サプライチェーンのリスクはどこから来る?中小企業と個人事業主の3つのケースで考える

サプライチェーンのリスクはどこから来る?中小企業と個人事業主の3つのケースで考える
「取引先とのつながりにリスクがあることはわかった。でも、自社では何を確認すればよいのだろう」。そう感じている方もいるでしょう。
Day1では、小さな事業も仕入れ先や外部サービスに支えられていることをお伝えしました。Day2では、SCS評価制度の仕組みと、取引先から対策を求められたときの確認事項を整理しました。
Day3では、製造業、店舗、個人事業主の三つのケースから、問題がどこで起き、誰へ影響するのかを具体的に考えます。
確認する順番は「何に頼っているか」「止まると何が困るか」「誰へ影響するか」「別の方法があるか」です。以下はすべて説明用の仮想ケースであり、実在する事業者の事故や成果を紹介するものではありません。
ケース1:小さな製造会社で、仕入れ先から部品が届かない
問題は自社の外で起きることもある
ある製造会社が、特定の仕入れ先から部品を購入しているとします。仕入れ先でシステムの問題が起き、出荷の確認ができなくなりました。
自社の工場やパソコンは正常でも、必要な部品が届かなければ製造が進まない可能性があります。その結果、自社の納品が遅れ、納品先の作業にも影響するかもしれません。
このケースでは、直接の原因は仕入れ先にあります。しかし、自社が考えるべきこともあります。
- どの部品を、その仕入れ先に頼っているか
- 手元の在庫で、どこまで仕事を続けられるか
- 仕入れ先へ、普段とは別の方法で連絡できるか
- 代わりの調達先や部品を検討できるか
- 納品先へ、誰がどの時点で連絡するか
代わりの仕入れ先があれば、すぐ解決するとは限らない
別の仕入れ先が見つかっても、品質、仕様、価格、納期が合うかを確認する必要があります。取引先の承認が必要な部品なら、独断で変更することもできません。
大切なのは、問題が起きてから初めて調べる事項を減らすことです。重要な部品について、代替の可否と確認先だけでも整理しておけば、判断を進めやすくなります。
自社の中に異常がなくても、外部への依存によって仕事が止まる。これが、サプライチェーンのリスクを考える一つの入口です。
ケース2:小さな店舗で、予約や注文のサービスが使えない
便利なサービスも、仕事を支えるつながりの一部
ある店舗が、予約や注文の管理をオンラインサービスで行っているとします。そのサービスに障害が起き、予約内容を確認できなくなりました。
お店の設備に問題がなくても、来店するお客様の予定や注文内容がわからなければ、接客や準備に支障が出ます。
ここで確認したいのは、次のようなことです。
- 予約や注文の情報を、必要に応じて別の方法で確認できるか
- サービス提供会社の障害情報や問い合わせ先がわかるか
- 一時的に電話や紙で受け付ける方法があるか
- 復旧後に、予約の重複や抜けを確認できるか
代わりの方法には、情報管理も必要
紙の予約表を使うなら、誰が見られるのか、どこに保管するのかを決めます。個人のスマートフォンへ情報を移す場合も、保存や共有の方法を考えなければなりません。
急いで仕事を続けようとして、別の情報管理の問題を作らないことが大切です。必要な情報だけを、決めた方法で扱えるように準備しましょう。
また、障害の原因がサイバー攻撃なのか、機器の故障なのかは、利用者にはすぐわからない場合があります。原因を決めつけず、公式の案内を確認しながら対応します。
ケース3:個人事業主のメールが不正に利用されたら
自社から取引先へ影響が広がることもある
一人で制作業を営む事業主が、メールで仕事を受け、資料をやり取りしているとします。業務用メールのアカウントが不正に利用され、取引先へ本人を装ったメールが送られたとします。
この場合、自分がメールを使えないという問題に加えて、取引先が不審な添付ファイルやリンクを開くなどの影響も考えられます。送受信した情報が見られた可能性についても、確認が必要になるかもしれません。
従業員が一人でも、仕事でつながる相手がいれば、影響は自分の中だけで終わらない場合があります。
「誰へ、どう知らせるか」を先に考える
まず備えとして確認したいのは、次の事項です。
- メールに、利用できる多要素認証を設定しているか
- 取引先の電話番号など、メール以外の連絡先があるか
- 異常に気づいたとき、サービス提供会社へ相談する方法がわかるか
- どの取引先へ、どんな情報を送っているか把握しているか
多要素認証とは、パスワードに加えて別の確認方法を使う仕組みです。利用できるサービスでは、設定方法とアカウントの復旧方法を確認しておきましょう。
実際に異常が起きた場合は、サービス提供会社や専門の支援者に相談し、影響の確認と取引先への連絡を進めます。連絡では、確認できた事実、まだわからないこと、相手にお願いしたい対応を区別することが大切です。
三つのケースに共通する「つながり」の見方
製造会社、店舗、個人事業主では、使う物やサービスは違います。それでも、確認する視点は共通しています。
