SDGsを手がかりにCSVを実践するには?中小企業が小さく試す5つの手順

「自社にもできそうな取り組みは思いついた。でも、日々の仕事で手いっぱいで、どこから始めればよいかわからない」。そう感じる経営者や個人事業主の方もいるでしょう。

これまでの記事では、SDGsを社会の課題に気づく手がかりにし、CSVを「相手にも自社にも価値が生まれる方法」として考えてきました。Day3では、飲食店、工務店、相談業の仮想ケースを紹介しました。

Day4は実践編です。困りごとを一つ選び、試す範囲を絞り、相手の反応と自社の負担を確認する。この順番なら、大きな投資を決める前に、取り組みを続けられるか考えられます。

手順1:解決したい困りごとを一つに絞る

最初に、最近お客様や地域の人から聞いた困りごとを書き出します。その中から、自社の仕事と関係が深いものを一つ選びましょう。

例えば飲食店なら、「食べきれる量を選びたい」。修理店なら、「買い替える前に直せるか知りたい」。相談業なら、「選択肢の違いが難しくて判断できない」といった声です。

このとき、「食品ロスをなくす」「地域を元気にする」といった大きな目標だけで止めないことが大切です。目標を具体的な行動に変えるには、誰が、どの場面で、何に困っているかまで言葉にします。

まだ直接聞いた声がない場合は、「お客様はきっと困っているはず」と決めつけず、まず確かめることを最初の取り組みにしましょう。

手順2:相手の声を聞き、思い込みを減らす

取り組みの案を作る前に、困りごとの内容を相手に確認します。大がかりな調査でなくても、日々の会話で聞けることがあります。

  • どんなときに困りますか。
  • 今はどう対処していますか。
  • 現在の方法で、何が使いにくいですか。
  • どのようになれば助かりますか。

例えば、「商品の包装を減らしたい」と考える店があったとします。しかし、お客様に聞くと、贈り物として持ち運ぶために包装が必要な場合もあるかもしれません。その場合は、すべてを一律に減らすより、用途に応じて選べる方法を考えられます。

社会に良いと思う案でも、相手にとって使いにくければ、期待した価値は生まれません。聞いた内容をもとに案を調整することが、CSVを実践するうえで重要です。

手順3:今ある強みで、小さく試す方法を決める

困りごとが見えてきたら、自社がすでに持っている技術、商品、経験、取引先との関係などを確認します。

そして、新しい案をいきなり全面的に導入せず、試す範囲を決めます。

  • 一つの商品やサービスだけで試す
  • 希望するお客様に限って試す
  • 一定の期間だけ試す
  • 既存の業務の一部を変えて試す

例えば、飲食店が料理の量を選べるようにするなら、最初は一品だけで試せます。工務店が住まいの点検サービスを考えるなら、点検する範囲と所要時間を決めて試せます。

小さく試す目的は、早く成果を宣伝することではありません。お客様に役立つか、現場で無理なく提供できるかを知ることです。

手順4:相手への価値と、自社の負担を両方記録する

試している間は、「良さそうだった」という印象だけで判断せず、簡単な記録を残しましょう。

相手への価値を確かめる

  • 何人が利用したか
  • どのような感想や質問があったか
  • 当初の困りごとは軽くなったか
  • 使いにくい点はなかったか

自社が続けられるかを確かめる

  • 提供に何分かかったか
  • 材料費や外注費はいくらかかったか
  • 通常業務にどんな影響があったか
  • 設定した価格で続けられそうか

一人で事業を営んでいる場合、作業にかかった自分の時間も忘れずに確認してください。お客様に喜ばれても、無理な働き方を前提とするなら、方法や価格を見直す必要があります。

記録は複雑でなくて構いません。日付、試した内容、お客様の声、かかった時間、気づいたことを一行ずつ残すだけでも、次の判断に役立ちます。

手順5:「続ける・直す・やめる」を決める

試した後は、次の三つから判断します。

  • 続ける:相手に役立ち、自社にも無理が少ない場合
  • 直す:価値はありそうだが、方法や価格に改善が必要な場合
  • やめる:相手の困りごとに合わない、または続ける負担が大きすぎる場合

