サプライチェーンのリスク対策は何から始める?中小企業が優先順位を決める5つの手順

「取引先や外部サービスとのつながりは見えてきた。でも、対策を全部そろえる時間も予算もない」。そう感じる経営者や個人事業主の方もいるでしょう。

Day3では、製造会社、店舗、個人事業主の仮想ケースを通じて、外部の問題が自社に及ぶ場合と、自社の問題が取引先へ広がる場合を考えました。

Day4では、その整理を具体的な行動へ変えます。仕事への影響が大きいものを見つけ、今の対策を確認し、担当と期限を決めて改善する。この順番で進めると、限られた時間と予算をどこへ使うか考えやすくなります。

手順1:止まると困る業務を一つ選ぶ

最初に、機器やサービスの名前ではなく、仕事の内容から考えてみましょう。

  • 注文を受ける
  • 商品を製造する
  • 予約内容を確認する
  • 取引先へ納品する
  • 請求や入金を確認する

その中から、止まるとお客様や取引先への影響が大きい業務を一つ選びます。そして、その業務に必要な仕入れ先、機器、情報、サービスを書き出します。

例えば「納品する」という業務なら、完成品だけでなく、納品先の情報、配送の手配、連絡手段が必要かもしれません。

業務から考えると、守るべきものと、外部に頼っているものを一緒に確認できます。

手順2:影響の大きさと代わりの方法を確認する

選んだ業務について、次の四つを考えます。

  1. 止まると、誰の仕事や生活に影響するか。
  2. どのくらいの時間なら、別の方法で対応できるか。
  3. 情報が漏れたり、書き換えられたりすると何が困るか。
  4. 代わりの連絡手段や作業方法があるか。

単に「パソコンが壊れると困る」と考えるより、「受注情報を確認できず、今日の出荷が止まる」と具体的にすると、必要な備えが見えてきます。

また、止まることだけでなく、情報が漏れることや、誤った情報を使って仕事を進めてしまうことも確認しましょう。

優先順位は、費用の安さだけで決めません。影響の大きさ、現在の対策の不足、取引先からの期限、実施に必要な時間を合わせて考えます。

手順3:今の対策を「実施済み・未実施・要確認」に分ける

新しい製品を探す前に、現在の状態を確認します。すでに使っているサービスの設定を見直すことで、改善できることもあります。

区分 判断の目安 次にすること
実施済み 設定や記録を確認でき、実際に運用している 確認日と担当を記録し、維持する
未実施 必要な対策や手順が整っていない 対応方法、費用、期限を検討する
要確認 設定や管理範囲がわからない サービス提供会社や管理担当へ確認する

「業者に任せている」「自動で保存されているはず」という状態は、内容を確認するところから始めます。何を、誰が、どこまで管理しているかがわかれば、必要な改善を判断しやすくなります。

小さな事業でも確認したい五つの対策

次の項目は、サイバーリスクへの備えを考える入口です。これだけでSCS評価制度の要求事項を満たせるという意味ではありません。

1.機器とサービスを把握する

業務用のパソコン、スマートフォン、ネットワーク機器、メール、オンラインの保存先などを一覧にします。誰が使い、誰が管理しているかも記録しましょう。

2.更新の状況を確認する

業務に使う機器やソフトウェアが、必要な更新を受けているか確認します。管理を外部へ任せている場合は、対象と対応範囲を問い合わせましょう。

3.アカウントと共有範囲を見直す

利用できるサービスでは、多要素認証の設定を確認します。退職者や使わなくなったアカウント、不要な共有先が残っていないかも見直します。

4.バックアップから戻せるかを確認する

保存していることに加えて、必要な情報を復旧できるかが大切です。重要なデータについて、保存対象、保存先、復旧方法を確認します。

試す場合は、元の業務データを上書きしない別の場所へ復元するなど、通常業務に影響しない方法を管理担当と相談してください。

5.異常時の連絡先を決める

社内の判断者、外部の管理事業者、サービス提供会社、重要な取引先の連絡先を整理します。普段のメールが使えない場合でも、必要な連絡先を確認できるようにしておきましょう。

手順4:担当、期限、確認方法を決める

対策の案が決まったら、「誰かが対応する」で止めず、担当と期限を決めます。

一人で営む事業なら、担当は自分でも構いません。ただし、外部への問い合わせや設定作業が必要なら、依頼する相手も明らかにします。

記録する項目は、次の五つで十分です。

  • 何を改善するか
  • 誰が担当するか
  • いつまでに行うか
  • 費用や作業時間の見込み
  • 何を確認すれば完了と判断できるか

例えば「バックアップを確認する」だけでは、完了が曖昧です。「重要な受注データについて、保存先と復旧手順を確認し、別の場所への復元を試す」と具体化すると、進み具合がわかります。