| 確認すること | 考えるための質問 |
|---|---|
| 頼っている相手やサービス | これが使えないと、何の仕事が進まなくなりますか。 |
| 仕事への影響 | 納品、接客、連絡、情報管理のどこが困りますか。 |
| 影響を受ける相手 | お客様や取引先の、どの仕事に影響しますか。 |
| 代わりの方法 | 別の連絡手段、調達先、受付方法などを使えますか。 |
| 確認と連絡 | 誰が状況を調べ、誰へ知らせますか。 |
会社名を並べるだけでなく、「何を頼っているか」まで書くと、自社にとって重要なつながりが見えてきます。
「外部に任せているから大丈夫」で止めない
パソコンやシステムを外部の事業者に任せている会社もあるでしょう。専門の支援を受けることは役立ちますが、任せている範囲を確認することが必要です。
例えば、機器の保守と、バックアップの管理、取引先への連絡は、それぞれ担当が違うかもしれません。
次の三つを確認してみてください。
- 外部の事業者は、何を管理しているか。
- 自社で判断し、対応することは何か。
- 問題が起きたとき、連絡先と役割は決まっているか。
外部の支援を活かすには、丸ごと任せたつもりにならず、役割の境目を明らかにしておくことが大切です。
SCS評価制度への準備と、事業を続ける準備をつなげる
SCS評価制度は、取引に関係するサイバーセキュリティ対策を確認しやすくする仕組みです。自社の機器、サービス、情報、役割を整理することは、必要な対策を検討する土台になります。
ただし、この記事の確認事項だけで制度の要求事項を満たせるわけではありません。取得を検討する場合は、求められる段階の正式な要求事項・評価基準と照らし合わせる必要があります。
また、仕入れ先の災害や配送の遅れなどは、サイバー対策だけでは備えられません。自社の仕事のつながりを整理したうえで、リスクの種類に応じて対策を考えましょう。
同業他社との差別化は、問題が起きたときの対応にも表れる
「事故を絶対に起こさない」と約束することはできません。それでも、問題が起きたときに状況を確認し、取引先へ連絡し、代わりの方法を検討できる準備には意味があります。
例えば、普段のメールが使えなくても電話で連絡できること。納品の遅れが見込まれるときに、状況と見通しを説明できること。こうした対応は、取引先が次の行動を判断する助けになります。
差別化を考えるなら、対策の宣伝だけでなく、仕事のつながりを理解し、相手に必要な情報を伝えられる状態を育てましょう。
今日できること:止まると困るものを一つ選ぶ
自社の仕事から、止まると困る仕入れ先やサービスを一つ選んでください。そして、次の五つを書きます。
- 相手やサービスの名前
- 頼っている仕事や情報
- 使えなくなったときに困ること
- 影響を受けるお客様や取引先
- 連絡先と、検討できる代わりの方法
わからないところには、「問い合わせる」「契約内容を確認する」と書いておきましょう。すべてを一度に整えるより、一つの重要なつながりを具体的にすることから始められます。
まとめ
- 自社が正常でも、仕入れ先や外部サービスの問題で仕事が止まる場合があります。
- 自社の問題が、お客様や取引先へ広がる場合もあります。
- 頼っている相手、仕事への影響、影響を受ける人、代わりの方法を確認しましょう。
- 外部へ管理を任せている場合も、役割と連絡先を整理することが必要です。
- 問題が起きたときに確認し、説明できる準備は、取引先の判断を助けます。
よくある質問
Q. 取引先が大きな会社なら、安心して任せられますか?
会社の規模だけで、問題が起きないとは判断できません。自社が何を依存しているかと、使えないときの対応方法を確認することが大切です。
Q. 代わりのサービスを必ず契約しておく必要がありますか?
必ずしも必要ではありません。停止したときの影響と費用を考え、別の連絡手段や一時的な作業方法で対応できるかも検討します。
Q. 外部の管理事業者には、何を聞けばよいですか?
管理している対象、バックアップや復旧への対応範囲、異常時の連絡方法、自社が担当することを確認しましょう。
Q. 今日の確認だけで、SCS評価制度に対応できますか?
この記事は、自社のつながりと影響を整理するための入口です。制度への対応は、正式な要求事項・評価基準に沿って、実施状況を別途確認する必要があります。
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Day4では、整理したリスクに対して何から手を付けるかを考えます。限られた時間と予算の中で、優先順位を決め、対策と記録を続ける方法を紹介します。
📩 自社が頼っているサービスや取引先、止まったときの影響を整理したい方は、LINEで相談するからお気軽にご相談ください。
参考資料
本文の三つのケースは、リスクを理解するために作成した仮想ケースです。制度への対応を検討する際は、IPAの公式資料で最新の要求事項・評価基準をご確認ください。