インボイス2割特例終了後はどうする?法人と個人事業主の違いをわかりやすく解説

「2割特例が終わったら、消費税が一気に増えるの?」

「個人事業主は3割特例が使えると聞いたけれど、自分も対象?」

「法人は、その後どうすればいい?」

2026年のインボイス制度見直しで、特に気になるのが「2割特例が終わった後」ではないでしょうか。

これまで2割特例を利用していた事業者にとっては、消費税の計算が比較的わかりやすく、事務負担も抑えやすい状態でした。

そのため、「2割特例がなくなったら、次はどうやって消費税を計算すればいいの?」と不安になる方もいるでしょう。

ここで大切なのは、法人と個人事業主を分けて考えることです。

2026年度の税制改正では、一定の個人事業者を対象に新しい「3割特例」が設けられました。

一方、法人にはこの3割特例がありません。

つまり、2割特例が終わった後は、法人と個人事業主で選択肢が変わります。

結論:2割特例終了後は法人と個人事業主で対応が変わる

最初に結論からお伝えします。

法人の場合

2割特例終了後は、原則として一般課税または簡易課税などで消費税を計算します。

法人は3割特例を利用できません。

個人事業主の場合

一定の要件を満たす個人事業者は、2027年分・2028年分について3割特例を利用できる場合があります。

つまり、「2割特例が、そのまま全員3割特例へ変わる」わけではありません。

ここを最初に理解しておくと、その後の判断がしやすくなります。

そもそも「2割特例」とは?

まず、2割特例について簡単に振り返っておきましょう。

2割特例は、インボイス登録をきっかけに、それまで免税事業者だった方が課税事業者になった場合の負担を軽くするために設けられた制度です。

通常、消費税の納税額は、基本的に次のような考え方で計算します。

売上で受け取った消費税

仕入れや経費で支払った消費税

= 納める消費税

一方、2割特例では、一定の要件を満たせば、売上にかかる消費税額の2割を納付するという比較的シンプルな計算方法を利用できます。

たとえば、売上にかかる消費税額が100万円だったとします。

制度を理解するために単純化すると、

100万円 × 20% = 20万円

を納付するイメージです。

そのため、2割特例を利用してきた小規模事業者にとって、終了後の負担がどうなるのかは重要な問題です。

2割特例はいつまで使える?

ここは特に間違えやすいポイントです。

「2割特例は2026年9月30日で終了する」と聞いたことがある方もいるでしょう。

ただし、正確には、2026年9月30日までの日を含む課税期間が適用対象です。

つまり、2026年9月30日になった瞬間に、すべての事業者が一斉に使えなくなるわけではありません。

個人事業主の場合

個人事業主の課税期間は、原則として1月1日から12月31日です。

そのため、2026年9月30日を含む2026年1月1日から12月31日までの課税期間については、要件を満たせば2割特例を利用できる可能性があります。

つまり個人事業主の場合、原則として2026年分まで2割特例の対象になり得るということです。

法人の場合

法人の場合は、会社ごとに決算月が異なるため注意が必要です。

たとえば、3月決算の法人を考えてみましょう。

2026年4月1日から2027年3月31日までの課税期間には、2026年9月30日が含まれています。

そのため、一定の要件を満たせば、この課税期間について2割特例を利用できる場合があります。

つまり法人の場合は、「自社の決算月はいつか」「最後に2割特例を利用できる課税期間はいつか」を確認する必要があります。

2割特例終了後、法人はどうする?

では、2割特例が終わった後、法人はどうすればよいのでしょうか。

基本的には、主に次の2つを検討することになります。

  • 一般課税
  • 簡易課税

「どちらを選べばいいの?」と思うかもしれませんが、これは会社によって答えが違います。

一般課税とは?

一般課税は、実際に売上で受け取った消費税と、仕入れや経費などで支払った消費税をもとに納税額を計算する方法です。

たとえば、

  • 売上にかかる消費税:100万円
  • 仕入れなどで支払った消費税:60万円

だった場合、制度を理解するために単純化すると、

100万円 - 60万円 = 40万円

を納付するイメージです。

実際には、インボイスの有無や課税・非課税の区分なども関係するため、2割特例より経理処理が複雑になる場合があります。

一方で、

  • 仕入れが多い
  • 外注費が多い
  • 大きな設備投資を予定している

といった事業では、一般課税のほうが有利になる可能性があります。

簡易課税とは?