手順5:記録を残し、短い振り返りを続ける

対策は、一度設定して終わりとは限りません。使うサービスや担当者、取引先からの要請が変われば、見直しが必要になります。

例えば月に一度、短い時間で次を確認する方法があります。

  • 新しく使い始めた機器やサービスはあるか
  • 利用者や共有先に変更はあるか
  • 未実施・要確認の項目は進んだか
  • 取引先から新しい要請は届いていないか

これは、日常の管理を続けるための例です。SCS評価制度などの正式な確認頻度や手順は、該当する要求事項に沿って別途確認してください。

「やったこと」と「まだできていないこと」の両方を残すと、取引先への説明や外部への相談にも役立ちます。

仮想ケース:一人で営む制作業が最初の対策を決める

ここからは説明用の仮想ケースです。

一人で制作業を営む事業主が、「納品する仕事」を最初に選びました。その仕事には、業務用メール、制作データ、取引先の連絡先が必要だとわかりました。

確認すると、メールの多要素認証は設定済みでした。一方で、制作データを復旧する方法と、メールが使えないときの連絡手段は未確認でした。

そこで、まず重要な取引先の電話番号を整理し、保存サービスの復旧機能を確認することにしました。設定変更や追加費用が必要な対策は、その確認結果を見て判断します。

このように、業務と現状を整理すると、最初に何をするか決めやすくなります。

SCS評価制度の準備は、日常の対策と照らし合わせる

取引先からSCS評価制度の特定の段階を求められている場合は、その段階の正式な要求事項・評価基準を確認します。そして、日常の対策がどの項目に関係するか、不足は何かを整理します。

この記事で紹介した五つの対策は、準備の入口です。制度への適合を判断するには、対象範囲、必要な対策、確認に使う資料などを正式な基準に沿って確認する必要があります。

要請の期限がある場合は、取引先への回答準備と、実際の対策を並行して進めましょう。必要な作業に時間がかかるなら、現状と対応予定を具体的に伝えて調整します。

同業他社との差別化は、続けている対策を説明できること

新しい製品を導入したことだけで、安心を十分に説明できるとは限りません。誰が管理し、どう確認し、問題が起きたらどう連絡するかも大切です。

「対策しています」という言葉に加えて、実施した内容、確認日、担当、今後の改善予定を説明できれば、取引先が状況を判断しやすくなります。

対策を記録し、見直す習慣は、日々の仕事の質を整えることにもつながります。

今日できること:一つの対策に担当と期限を付ける

自社の「未実施」または「要確認」の項目から一つ選び、次の一文を完成させてください。

「____の業務を続けるために、____を確認・改善します。担当は____、期限は____です。____を確認して、完了と判断します。」

すぐに設定を変える必要はありません。「管理事業者へ対応範囲を問い合わせる」という確認作業でも、具体的な一歩になります。

まとめ

  • 最初に、止まると影響が大きい業務を一つ選びます。
  • 仕事への影響、情報の扱い、代わりの方法を確認します。
  • 現在の対策を、実施済み・未実施・要確認に分けます。
  • 改善する項目には、担当、期限、完了を確認する方法を付けます。
  • 実施したことと不足を記録し、日々の変更に合わせて見直します。

よくある質問

Q. 費用のかからない対策から始めてもよいですか?

始められます。ただし、安さだけで優先順位を決めず、仕事への影響と現在の不足も確認しましょう。重要な対策に費用が必要なら、内容を整理して計画します。

Q. クラウドに保存していれば、バックアップの確認は不要ですか?

サービスによって、保存期間や復旧機能は異なります。ファイルの削除やアカウントの問題が起きた場合に、何をどこまで戻せるか確認してください。

Q. 対策の記録は、どのように残せばよいですか?

項目、確認日、担当、実施状況、次の対応を一覧にする方法があります。確認資料には機密情報が含まれる場合もあるため、保管先と共有範囲を決めましょう。

Q. この記事の対策を行えば、SCS評価制度の★3を取得できますか?

この記事だけでは判断できません。取得には、正式な要求事項・評価基準に沿った確認と、制度で定められた評価手続きが必要です。

次の記事

Day5では、5日間の内容を振り返り、サプライチェーンのリスク対策を日々の経営にどう組み込むかを整理します。制度対応と事業の継続を、自社に合う計画へつなげていきましょう。

📩 自社の対策の優先順位や、取引先への説明に必要な準備を整理したい方は、LINEで相談するからお気軽にご相談ください。

参考資料

本文の手順は、小さな事業で対策の優先順位を考えるための進め方です。SCS評価制度の正式な要求事項や評価手続きを置き換えるものではありません。