SCS評価制度とは?中小企業が取引先からセキュリティ対策を求められたときの考え方

SCS評価制度とは?中小企業が取引先からセキュリティ対策を求められたときの考え方
「取引先からセキュリティの質問票が届いたけれど、どう答えればよいかわからない」「SCS評価制度が始まると聞いたが、うちも取得しなければならないのだろうか」。そんな疑問を持つ経営者や個人事業主の方もいるでしょう。
Day1では、サプライチェーンは商品やサービスを届ける仕事と取引のつながりであり、小さな事業にも関係することをお伝えしました。Day2では、そのつながりの中でセキュリティ対策を確認するSCS評価制度と、取引先から要請を受けたときの対応を整理します。
最初に確認したいのは、求められている対策の内容、対象となる仕事や情報、対応期限です。制度の名前だけで判断せず、自社の取引に何が必要なのかを具体的にしていきましょう。
SCS評価制度は、対策状況を確認しやすくする仕組み
SCS評価制度の正式名称は「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」です。取引先を通じて起こり得るサイバーリスクに対して、必要な対策と実施状況を共通の基準で確認しやすくする制度で、IPAが運営します。
例えば、取引先に仕事を任せる会社は、預けた情報が適切に管理されるか、その会社で問題が起きても影響を抑えられるかを知りたいと考えます。一方、仕事を受ける会社は、取引先ごとに違う質問票や要求へ対応する負担があります。
制度は、こうした確認の難しさや負担を整理し、サプライチェーン全体のセキュリティ対策の水準を高めることを目的としています。
ただし、評価を受ければ事故が起きなくなるわけではありません。評価の取得と、日々の対策を続けることは、両方必要です。
★3と★4は、何が違うのでしょうか
SCS評価制度では、対策の段階を星で示します。ここでは、運用開始が予定されている★3と★4の評価方法を中心に整理します。
| 比較する点 | ★3 | ★4 |
|---|---|---|
| 評価の進め方 | 自社で対策状況を評価し、制度に登録されたセキュリティ専門家が確認・助言します。 | 評価機関による第三者評価と、技術検証を行います。 |
| 準備の考え方 | ★3の要求事項・評価基準と、自社の実施状況を照らし合わせます。 | ★4の要求事項・評価基準に沿って、審査や技術検証に必要な準備を進めます。 |
| 必要な段階の判断 | 取引先からの要請、任される業務、扱う情報、自社のリスクなどを踏まえて確認します。 | |
「小さな会社なら必ず★3」「大きな会社なら必ず★4」と、会社の規模だけで決めるものではありません。まずは、自社の取引でどの段階が求められるかを確認しましょう。
また、★3は、自社だけで確認して終わる単純な自己宣言ではありません。専門家による確認が含まれる点を押さえておくと、準備の見通しを立てやすくなります。
制度はいつ始まる予定ですか
2026年10月2日時点では、経済産業省は申請受付の開始を2026年度末頃、つまり2027年1月から3月頃と案内しています。IPAのFAQでは、★3・★4の運用開始を2027年3月頃としています。
いずれも予定のため、申請の準備を進める際は、公式サイトの最新案内を確認してください。★5については、要求事項や評価方法、開始時期などが検討中とされています。
今の段階でできるのは、開始日を待つことだけではありません。自社で使う機器やサービス、管理する情報、実施している対策を整理する作業は、取引先への説明にも役立ちます。
制度が始まれば、すべての事業者に取得が必要なのでしょうか
制度開始だけを理由に、すべての会社や個人事業主が一律に同じ段階を取得しなければならない、と考える必要はありません。
一方で、取引先が契約や調達の条件として、特定の段階の取得や対策を求める場合は、自社の取引に関係する要請になります。
ここでは、「制度が始まること」と「自社の取引条件として何が求められるか」を分けて確認することが大切です。具体的な要請が届いたら、その内容を取引先とすり合わせましょう。
取引先から要請が届いたら、五つを確認する
1.何を求められているか
質問票への回答なのか、対策の実施なのか、SCS評価制度の特定の段階の取得なのかを確認します。「セキュリティ対応をお願いします」という表現だけでは、必要な作業が決まりません。
2.どの業務や情報が対象か
取引先から預かる顧客情報、図面、注文データなど、何を守るための要請かを確認します。社内のどの業務やシステムが関係するのか、対象範囲も整理しましょう。
3.いつまでに対応するか
回答期限と対策の完了期限が同じとは限りません。評価の取得を求められた場合も、制度の開始予定や準備に必要な時間を踏まえて確認します。
4.何を提出すればよいか
回答書、社内ルール、対策の記録、制度の登録情報など、確認に必要な資料を聞きます。提出する資料は、求められた目的と範囲に合わせて準備しましょう。
