2026年10月までに何をする?法人・個人事業主のインボイス対応6ステップ

「2026年10月から何が変わるのかは分かったけれど、結局うちは何をすればいい?」

ここまでの記事を読んで、そんな疑問を持った方もいるのではないでしょうか。

Day1では、2026年10月からインボイス制度の負担軽減措置が一気になくなるのではなく、段階的に変わることを確認しました。

Day2では、2割特例終了後の対応が法人と個人事業主で異なることを整理しました。

Day3では、免税事業者などとの取引について、仕入税額控除が80%から70%へ変わることを確認しました。

ここまで理解できたら、次に必要なのは、「自分の場合は、何を確認し、何を決めればいいのか」を整理することです。

インボイス対応というと、難しい制度をすべて理解しなければならないように感じるかもしれません。

しかし、実際には順番に確認していけば大丈夫です。

この記事では、中小企業経営者や個人事業主が2026年10月に向けて確認しておきたいことを、6つのステップに分けて整理します。

結論:2026年10月までに確認したいのはこの6つ

最初に結論からお伝えします。

  1. 現在、自分がどの課税状況なのか確認する
  2. 2割特例を使っているか確認する
  3. 2割特例をいつまで使えるか確認する
  4. 法人・個人事業主それぞれの次の選択肢を確認する
  5. インボイス未登録取引先への支払額を把握する
  6. 税額だけでなく、経理負担まで含めて比較する

大切なのは、「2026年10月になってから考える」のではなく、「その前に選択肢を見える状態にしておく」ことです。

制度変更そのものを必要以上に怖がる必要はありません。

まずは、自社・自分の現状を確認するところから始めましょう。

STEP1.まず「自分がどの立場なのか」を確認する

最初に確認したいのは、現在、自分が消費税上どのような立場にいるのかです。

たとえば、次のような違いがあります。

  • 免税事業者
  • インボイス登録をきっかけに課税事業者になった
  • 以前から課税事業者だった
  • 2割特例を利用している
  • 簡易課税を利用している
  • 一般課税で申告している

この立場によって、利用できる制度や今後の選択肢は変わります。

「インボイス登録しているから関係ある」というだけでは、まだ十分ではありません。

特に確認したいのは、インボイス登録をきっかけに課税事業者になったかどうかです。

これによって、2割特例や3割特例の対象になる可能性が変わります。

わからない場合は、直近の消費税申告書を確認するか、顧問税理士などへ確認してみましょう。

STEP2.現在「2割特例」を使っているか確認する

次に確認したいのが、現在2割特例を使っているかです。

2割特例は、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった一定の事業者について、消費税の納税額を売上税額の2割とできる制度です。

この制度を利用している場合、終了後に消費税の計算方法が変わる可能性があります。

特に法人では重要です。

一定の個人事業者に設けられた3割特例は、法人には適用されないからです。

現在2割特例を利用している法人は、「今は2割だから大丈夫」ではなく、「2割特例が終わった後、どう計算するか」まで考えておく必要があります。

STEP3.2割特例を「いつまで使えるか」を確認する

2割特例について、「2026年9月30日で終了」と覚えている方もいるかもしれません。

ただし、正確には、2026年9月30日までの日を含む課税期間が対象です。

そのため、すべての事業者が2026年9月30日に一斉に使えなくなるわけではありません。

法人の場合

法人は会社ごとに決算月が異なります。

たとえば3月決算の法人では、2026年4月1日から2027年3月31日までの課税期間に2026年9月30日が含まれます。

そのため、一定の要件を満たせば、この課税期間について2割特例を利用できるケースがあります。

つまり法人は、「自社の決算月」と「最後に2割特例を使える課税期間」を確認することが重要です。

個人事業主の場合

個人事業主は、原則として1月1日から12月31日が課税期間です。

そのため、要件を満たす場合は、原則として2026年分まで2割特例の対象になり得ます。

「2026年9月30日」という日付だけを見るのではなく、自分の課税期間単位で確認することが大切です。

STEP4.法人と個人事業主で「次の選択肢」を整理する

2割特例終了後の対応は、法人と個人事業主で分かれます。

法人の場合

法人には3割特例がありません。

そのため、2割特例終了後は主に、

  • 一般課税
  • 簡易課税

を比較することになります。

どちらが有利になるかは、業種、仕入れ、外注費、設備投資などによって変わります。

個人事業主の場合

一定の要件を満たす個人事業者は、2027年分・2028年分について3割特例を利用できる可能性があります。

そのため個人事業主では、

  • 3割特例
  • 簡易課税
  • 一般課税

を比較することになります。

ただし、「3割特例を使えるなら必ずそれが一番有利」ではありません。

一般課税・簡易課税・3割特例をどう比べる?

