BCPや社内マニュアルはどう作る?現状整理から運用・改定までの5つの手順【Day4】

「必要性は分かったけれど、どこから作ればよい?」

「ひな形を入手したものの、空欄が多くて進まない」

「文書を増やして、現場の負担にならないか心配」

BCPや規程・マニュアルの策定は、最初から文章を書こうとすると、手が止まりやすくなります。

Day3では、責任者不在、システム停止、担当者の急な休みを例に、役割や判断基準を決めておく意味を確認しました。

Day4では、「現状を整理する」「役割を決める」「使える形にまとめる」「試して確かめる」「改定して共有する」の5つの手順で、進め方を整理します。

これは実務を進めるための提案です。法令などで必要とされる整備や手続きを、後回しにしてよいという意味ではありません。

手順1.文書を書く前に、守るものと困る場面を整理する

最初に考えたいのは、「どんな文書を作るか」よりも、「何を守り、どのような問題を減らしたいか」です。

例えば、次のような目的が考えられます。

  • 災害時に従業員の安全を確保し、重要な業務の復旧につなげたい
  • 社長が不在でも、必要な連絡や判断を進められるようにしたい
  • 顧客情報の扱いを、人によって変わらないようにしたい
  • 担当者が休んでも、期限のある仕事を引き継げるようにしたい
  • 苦情対応を、一人の従業員に抱え込ませないようにしたい

目的が違えば、必要な情報も文書の構成も変わります。すべてをBCPに詰め込まず、規程や業務マニュアルで扱う内容も整理しましょう。

BCPでは、止まったときの影響を確認する

BCPを考える際は、重要な事業や業務が止まると、顧客、取引先、自社の資金や業務にどのような影響が出るかを確認します。

そのうえで、復旧の目標と、必要な人員、設備、情報、外部サービスなどを整理します。

「重要な仕事だから」と名前を挙げるだけでなく、その仕事を続けるために何が必要かまで確認することが大切です。

今ある資料を集める

連絡先一覧、業務の手順、取引先との契約、既存の規程、システムの案内など、すでに使っている資料も確認してください。

使える内容は生かし、重複や食い違いを整理します。分からない事項は推測で埋めず、確認先と一緒に記録しましょう。

手順2.推進する人と、判断する人を決める

作業を進めるには、誰が情報を集め、誰が決定するかを明確にします。

「総務で作っておいて」「現場で相談して」という依頼だけでは、費用や権限に関する事項が決まらず、止まることがあります。

策定・見直しで確認したい役割
役割 主な担当内容
経営者・承認者 目的、優先順位、必要な費用、権限、会社としての方針を決める
推進担当者 情報収集、文書案の整理、関係者との調整、進捗確認を行う
現場担当者 実際の手順、注意点、対応できる範囲、困りごとを伝える
確認を支援する人 専門性が必要な事項について、法令・契約・技術面などを確認する

少人数の事業では、役割を兼ねても構いません。ただし、推進担当者が会社の重要な判断まで一人で背負う運用は避けましょう。

作業を、具体的な単位に分ける

例えば、「連絡体制を整備する」だけでは、完了したか分かりにくくなります。

「通常の判断者と代替者を確認する」「連絡先を更新する」「関係者へ説明する」というように分けると、進捗を確認しやすくなります。

それぞれに担当者と確認日を付け、未決事項は経営者へ上げる流れを決めてください。

手順3.担当者が行動できる形にまとめる

情報が集まったら、実際に使う人を思い浮かべながら文書にします。

Day2で確認した「必ず守ること」「条件の範囲で選べること」「責任者へ確認すること」を整理すると、判断の境目が見えやすくなります。

手順を書くときの基本項目

  • どのような場面で使うのか
  • 最初に確認することは何か
  • 誰が行動・判断するのか
  • 何を行い、何を保留するのか
  • 通常の方法が使えない場合はどうするのか
  • 誰へ報告し、どこへ記録するのか

「適切に対応する」「速やかに共有する」だけでは、具体的な動き方が伝わらないことがあります。

連絡手段、確認先、共有する情報など、行動に必要な内容を補いましょう。

説明用の例:「上司へ報告する」を具体化する

システム停止時の報告について、次のように整理する方法があります。

業務システムへ接続できない場合は、発生時刻、利用できない機能、画面に表示された内容を、定めた連絡先へ報告する。

通常の連絡先につながらない場合は、代替の連絡先へ連絡する。復旧見込みが未確認の間は、顧客へ確定した時刻として案内しない。

これは文例です。実際には、システムの構成や障害・事故の対応方針に合わせて調整してください。

詳しい資料と、すぐ見る資料を用意する

判断の背景や詳細な説明が必要な一方、緊急時に長い文書を読み込む余裕はありません。

詳しい計画や規程に加えて、最初の行動と連絡先を確認できる短い案内を用意する方法があります。

ただし、短い案内だけで必要な計画や措置がすべて整うとは限りません。関連する文書を参照できるようにしておきましょう。

手順4.説明し、訓練や想定確認で使えるか試す

文書ができたら、担当者へ説明し、実際に使えるかを確認します。

内閣府の事業継続ガイドラインでは、計画に加えて、教育・訓練や点検・改善を含む継続的な取組が示されています。

例えば、机上で一つの場面を設定し、次の順番で確認してみましょう。

  1. 担当者が、使う資料を見つけられるか
  2. 最初の行動と連絡先が分かるか
  3. 責任者不在時も、次の確認へ進めるか
  4. 代替方法に必要な設備・権限が実際に使えるか
  5. 対応結果を記録・共有できるか