簡易課税は、実際に支払った消費税を一つひとつ使って納税額を計算する代わりに、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使う制度です。

簡単にいうと、

この業種なら、売上のうちこれくらいを仕入れに使っているものとして計算しましょう

という仕組みです。

事業区分代表的な業種みなし仕入率
第1種事業卸売業90%
第2種事業小売業など80%
第3種事業製造業・建設業など70%
第4種事業飲食店業など一定の事業60%
第5種事業サービス業など50%
第6種事業不動産業40%

簡易課税を利用できるのは、原則として基準期間の課税売上高が5,000万円以下など、一定の条件を満たす事業者です。

「簡易課税なら安心」とは限らない

2割特例が終わると、

一般課税は大変そうだから、簡易課税にすればいいのでは?

と考える方もいるかもしれません。

しかし、簡易課税が必ず一番有利になるとは限りません。

たとえば、大きな機械を購入したり、店舗を改装したり、多額の設備投資を行った場合を考えてみましょう。

一般課税では、実際に支払った消費税を仕入税額控除に反映できる可能性があります。

一方、簡易課税は原則として実際の仕入額ではなく、みなし仕入率を使います。

そのため、同じ会社でも、その年の仕入れや設備投資によって一般課税と簡易課税の有利・不利が変わることがあります。

「計算が楽そうだから」という理由だけで決めず、事前に試算することが重要です。

個人事業主には新しい「3割特例」

次に、個人事業主について見ていきましょう。

2026年度の税制改正では、一定の個人事業者について、2027年分・2028年分の消費税申告で「3割特例」を利用できる制度が設けられています。

3割特例では、一定の要件を満たす場合に、納付する消費税額を売上税額の3割とすることができます。

たとえば、売上にかかる消費税額が100万円なら、制度を理解するために単純化すると、

100万円 × 30% = 30万円

を納付するイメージです。

2割特例では20万円だったため、納付割合は増えます。

ただし、2割特例終了後にいきなり通常の計算方法だけになるわけではないという点は、一定の個人事業者にとって重要なポイントです。

3割特例は個人事業主なら誰でも使える?

ここは注意してください。

個人事業主だからという理由だけで、全員が3割特例を利用できるわけではありません。

対象となるのは、インボイス制度をきっかけとして免税事業者から課税事業者となった一定の個人事業者です。

また、売上規模や一定の資産取得など、事業者の状況によって適用できない場合があります。

そのため、

個人事業主だから2027年から自動的に3割になる

と考えないようにしましょう。

法人は3割特例を利用できない

今回の記事で、特に覚えておいていただきたいポイントです。

3割特例は一定の個人事業者向けの制度で、法人は対象ではありません。

つまり、2割特例を利用していた場合でも、その後の流れは次のように変わります。

個人事業主

2割特例

要件を満たせば3割特例

その後、一般課税・簡易課税などを検討

法人

2割特例

一般課税・簡易課税などを検討

この違いが、2026年以降のインボイス対応を考えるうえで大きな分岐点になります。

では、個人事業主は3割特例を選べばいい?

「3割特例を使えるなら、それを選べばいいのでは?」

と思う方もいるでしょう。

しかし、これも一概には言えません。

簡易課税や一般課税のほうが有利になる場合があるからです。

たとえば、簡易課税の第1種事業に該当する卸売業では、みなし仕入率は90%です。

事業の条件によっては、3割特例より簡易課税のほうが納付税額を抑えられる可能性があります。

反対に、大きな設備投資をした年などは一般課税が有利になることもあります。

そのため個人事業主についても、「3割特例・簡易課税・一般課税」を比較することが大切です。

法人と個人事業主の違いを整理

確認項目法人個人事業主
2割特例要件を満たせば対象要件を満たせば対象
終了時期決算期・課税期間を確認原則2026年分まで対象になり得る
3割特例対象外一定要件で2027年・2028年分に対象
一般課税選択肢選択肢
簡易課税要件を満たせば選択肢要件を満たせば選択肢
特に確認したいこと2割特例終了後の計算方法3割特例の対象になるか