方法主な考え方特徴
一般課税実際の売上税額と仕入税額から計算実際の仕入れや設備投資を反映しやすい
簡易課税業種ごとのみなし仕入率で計算経理負担を軽くできる場合がある
3割特例売上税額の3割を納付一定の個人事業者のみ対象

ここで見るべきなのは、納税額だけではありません。

計算にかかる手間や、インボイスの確認作業、経理担当者の作業時間なども含めて比較することが大切です。

STEP5.インボイス未登録取引先への支払額を把握する

次に確認したいのが、インボイス未登録の取引先へ年間いくら支払っているかです。

2026年10月からは、免税事業者などインボイス発行事業者以外からの仕入れについて、経過措置による仕入税額控除が80%から70%へ変わります。

その後も、

70% → 50% → 30% → 経過措置終了

と段階的に変わっていきます。

つまり、未登録取引先への支払いが多い会社ほど、税負担への影響が大きくなる可能性があります。

ただし、ここで重要なのは、人数ではなく金額で確認することです。

未登録先が10社あっても、それぞれ年間数万円しか取引していない場合と、未登録先が1社だけでも年間数千万円の外注がある場合では、影響が大きく違います。

未登録取引先を一覧にしてみる

次のような表を作ると整理しやすくなります。

取引先登録状況年間支払額取引内容重要度
A社登録済み300万円仕入れ
Bさん未登録120万円外注
Cさん未登録30万円デザイン

この一覧があるだけでも、どの取引先から優先して影響を確認すればよいかが見えてきます。

Day3でもお伝えしたように、未登録だからという理由だけで取引を終了するのではなく、税負担と取引価値の両方を見て判断しましょう。

STEP6.納税額だけでなく「経理の負担」も比較する

制度を選ぶときに忘れやすいのが、事務負担です。

たとえば一般課税では、実際の仕入税額控除を計算するため、請求書や領収書について次のような確認が必要になることがあります。

  • インボイス登録番号
  • 税率
  • 課税区分
  • インボイスの有無
  • 経過措置の対象かどうか

一方、簡易課税は実際の仕入税額を一つひとつ使って納付税額を計算する方法ではないため、経理負担を抑えられる場合があります。

ただし、経理が楽=税額が安いではありません。

反対に、税額が少し安い=会社全体として最も得とも限りません。

比較するときは「会社全体の負担」で見る

一般課税・簡易課税・3割特例などを比較するときは、次の項目まで見ておくと判断しやすくなります。

  • 消費税の納税額
  • 経理担当者の作業時間
  • 会計ソフトの設定
  • インボイス確認作業
  • 税理士への依頼費用
  • 社内管理の手間

「税額」ではなく「事業全体の負担」で比較する。

これが、制度選択で大切な考え方です。

簡易課税を検討するなら届出時期も確認する

簡易課税については、いつ届出を出すかも重要です。

原則として、簡易課税制度を利用するには、適用を受けようとする課税期間が始まる前までに届出が必要です。

ただし、2割特例や3割特例を利用した事業者については、簡易課税へ移行しやすくするための措置があります。

一定の条件を満たす場合、2割特例または3割特例を適用した課税期間の翌課税期間について、その課税期間の確定申告期限までに簡易課税制度選択届出書を提出することで、簡易課税を適用できる仕組みがあります。

ただし、適用条件や期限は事業者ごとに異なることがあります。

簡易課税を検討している場合は、自社・自分の届出期限を個別に確認しておきましょう。

「とりあえず簡易課税」にしない

2割特例終了後、

一般課税は難しそうだから、とりあえず簡易課税にしておこう

と考える方もいるかもしれません。

しかし、ここは少し慎重に考えたいところです。

たとえば、

  • 大きな機械を購入する
  • 店舗を改装する
  • 車両を購入する
  • 大規模な設備投資を予定している
  • 外注費や仕入れが大きく増える

といった年では、実際の仕入税額を反映できる一般課税のほうが有利になる可能性があります。

一方、仕入れが比較的少ない業種では、簡易課税が有利になる場合があります。

だからこそ、届出を出す前に一度数字で比較することが重要です。

法人が特に早く確認しておきたいこと

現在2割特例を利用している法人は、早めに確認しておきたい事項があります。

理由は、法人には3割特例がないからです。

法人では、2割特例終了後に一般課税または簡易課税へ移ることになるため、次の項目を整理しておきましょう。

  1. 決算月
  2. 2割特例を最後に利用できる課税期間
  3. 過去1~2年の売上
  4. 過去1~2年の仕入れ・外注費
  5. 今後予定している設備投資
  6. 簡易課税を利用した場合の概算納税額