「資料に書いてある」ことと、「その場でできる」ことは別です。

手順には代替担当者の名前があっても、必要な資料を開けない、操作を知らないといった問題が見つかる場合があります。

確認の目的は、できなかった人を責めることではない

分からなかった箇所や、実行できなかった条件は、改善の材料として残します。

初めから正解を言わせる練習にせず、「どこで迷うか」「何が足りないか」を確かめましょう。

安全上・法令上の問題がある未承認の方法を、実際の業務で試すことは避け、必要な確認を先に行ってください。

手順5.不足を直し、最新版を共有する

確認で見つかった問題は、担当者と対応内容を決めて修正します。

文章を直すだけで解決するものもあれば、人員、設備、教育、権限の整備が必要なものもあります。

見つかった問題と改善の例
見つかった問題 検討する改善
資料を見つけられない 保存場所と参照方法を整理し、周知する
代替者が判断できない 権限の範囲と、さらに確認する先を明確にする
代替手段が使えない 設備、利用条件、アクセス権限などを整える
手順が現場と違う 実態と必要な基準を確認し、手順や運用を修正する
判断事項が未決のまま 承認者へ上げ、決定内容と残る課題を記録する

改定したら、古い版との混在を防ぐ

文書には、名称、版番号や改定日、管理担当者などを付けると、使う版を確認しやすくなります。

改定後は必要な承認や周知を行い、業務で参照する場所を最新版へそろえましょう。旧版は保存の必要性に応じて区別し、誤って使わないように管理します。

就業規則など、制定・変更に法的な手続きが関わる文書もあります。すべてを同じ方法で変更できるとは考えず、文書ごとの手続きを確認してください。

一度決めた後は、何をきっかけに見直す?

定期的な確認に加えて、状況が変わったときにも見直しが必要です。

  • 担当者や責任者が変わった
  • 拠点、設備、システムを変更した
  • 重要な取引先や外部サービスが変わった
  • 新しい業務を始めた
  • 訓練や実際の対応で、不足が見つかった
  • 法改正や行政の案内などで、確認が必要になった

「誰かが気付いたら直す」だけでは、更新が抜ける可能性があります。

人事変更やシステム変更を確認した人が、文書の管理担当者へ知らせるなど、普段の仕事と更新をつなげましょう。

今日できること:一つの作業に、担当者と確認日を付ける

すでにBCPや規程がある方は、今の文書から一つ、確認が必要な項目を選んでください。

まだ着手していない方は、「重要な業務を洗い出す」「責任者不在時の判断者を確認する」など、最初の作業を選びます。

そして、次の4つを書いてみましょう。

  1. 確認・改善すること
  2. 作業を進める人
  3. 判断・承認する人
  4. 結果を確認する日

「BCPを作る」という大きな課題を、実際に進められる作業へ分けることが、着手の助けになります。

よくある質問

Q.ひな形のすべての項目を、すぐに埋める必要がありますか?

A.不明な内容を推測で埋めることは避けましょう。必要な項目を確認し、未確認事項には担当者と確認先を決めます。法令等で求められる内容や期限がある場合は、それに従って整備してください。

Q.外部に作成を依頼すれば、社内での検討は不要ですか?

A.外部の支援は役立ちますが、優先順位や権限、現場で実行できるかの確認には、自社の関与が必要です。完成後の管理や改定を担う人も決めましょう。

Q.毎年、すべて作り直すのでしょうか?

A.一律に作り直すということではありません。定期的な確認と変更時の確認を行い、必要な部分を改定します。適用される制度などに定めがある場合は、その要件も確認してください。

Q.マニュアルを短くすれば、使いやすくなりますか?

A.短さだけでは決まりません。判断や行動に必要な情報があり、必要な場面で参照できることが大切です。要点をまとめた案内と詳細資料を組み合わせる方法もあります。

まとめ+要約

BCPや規程・マニュアルは、現状を整理し、役割を決め、使って確かめながら整えることで、自社の判断を支える仕組みになります。

  • 文書を書く前に、目的と重要な業務、困る場面を整理しましょう。
  • 推進担当者、現場担当者、承認者の役割を明確にしましょう。
  • 判断条件、連絡先、代替方法、記録方法を具体化しましょう。
  • 説明や訓練で、実際に使えるかを確認しましょう。
  • 不足を修正し、最新版の共有と継続的な見直しにつなげましょう。

次回は、「作った後」を続ける経営の仕組みを考えます

最終日のDay5では、5日間の内容を振り返り、規程や計画を放置しないための点検と、経営者・従業員それぞれの関わり方を整理します。

「決めると動けない」という不安を、自社が動きやすくなる仕組みへ変えていきましょう。

BCPや社内文書の整備を、具体的な作業に落とし込みたい方へ。

「推進する人や進め方を決めたい」「既存のマニュアルが現場に合っているか確認したい」という方は、LINEで相談するから気軽にご相談ください。

法令への適合や規程の制定・改定手続きは、内容に応じて所管行政機関や社会保険労務士、弁護士などへご確認ください。

参考情報

本記事は2026年10月25日時点で確認した公表資料に基づく一般的な解説です。5つの手順、文例、整理表は実務上の参考例であり、BCPや各種規程に必要な事項を網羅するものではありません。自社に適用される法令・契約などを踏まえて検討してください。