支払いで違反が出やすいポイント|手形禁止の次に多い“見落とし”とは

支払いで違反が出やすいポイント|手形禁止の次に多い“見落とし”とは

※本記事は、2026年1月1日施行の「中小受託取引適正化法(取適法)」を前提に、支払い周りで起きやすい“うっかり”を、現場で点検できる形に整理したものです。 最終的な判断は、取引の形や相手の規模、個別事情で変わります。

はじめに

施行後、「手形はもう使っていないから大丈夫」という声をよく聞きます。
でも、実はここからが本番で、“別の形で受注側に負担が残っている”と問題になりやすいです。

支払いは、発注側にとっては「いつも通りの経理処理」でも、受注側にとっては「資金繰り(キャッシュの流れ)」そのものです。
取適法の狙いは、受注側に一方的な資金負担がかかる状態を減らすこと。だから、形だけ変えても危ないケースがあります。

Day3では、支払いで特に見落とされがちなポイントを、発注側・受注側の両方の目線でまとめます。

本文

支払いで押さえる3つの基準

支払いの話は、細かい制度の言葉よりも「何を基準に見ればいいか」が大事です。
取適法の支払いは、ざっくり次の3つで押さえると整理しやすいです。

基準①

手形払いは禁止

「手形を出しているかどうか」だけでなく、これまで手形を前提に組んでいた支払いの流れが残っていないかを点検します。

基準②

期日までに、満額の現金を受け取りにくい形は危ない

電子記録債権やファクタリング等でも、条件によっては「期日に満額の現金にならない」形があり得ます。 形を変えただけで実質が同じだと、問題が残ります。

基準③

振込手数料・決済手数料などを受注側に負担させるのは要注意

「合意しているからOK」「慣習だからOK」になりにくい論点です。 実務では、支払額から差し引かれていないか、請求書で相殺していないかを見ます。

ここまでを一言でまとめると、支払いの合言葉はこれです。
「期日までに、手数料を引かれない“満額の現金”が受注側に渡るか?」
これを軸にすると、経理・現場・取引先の会話がズレにくくなります。

よくある見落とし(手数料・満額現金)

施行後に実際に起きやすいのは、「ルールは変えたつもり」でも、別の場所に負担が残ってしまうことです。

よくある見落とし:
決済手数料 振込手数料 早期資金化の手数料 相殺(請求から差引き) 部署ごとに条件が違う
「総額では払っているつもり」でも、受注側の手元に残る金額が減っていると揉めやすくなります。
見落とし例①

支払額から振込手数料を差し引いている

少額でも積み重なると不満が溜まりやすく、施行後は「これ、直すべき?」という相談が増えがちです。

見落とし例②

“現金化までに手数料がかかる仕組み”に切り替えている

手形はやめたが、受注側が期日までに満額の現金を得るには手数料が必要…という形だと、 本来の狙い(資金負担を押し付けない)に反します。

見落とし例③

社内で条件がバラバラ(現場判断で例外が増える)

「本社ルールはOK」でも、部署や担当者によって例外があると、取引先からは“会社として信用できない”になりやすいです。

こうした見落としは、違反リスクだけでなく、現場の関係性にも響きます。
取引先は「お金の話」は言い出しにくいので、言われないまま不満が積もって、突然取引が終わることもあります。

発注側の直し方(現実的に)

「全部を一気に変える」のは大変です。なので、現実的には次の順番が進めやすいです。

発注側:まずここだけ点検

  • 請求額と支払額が一致しているか(差し引きがないか)
  • 振込手数料・決済手数料の負担者が明確か(受注側負担になっていないか)
  • 期日までに満額の現金が渡る仕組みか(現金化に手数料が必要になっていないか)
  • 部署ごとの例外がないか(運用が揃っているか)
実務のコツ:
支払い条件は「経理だけの話」にしない方がうまくいきます。
現場(発注担当)と経理がズレると、取引先に説明できず、結果的に揉めやすくなります。
合言葉は、やはり「期日までに満額現金」です。

受注側の確認フレーズ

受注側としては、支払いの条件に不安があっても、ストレートに言うと角が立つことがあります。
そんなときは、感情ではなく「基準の確認」に落とすと話が前に進みやすいです。

使える一言:
支払期日までに、手数料を引かれない満額の現金を受け取れる形ですか?

この言い方だと、「払えないの?」ではなく「条件の確認」になるので、相手も答えやすくなります。
もし相手が「うちはその仕組みで…」と言った場合も、論点がはっきりします。
その上で、別の支払い方法や手数料負担の見直しを相談しやすくなります。

支払いは、発注側・受注側どちらにとっても「信用」の土台です。
取適法対応は“守り”に見えますが、実際は取引を続けるための“攻めの基礎”にもなります。

まとめ+要約

  • 手形禁止だけでなく「満額の現金」と「手数料負担」が重要
  • “形を変えても負担が残る”と、トラブルの芽になりやすい
  • 基準は「期日までに、手数料を引かれない満額現金」が渡るか

FAQ(3問)

Q1. 一括決済方式の手数料を差し引いて払っていました。今すぐやめるべき?

A. まずは「差し引きが起きているか」「受注側が満額現金を得られているか」を事実として確認しましょう。 その上で、手数料の負担者や支払い方法の見直しを進めるのが現実的です。 社内の経理処理・システム都合も絡むので、いきなり現場判断で例外運用を増やすより、会社として方針を揃える方が安全です。

Q2. 電子記録債権なら全部OKですか?

A. 形が電子でも、「期日までに満額の現金を得にくい」条件になっていないかがポイントです。 仕組みや条件で見え方が変わるので、現金化に追加の手数料が必要になっていないか、期日と受取額をセットで確認してください。

Q3. 受注側として、支払いが不安なとき何を見ればいい?

A. 「いつ支払われるか」だけでなく、「手数料を引かれず満額か」「期日までに現金になるか」を見てください。 不安がある場合は「期日までに満額現金を受け取れる形ですか?」と基準確認の形で聞くと、角が立ちにくく話が進みやすいです。

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