CSR・CSVは大企業だけのもの?小さな会社だからこそ考えたい「社会と商売」の関係

CSR・CSVは大企業だけのもの?小さな会社だからこそ考えたい「社会と商売」の関係
「CSRとかCSVとか言われても、うちみたいな小さな会社には関係ないよ」
そう感じている中小企業の経営者や個人事業主の方は、少なくないのではないでしょうか。
CSRと聞くと、大企業が環境保護活動をしたり、多額の寄付をしたり、立派な報告書を作ったりする姿を思い浮かべるかもしれません。
CSVについても、「社会課題を解決するような新規事業を立ち上げなければいけないのでは?」と考えると、一気にハードルが高く感じられます。
しかし、CSRやCSVを考えることは、必ずしも大きなお金を使った社会貢献活動を始めることではありません。
むしろ小さな会社だからこそ、「自分たちの商売は、誰にどんな価値を提供し、地域や社会とどのような関係をつくっているのか」を一度考えてみることに意味があります。
今回から5回にわたって、中小零細企業や個人事業主の視点から、CSR(企業の社会的責任)とCSV(共通価値の創造)について考えていきます。
難しい理論を覚えることが目的ではありません。
「自分たちの会社なら何ができるだろう?」と考えられるようになることを目指します。
まず結論:CSR・CSVは会社の規模ではなく「事業と社会の関係」を考えることから始まる
CSRやCSVという言葉を見ると、難しい経営理論のように感じるかもしれません。
しかし、中小零細企業や個人事業主が最初に考えることは、それほど複雑ではありません。
「自分たちの事業は、お客様、従業員、取引先、地域、環境などにどのような影響を与えているだろう?」
まずは、ここから考えてみればよいのです。
CSRやCSVを考えるために、最初から専任部署をつくったり、大規模なプロジェクトを始めたりする必要はありません。
今まで当たり前のように続けてきた仕事の中に、すでにCSRやCSVにつながる考え方が含まれている場合もあります。
CSRとは何か?「寄付やボランティア」だけではありません
CSRは「Corporate Social Responsibility」の略で、日本では一般的に「企業の社会的責任」と訳されています。
経済産業省はCSRについて、企業が社会や環境と共存しながら持続可能な成長を図るため、自らの活動による影響について責任を持ち、さまざまな関係者から信頼を得ていく企業のあり方として説明しています。
つまり、CSRは単なる寄付活動ではありません。
たとえば、次のようなこともCSRを考えるうえで重要なテーマになります。
- お客様に対して誠実な商品・サービスを提供する
- 従業員が安心して働ける環境をつくる
- 取引先に無理な条件を押しつけない
- 法令や社会のルールを守る
- 個人情報を適切に扱う
- 廃棄物や資源の無駄を減らす
- 地域との良好な関係をつくる
- 自社の事業が社会や環境へ与える影響を考える
こうして見ると、「それなら、すでにやっている」と感じるものがあるのではないでしょうか。
CSRを考える第一歩は、何か特別な活動を付け加えることではなく、普段の経営や仕事のあり方を社会との関係から見直してみることともいえます。
では、CSVとは何が違うのでしょうか?
CSVは「Creating Shared Value」の略で、日本では「共通価値の創造」などと訳されています。
この考え方を広く知られるものにしたのが、マイケル・E・ポーターとマーク・R・クラマーです。
CSVで重要なのは、社会にとっての価値と、企業にとっての経済的な価値を、事業を通じて一緒につくっていくという視点です。
CSRとCSVは単純に「古い考え方と新しい考え方」と分ければよいものではありません。
この記事シリーズでは、分かりやすくするために、まず次のように考えてみましょう。
CSR:
「私たちの会社は、社会の一員としてどのような責任を果たすべきだろう?」
CSV:
「社会や地域の課題を解決することを、自分たちの事業の価値にもつなげられないだろうか?」
この2つの問いを持っておくだけでも、会社を見る視点が少し変わってきます。
「社会貢献」と聞いた瞬間に難しく考えすぎていませんか?