5.費用や実施方法をどう調整するか
新しい対策に費用や作業時間が必要なら、その内容を整理して相談します。すぐに対応できることと、時間が必要なことを分けると、具体的な話し合いができます。
要請が届いたときは、「できません」で終わらせることも、「全部対応しています」と急いで答えることも避けたいところです。現状と不足を把握し、必要な準備を取引先へ説明しましょう。
質問票は「実施済み・未実施・要確認」に分ける
質問票を受け取ると、すべてに良い回答をしなければ、と感じるかもしれません。しかし、実態と違う回答では、必要な改善点が見えなくなります。
まずは、各項目を次の三つに分けます。
- 実施済み:対策が行われており、設定や記録などで確認できる
- 未実施:対策を行っていない、または十分に整っていない
- 要確認:外部の管理事業者などへ確認しないと判断できない
例えば、バックアップについて「自動で保存されているはず」と思っていても、保存対象や復旧方法がわからなければ、まず確認が必要です。
わからないことを確認できる状態に変えることも、対策の一歩です。未実施の項目は、必要性と優先順位を整理し、対応予定を具体化します。
仮想ケース:個人事業主に質問票が届いた場合
ここからは説明用の仮想ケースです。実在する事業者の対応事例ではありません。
一人で制作業を営む事業主に、取引先から「情報管理の状況を回答してください」という質問票が届いたとします。
事業主は、業務用パソコン、メール、オンラインの保存先について、自分で確認できる設定を調べます。外部事業者に任せている部分は、管理範囲や対策状況を問い合わせます。
その結果、「共有先は確認できた」「復旧方法は未確認」「異常時の連絡手順は未整備」と整理できました。
この段階で大切なのは、曖昧なまま回答することではありません。確認できたことを正確に答え、未確認の事項は調べ、未整備の事項は対応方法と時期を相談することです。
従業員が一人でも、扱う情報と仕事のつながりに応じた準備はできます。
同業他社との差別化は、説明の具体性から考える
SCS評価制度の取得やセキュリティ対策だけで、必ず受注が増えるとは限りません。それでも、取引先が確認したいことに具体的に答えられる状態は、取引を判断するための材料になります。
「情報を大切に扱っています」という説明に加えて、共有できる人の範囲、異常時の連絡先、対策を見直す方法などを伝えられれば、実際の管理が見えます。
同業他社との差別化を考えるなら、宣伝文句よりも、質問に正確に回答し、必要な改善を続けられる体制を育てましょう。
今日できること:取引先への確認事項を一枚にまとめる
すでに要請が届いている方は、次の五つを一枚に書き出してください。
- 求められている対策や評価の段階
- 対象となる業務、情報、システム
- 回答期限と対応期限
- 提出が必要な資料
- 費用や実施方法について相談したいこと
まだ要請がない方は、自社が扱う取引先の情報と、情報管理を誰が担当しているかを確認することから始められます。
まとめ
- SCS評価制度は、取引に関係するセキュリティ対策を共通の基準で確認しやすくする仕組みです。
- ★3は専門家の確認を含む自己評価、★4は第三者評価と技術検証を行います。
- 必要な段階は、会社の規模だけでなく、取引先の要請や業務の内容を踏まえて確認します。
- 要請が届いたら、内容、対象、期限、提出資料、費用や実施方法を整理します。
- 対策状況は、実施済み・未実施・要確認に分け、実態に沿って説明しましょう。
よくある質問
Q. 小さな会社なら★3だけを考えればよいですか?
規模だけでは決められません。任される仕事、扱う情報、取引先からの要請などを確認し、必要な段階を判断します。
Q. ★3は自社でチェックするだけで取得できますか?
自社の評価に加え、制度に登録されたセキュリティ専門家による確認・助言が含まれます。具体的な手続きは、公式の案内で確認してください。
Q. 外部の業者に管理を任せていれば、質問票にも任せてよいですか?
技術的な項目は確認や回答の協力を依頼できます。ただし、自社の情報の扱い方や連絡体制など、外部業者だけでは把握できない項目もあります。役割を分けて確認しましょう。
Q. 未実施の項目がある場合、どう答えればよいですか?
実施済みと答えず、現状を正確に記載します。必要に応じて、対応方法や予定時期を整理して取引先へ相談してください。
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Day3では、製造業、店舗、個人事業主などの仮想ケースを使い、どこからリスクが入り、誰へ影響が及ぶのかを具体的に見ていきます。
📩 取引先から届いた質問票や、自社に必要な準備を整理したい方は、LINEで相談するからお気軽にご相談ください。
参考資料
制度に関する情報は2026年10月2日時点の公表内容に基づいています。開始時期、要求事項、手続きの最新情報は、経済産業省・IPAの公式サイトでご確認ください。