税理士へ相談している会社なら、「2割特例終了後の一般課税と簡易課税を比較してほしい」と具体的に伝えると話が進みやすくなります。

個人事業主が特に確認しておきたいこと

個人事業主は、まず3割特例を利用できるかどうかを確認します。

3割特例は、すべての個人事業主が自動的に使える制度ではありません。

対象になる場合でも、3割特例だけを見ればよいとは限りません。

比較したいのは、

  • 3割特例
  • 簡易課税
  • 一般課税

です。

また、将来的に法人化を検討している場合は、インボイスだけで法人化の時期を決めないことも重要です。

法人化すると、社会保険、法人税、法人住民税、決算費用、役員報酬、登記など、消費税以外にも多くの条件が変わります。

やってはいけない3つの判断

1.「2026年10月になってから考えればいい」

制度変更後に初めて確認すると、届出や会計処理の準備で慌てる可能性があります。

今のうちに、少なくとも選択肢だけは整理しておきましょう。

2.「簡易課税なら必ず得」

簡易課税は便利ですが、税額面で必ず有利とは限りません。

設備投資や仕入れ状況によって結果は変わります。

3.「インボイス未登録先とは全部取引をやめる」

未登録先との取引では、税負担が増える場合があります。

しかし、取引先変更による価格上昇や品質低下のほうが大きな損失になることもあります。

税額と事業上の価値を合わせて判断しましょう。

2026年10月対応チェックリスト

最後に、自社・自分の状況を確認してみましょう。

確認項目自分の状況
法人・個人事業主
インボイス登録済みか
現在2割特例を使っているか
2割特例を最後に使える課税期間
基準期間の課税売上高
現在の課税方式
簡易課税を選択しているか
3割特例の対象になりそうか
未登録取引先への年間支払額
今後の設備投資予定
一般課税で試算したか
簡易課税で試算したか

すべてを今日埋める必要はありません。

むしろ、「空欄になっている項目こそ、これから確認すること」と考えてください。

今日やっておきたいこと

今日やってほしいのは、直近の消費税申告書を一度確認することです。

まず確認したいこと

  1. 2割特例を使っているか
  2. 簡易課税なのか、一般課税なのか
  3. インボイス未登録取引先への年間支払額はいくらか

この3つがわかれば、2026年10月以降に何を比較すればいいのかがかなり見えやすくなります。

まとめ|必要なのは「制度を覚えること」ではなく「自分の数字を確認すること」

2026年10月のインボイス制度見直しに向けて、難しい税制をすべて暗記する必要はありません。

まず確認したいのは、自分が今どの制度を使っているのかです。

そして、その制度が終わった後にどんな選択肢があるのかを整理します。

法人なら、2割特例終了後の一般課税と簡易課税を比較します。

一定の個人事業者なら、3割特例も含めて比較します。

さらに、免税事業者などインボイス未登録取引先への支払額を確認し、2026年10月以降の税負担への影響も把握しておきましょう。

最終的に大切なのは、「税額だけでなく、会社・事業全体の負担で判断すること」です。

数万円税金が安くなっても、経理作業が大幅に増えてしまえば、それが最善とは限りません。

反対に、多少税負担が増えても、経理がシンプルになり、本業に使える時間が増えるなら合理的な場合もあります。

2026年10月になってから慌てないためにも、今のうちに「自分の場合はどうなるか」を数字で見えるようにしておきましょう。

次回|インボイス改正をきっかけに法人化したほうがいい?

最終日のDay5では、「インボイス改正を考えると、個人事業主は法人化したほうがいいの?」という疑問を取り上げます。

法人化には、インボイス以外にも、

  • 税金
  • 社会保険
  • 信用
  • 融資
  • 事務コスト
  • 事業の成長

など、多くの判断材料があります。

さらに今回の改正では、一定の個人事業者には3割特例がある一方、法人にはありません。

そのため、「インボイスが変わるから法人化したほうが得」と単純には判断できません。

Day5では、5日間の内容をまとめながら、法人化する・しないを何を基準に決めればいいのかまで整理します。

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参考情報

この記事は、2026年9月時点で公表されている国税庁・財務省の令和8年度税制改正情報などをもとに作成しています。

  • 国税庁「令和8年度 税制改正特集」
  • 国税庁「消費税簡易課税制度選択届出手続」
  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱」

※税制の適用関係や届出期限は、課税期間、過去の届出、売上高、設備投資、事業区分などによって異なる場合があります。実際の申告方法や制度選択については、必要に応じて税理士などの専門家へご確認ください。