、揉めにくさは大きく変わります。

Q2. 価格の根拠って、どのくらい細かく必要?

A. 完璧な原価表でなくても、上がった要因と影響を説明できれば前に進みます。 重要なのは「説明と材料があること」です。難しいときは、上がった項目を3つに絞って短く出すだけでも効果があります。

Q3. 協議がこじれて、取引が切られそうで怖い

A. だからこそ「代替案」をセットで出すのが有効です。 対立を“条件調整”に変えられると、感情のぶつかり合いが減り、関係も守りやすくなります。

📩 あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスが欲しい方は、 LINEで相談する から気軽にご相談ください。