一度試してやめることになっても、失敗と決めつける必要はありません。「この方法では相手の役に立たなかった」「この価格では続けられない」とわかれば、次の案を考える材料になります。

判断するときは、「社会に良いことだから続けなければ」と自分を追い込まないでください。事業も人も続けられる形を探すことが、持続可能な取り組みにつながります。

SDGsとの関係は、取り組みの中身が見えてから確認する

試す方法と目的が具体的になったら、その取り組みがSDGsのどの課題と関係するかを確認します。

例えば、食べきれる量を選べるようにする取り組みなら、資源を大切に使うという視点があります。ただし、実際に食べ残しが減ったかを確かめていない段階で、「食品ロスを削減しました」と言い切ることはできません。

まずは「食べきれる量を選べるようにしました」と、実施した内容をそのまま伝えましょう。結果が確認できたら、対象と期間を添えて説明します。

SDGsは、活動を大きく見せるための飾りではありません。自社の仕事が社会のどの課題と関係するのかを考え、取り組みを見直すために活用できます。

同業他社との差別化は、お客様が感じる違いから生まれる

CSVを始めるとき、「他社がしていない活動を見つけなければ」と考えるかもしれません。しかし、最初から珍しい企画を探す必要はありません。

同じ業種でも、お客様の声をどう聞くか、困りごとにどう応えるか、提供後にどう確認するかは事業者によって違います。

例えば、修理の前に費用と選択肢を丁寧に説明すること。必要な量を選べるようにすること。専門的な情報を、判断できる言葉で伝えること。こうした違いは、お客様の体験として伝わります。

差別化を考えるなら、「SDGsに取り組んでいます」という言葉に加えて、お客様は以前より何をしやすくなったのかを確かめましょう。

今日使える「小さく試す」チェックリスト

取り組みの案がある方は、次の項目を確認してみてください。

  • 誰の困りごとに応えるか、具体的に言える
  • 本人の声を聞いた、または聞く方法を決めた
  • 自社の強みや既存の仕事とつながっている
  • 試す商品、対象、期間の範囲を決めた
  • 必要な時間と費用を記録できる
  • 相手に役立ったかを聞く方法がある
  • 試した後に、続けるかどうかを判断する日を決めた

すべてにチェックが付かなくても大丈夫です。空欄になったところを一つずつ埋めれば、取り組みを具体化できます。

まとめ

中小零細企業や個人事業主がCSVを実践するには、身近な困りごとを一つ選び、相手の声を聞き、自社の強みを使って小さく試すことから始められます。

試した後は、相手への価値と、自社にかかった時間や費用の両方を確認します。その結果をもとに「続ける・直す・やめる」を判断しましょう。SDGsとの関係は、取り組みの内容を具体的にしたうえで確認すると、無理のない説明につながります。

よくある質問

Q. 試す前に、SDGsの目標を一つ決める必要がありますか?

必要ありません。先に相手の困りごとと自社が試す方法を具体的にし、その後で関連する目標を確認できます。

Q. お客様の声を聞く相手が少なくても始められますか?

始められます。ただし、少人数の意見だけで「すべてのお客様が求めている」と判断しないことが大切です。小さく試しながら、異なる声も聞いてください。

Q. 無料で提供しないと、社会に役立つ取り組みとは言えませんか?

無料である必要はありません。相手にとって価値があり、内容と価格に納得して利用でき、自社も質を保って続けられるかを考えましょう。

Q. 成果は何を記録すればよいですか?

取り組みの目的に合わせて決めます。利用した人の声や人数、困りごとがどう変わったかに加え、提供にかかった時間や費用も記録すると、継続を判断しやすくなります。

次の記事

Day5では、5日間の内容を振り返り、自社に合う取り組みを選ぶための判断基準を整理します。SDGsとCSVを日々の経営にどう組み込むか、一緒に考えていきましょう。

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