エアコンの不備で熱中症が起きたら?会社の責任を考える

エアコンの不備で熱中症が起きたら?会社の責任を考える
はじめに
「エアコンの調子が悪いけれど、まだ動いている」
「修理業者が混み合っているので、しばらく様子を見よう」
「窓を開けて扇風機を回せば何とかなるだろう」
暑い時期になると、このような判断が行われることがあります。
しかし、エアコンの不具合を把握しながら、暑い環境で働かせ続けた結果、 従業員が熱中症になった場合、会社の対応が問われる可能性があります。
今回の義務化は、報告体制と対応手順を決めれば、 会社の責任がすべてなくなるという制度ではありません。
職場には、働く人の生命や身体の安全に配慮する責任があります。
目次
1.安全配慮義務とは
会社は、働く人が生命や身体の安全を確保しながら働けるよう、 必要な配慮をすることが求められています。
これを一般に「安全配慮義務」といいます。
熱中症対策について考えるときは、2025年から義務化された報告体制や 対応手順だけを見るのではなく、職場全体として危険を減らす対応を 行っていたかが重要になります。
たとえば、会社が次の事実を把握していたとします。
- 室温が高くなっていた
- エアコンが故障していた
- 従業員から改善を求められていた
- 過去に体調不良者が出ていた
- WBGT値が高い状態だった
- 休憩を取りにくい勤務状況だった
それにもかかわらず、必要な措置を取らずに作業を続けさせれば、 安全への配慮が不足していたと判断される可能性があります。
ただし、実際に法的責任が認められるかどうかは、 予見できた危険の程度、会社が行った対策、事故との関係など、 個別の事情によって判断されます。
2.エアコン不備が問題になりやすい場面
エアコンが故障したこと自体で、直ちに責任が決まるわけではありません。
重要なのは、故障後に会社がどのような対応をしたかです。
特に、次のような状態は注意が必要です。
不具合を知りながら放置した
従業員から何度も「冷房が効かない」と報告されていたのに、 確認や修理を行わなかった場合です。
室温やWBGT値を確認しなかった
「たぶん大丈夫」という感覚だけで作業を続け、 実際の暑さを確認していなかった場合です。
代わりの対策を取らなかった
修理まで時間がかかるにもかかわらず、作業時間の変更、別室への移動、 臨時休業、スポットクーラーの設置などを検討しなかった場合です。
体調不良の訴えを軽く扱った
「みんな暑いのだから我慢して」「水を飲めば大丈夫」と対応し、 休憩や受診につなげなかった場合です。
作業を続けることを優先した
納期や売上を理由に、高い暑さ指数の中で長時間作業を 続けさせた場合です。
3.「修理を依頼中」なら十分なのでしょうか
修理を依頼していることは大切ですが、 それだけで働く人の安全が確保されるわけではありません。
修理まで1週間かかるのであれば、 その1週間をどう安全に働くかを考える必要があります。
厚生労働省のガイドラインでは、冷房設備などを設けるだけでなく、 すでに設置されている設備の機能を点検することも示されています。
つまり、「エアコンが設置されているか」ではなく、 「必要なときに正常に使えるか」が重要です。
また、WBGT基準値を大幅に超える場合は、 原則として作業を行わないこともガイドラインで示されています。 やむを得ず行う場合でも、単独作業を避け、 休憩を長めにするなどの対応が求められます。
4.事故を防ぐための代替策
エアコンが故障した場合は、修理と同時に、 次のような代替策を検討します。
- 冷房が使える部屋へ作業場所を移す
- 在宅勤務に切り替える
- 営業時間や作業時間を変更する
- 暑い時間帯の作業を中止する
- 業務量を減らす
- スポットクーラーを設置する
- 日よけや遮熱カーテンを設置する
- 冷房のある休憩場所を確保する
- 休憩の回数を増やす
- 一時的に休業する
- 一人作業を避ける
- 体調確認の回数を増やす
扇風機は役立つ場合がありますが、室温が極端に高い環境では、 熱い空気を当て続けることになる可能性もあります。
設備を一つ置けば解決すると考えず、 実際のWBGT値や体調を確認しながら判断します。
5.記録を残す意味
熱中症対策では、実施した内容を簡単に記録しておくことも重要です。
たとえば、次の記録です。
- 室温やWBGT値
- エアコンの点検日
- 不具合の報告日時
- 修理を依頼した日時
- 代替措置の内容
- 従業員への説明日
- 休憩時間の変更
- 体調不良者への対応
- 救急要請や医療機関への相談内容
記録は、責任逃れのためだけに残すものではありません。
「前回どのような問題が起きたか」 「次にどこを改善すべきか」を確認し、 事故を繰り返さないために役立ちます。
まとめ+要約
エアコンの不備を知りながら、高温の職場で働かせ続けた結果、 熱中症が起きた場合、会社の安全への配慮が問われる可能性があります。
修理を依頼しただけでなく、修理が終わるまでの間に、 作業場所の変更、時間短縮、休業、臨時の冷房設備など、 危険を減らす代替策を取ることが重要です。
今回の義務化は、報告体制と対応手順を作れば、 ほかの安全対策が不要になるというものではありません。
設備、働き方、休憩、体調確認を含め、 職場全体で考える必要があります。
FAQ
Q1.エアコンが故障したら、必ず会社を休みにする必要がありますか?
必ず休業しなければならないとは一概にいえません。 ただし、暑さの程度や作業内容を確認し、安全を保てない場合は、 作業中止、場所の変更、在宅勤務、営業時間の変更などを 検討する必要があります。
Q2.古いエアコンでも動いていれば問題ありませんか?
動いているだけでは十分とは限りません。 実際に室温やWBGT値が下がっているか、 必要な冷房能力があるかを確認することが大切です。
Q3.従業員自身の体調管理の問題ではありませんか?
睡眠不足や持病など、本人の体調が影響することはあります。 しかし、それだけで会社側の職場環境や作業管理への配慮が 不要になるわけではありません。