ここで、中小企業の経営者を想定した説明用の例を考えてみます。
地域で小さな飲食店を経営しているとします。
「社会貢献してください」と言われれば、寄付やボランティアを思い浮かべるかもしれません。
しかし、視点を少し変えてみます。
地元の生産者から食材を仕入れる。
食品ロスが少なくなるよう仕入れ方を見直す。
高齢者でも利用しやすいサービスを考える。
子育て中の人でも働きやすい時間帯を設定する。
地域の人が集まりやすい店づくりをする。
こうした取り組みには、社会や地域にとっての価値があります。
同時に、仕入れの安定、コストの見直し、働く人の確保、お客様からの信頼、地域で選ばれる理由など、経営にもつながる可能性があります。
ここが重要です。
「社会のために何かをする」と「会社のために何かをする」を、必ずしも別々に考える必要はありません。
実は、小さな会社だからできることもあります
大企業には、資金力、人材、ブランド力など大企業ならではの強みがあります。
一方、中小零細企業や個人事業主には別の強みがあります。
たとえば、お客様との距離が近いこと。
地域の変化に気づきやすいこと。
経営者自身が現場を知っていること。
意思決定から実行までが比較的短いこと。
一人のお客様から聞いた小さな困りごとを、商品やサービスの改善につなげられること。
こうした特徴は、社会や地域の課題を見つけるうえで役立つ場合があります。
「社会課題」というと、とても大きな問題を想像してしまいます。
しかし社会課題は、必ずしも世界規模の問題だけではありません。
「近所のお年寄りが困っている」
「子育て中の人が働きにくい」
「この業界では大量の廃棄物が出ている」
「お客様が専門知識不足で商品選びに困っている」
「地域の事業者同士につながりがない」
こうした身近な困りごとの中にも、事業者だからこそ気づけるテーマがあります。
CSR・CSVを考えることが「同業他社との差」を考えるきっかけになる
価格、機能、品質だけで比較される市場では、中小企業は厳しい競争になりやすいものです。
そこで考えたいのが、
「なぜ、この会社から買うのか」
という理由です。
もちろん、CSRやCSVに取り組めば自動的に差別化できるわけではありません。
社会貢献をアピールするだけで、お客様に選ばれるとも限りません。
大切なのは、社会的な取り組みと、本業で提供している価値がつながっていることです。
たとえば環境への配慮を掲げている会社なら、広告で「環境にやさしい会社です」と伝えるだけではなく、実際の商品設計、仕入れ、包装、配送、廃棄などの中に、その考え方が表れていることが重要です。
その積み重ねによって、
「この会社は何を大切にしているのか」
「他社とはどこが違うのか」
が少しずつ明確になっていきます。
CSRやCSVは「良いことをしている会社に見せるための活動」ではなく、自社がどんな価値を社会に提供する会社なのかを考え直す機会にもなります。
「余裕ができたら始めよう」では遅いのでしょうか?