一番大きな違いは、3割特例を利用できる可能性があるのは一定の個人事業者だけという点です。

具体例で考えてみよう

制度を理解しやすくするため、説明用の仮想ケースで考えてみます。

仮想ケース1:2割特例を使っている法人

現在2割特例を利用している小規模な法人があるとします。

売上にかかる消費税額が年間100万円なら、2割特例では単純化すると20万円を納付するイメージでした。

しかし、2割特例が終了した後は3割特例を使えません。

そのため、

  • 一般課税ならいくらになるのか
  • 簡易課税ならいくらになるのか

を比較する必要があります。

特例が終わってから考えるのではなく、終わる前に試算しておくことが大切です。

仮想ケース2:2割特例を使っている個人事業主

同じく、売上にかかる消費税額が100万円の個人事業主を考えてみます。

要件を満たして2026年分まで2割特例を利用した場合、単純化すると納付額は20万円です。

その後、3割特例の要件を満たせば、2027年・2028年分は、

100万円 × 30% = 30万円

というイメージになります。

つまり、20万円から30万円へ負担は増えますが、一定期間は3割特例によって急激な変化を抑えられる可能性があります。

※上記は制度を理解するために単純化した仮想例です。実際の納税額は売上構成、税率、仕入れ、事業区分などによって異なります。

今から確認したい4つのこと

1.法人か個人事業主か

まずここで大きく分かれます。

一定の個人事業者なら3割特例を利用できる可能性がありますが、法人にはありません。

2.2割特例を最後に使える課税期間はいつか

特に法人は、自社の決算月を確認してください。

「2026年9月30日」という日付だけで判断しないことが重要です。

3.一般課税なら納税額はいくらになるか

過去の売上、仕入れ、外注費などをもとに試算します。

4.簡易課税なら納税額はいくらになるか

基準期間の課税売上高や業種区分を確認したうえで比較します。

個人事業主なら、対象になる場合は3割特例を使った場合も加えて比較しましょう。

今日やっておきたいこと

まず確認すること

  1. 自分は2割特例をいつまで利用できるのか?
  2. 法人なら「一般課税・簡易課税」のどちらが候補になるか?
  3. 個人事業主なら「3割特例・一般課税・簡易課税」のどれが候補になるか?

この3つを整理するだけでも、2割特例終了後に何を比較すればいいのかが見えやすくなります。

まとめ|2割特例終了後は「法人か個人か」で考える

2割特例は、2026年9月30日までの日を含む課税期間をもって終了します。

ただし、すべての事業者が2026年9月30日に一斉終了するわけではありません。

個人事業主の場合は、要件を満たせば原則として2026年分まで対象となる可能性があります。

法人の場合は、決算月や課税期間によって最後に利用できる時期が変わります。

そして、2割特例終了後の対応は法人と個人事業主で異なります。

一定の個人事業者には、2027年分・2028年分について3割特例があります。

一方、法人には3割特例がありません。

そのため法人では、一般課税と簡易課税を早めに比較しておくことが重要です。

個人事業主についても、「3割特例があるからそれで決まり」と考えず、一般課税や簡易課税と比較して判断したほうがよい場合があります。

大切なのは、2割特例が終わること自体を怖がるのではなく、その後の選択肢を事前に数字で比べておくことです。

準備しておけば、制度が変わってから慌てる必要はありません。

次回|免税事業者との取引は2026年10月からどうなる?

Day3では、「インボイス未登録の取引先とは、今後どう付き合えばいい?」という疑問を取り上げます。

2026年10月からは、免税事業者などからの仕入れに関する仕入税額控除が、80%から70%へ変わります。

そこで、

  • 税負担は実際にどのくらい変わるのか
  • 免税事業者との取引を続けてもいいのか
  • 取引先を変更したほうがいいのか
  • 発注側と受注側は何を確認すればいいのか

をわかりやすく整理します。

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参考情報

この記事は、2026年9月時点で公表されている国税庁・財務省の令和8年度税制改正情報などをもとに作成しています。

  • 国税庁「令和8年度 税制改正特集」
  • 国税庁「消費税簡易課税制度選択届出手続」
  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱」

※税制の適用関係は、売上規模、課税期間、過去の届出、設備投資、事業区分などによって異なります。実際の申告方法や制度選択については、必要に応じて税理士などの専門家へご確認ください。