ここで誤解してほしくないのは、「すべての中小企業が今すぐ大規模なCSR・CSV活動を始めるべきだ」という話ではないことです。
資金にも人材にも限りがあります。
本業を圧迫するほど無理をしてしまえば、継続できません。
だからこそ、小さな会社では「新しい社会貢献活動を増やす」という発想から始めないことが大切です。
まず見るべきなのは、今の事業です。
商品。
サービス。
仕入れ。
働き方。
お客様との接し方。
取引先との関係。
地域とのつながり。
その中から、
「もう少し良くできることはないだろうか?」
「お客様や地域が困っていることと、自分たちの得意なことを組み合わせられないだろうか?」
と考えていきます。
これなら、大きな予算がなくても始められます。
今日やってみてほしいこと
難しい資料を作る必要はありません。
紙を1枚用意して、真ん中に「自社の事業」と書いてみてください。
そして、その周りに次の5つを書きます。
- お客様
- 従業員・一緒に働く人
- 取引先
- 地域
- 環境・社会
それぞれについて、
「私たちの仕事によって、この人たちにどんな良い影響・悪い影響があるだろう?」
と考えてみてください。
さらに、もう一つ。
「この人たちが困っていることで、自分たちの仕事だから解決できることはないだろうか?」
と考えてみます。
ここで出てきた答えが、これからCSRやCSVを考えていくための材料になります。
まとめ+要約
CSR・CSVは、大企業だけが行う特別な社会貢献活動ではありません。
CSRは、自社の活動が社会や環境、お客様、従業員、取引先、地域などに与える影響を考え、社会の一員として責任ある事業を行っていく考え方です。
CSVは、社会や地域の課題を解決することと、企業の経済的な価値を事業の中で結びつけて考える考え方です。
中小零細企業や個人事業主の場合、最初から大規模な活動を始める必要はありません。
まずは現在の事業を見ながら、「誰にどのような影響を与えているか」「身近な困りごとを自分たちの仕事で解決できないか」を考えるところから始められます。
そして、その取り組みが本業の価値と結びつけば、「なぜこの会社を選ぶのか」という理由につながる可能性もあります。
よくある質問
Q. CSRは寄付やボランティア活動のことですか?
それだけではありません。CSRには、法令遵守、人権への配慮、働く環境、取引先との関係、環境への配慮、消費者への責任、地域との関係など、幅広いテーマが含まれます。
Q. 個人事業主でもCSRを考える必要がありますか?
「企業」という言葉にとらわれすぎる必要はありません。事業を行えば、お客様、取引先、地域などとの関係が生まれます。その関係の中で、自分の仕事が与える影響を考えることには、事業規模にかかわらず意味があります。
Q. CSRとCSVはどちらをやればよいのでしょうか?
どちらか一方だけを選ばなければならない、と考える必要はありません。まず責任ある事業のあり方を考え、そのうえで社会や地域の課題と自社の事業価値を結びつけられないか考える、という見方もできます。
Q. お金に余裕がなくてもできますか?
できます。最初から新しい活動に予算をかけるのではなく、現在の仕入れ、働き方、商品、サービス、廃棄物、お客様対応などを見直すことから始められます。
Q. CSRやCSVに取り組めば売上は上がりますか?
取り組むだけで売上が上がるとは限りません。社会的な価値と、お客様が感じる価値、自社の強み、事業としての継続性が結びついていることが重要です。CSRやCSVを単なる宣伝手段として考えないことも大切です。
次の記事
ここまで読んで、
「考え方は分かった。でも、CSRとCSVの違いがまだ少し曖昧だ」
と感じた方もいるかもしれません。
それで問題ありません。
次回のDay2では、「CSRとCSVは何が違うのか?」を、中小企業や個人事業主の身近な仕事に置き換えて整理します。
CSRを「会社の責任」、CSVを「社会貢献しながら儲けること」と単純に分けてしまうと、本来の意味を見失うことがあります。
自社では何をCSRとして考え、どこからCSVにつなげられるのか。
Day2で、その土台をつくっていきましょう。
📩 「自社の場合、CSRやCSVをどう考えればいい?」「今やっている活動もCSR・CSVになる?」など、あなたの状況に合わせて整理したい方は、LINEで相談するから気軽にご相談ください。
内部リンク案
「CSRとCSVの違い」 → Day2の記事
「中小企業ができるCSR・CSVの具体例」 → Day3の記事
「自社でCSR・CSVを始める方法」 → Day4の記事
「CSR・CSVを経営や差別化につなげる考え方」 → Day5の記事
Sources / Evidence
経済産業省「価値創造経営、開示・対話、企業会計、CSR(企業の社会的責任)について」
CSRの基本的な定義・考え方の確認に使用。
中小企業庁委託資料「CSR(企業の社会的責任)と人権」
中小企業に関係するCSRの考え方、人権尊重、法令遵守、情報開示、環境への配慮、社会貢献などの範囲の確認に使用。
Michael E. Porter & Mark R. Kramer, “Creating Shared Value,” Harvard Business Review, 2011
CSV(Creating Shared Value)の基本概念について確認。
※CSR・CSVは幅広い概念であり、機関や研究者によって整理方法や重点の置き方が異なる場合があります。本記事では、中小零細企業・個人事業主が実際の経営に置き換えて理解しやすいよう整理しています。