年末調整・確定申告で使える控除を再確認。今から集めたい資料と手続きの分け方

年末調整・確定申告で使える控除を再確認。今から集めたい資料と手続きの分け方【Day2】
「生命保険料控除証明書は取ってあるけれど、ほかに何が必要なのだろう」「医療費やiDeCoも、会社に出せばよいのだろうか」。準備を始めると、こうした疑問が出てきます。
控除の名前をすべて覚える必要はありません。まずは、今年どのような支払いがあったかを振り返り、関係する資料を集めることから始めましょう。
確認のポイントは、「対象となる支払いか」「誰が負担したか」「年末調整と確定申告のどちらで手続きするか」の3つです。
Day2では、身近な控除と必要資料を整理します。すでに支払っているものを確認し、手続きの漏れを減らしていきましょう。
まず、年末調整で扱う控除と、確定申告で扱う控除を分けましょう
年末調整の対象となる会社員やパート勤務の方は、勤務先に所定の申告書などを提出することで、各種控除を反映できます。
ただし、すべての控除を勤務先で手続きできるわけではありません。
| 控除の例 | 給与所得者の主な手続き | 確認したい資料など |
|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 年末調整で申告可能 | 生命保険料控除証明書 |
| 地震保険料控除 | 年末調整で申告可能 | 地震保険料控除証明書 |
| 社会保険料控除 | 年末調整で反映・申告可能 | 給与天引きの記録、自分で支払った保険料の資料など |
| iDeCoなどの掛金に関する控除 | 年末調整で反映・申告可能 | 掛金払込証明書など |
| 配偶者・扶養親族などに関係する控除 | 年末調整で申告可能 | 本人や家族の所得見積額、年齢など |
| 医療費控除 | 確定申告で手続き | 医療費通知、領収書、補てん額が分かる資料など |
| 寄附金控除 | 原則として確定申告で手続き | 寄附金の受領証など。ふるさと納税はワンストップ特例も確認 |
この表は一般的な整理です。個人事業主など、確定申告で所得と控除をまとめて申告する方は、該当する資料を申告用に保管してください。
年末調整後に確定申告をする場合も、年末調整済みの内容を含めて全体を確認します。同じ支払いを重複して加算しないよう注意しましょう。
1.生命保険料・地震保険料は、証明書の記載を確認します
保険料の控除は、口座から引き落とされた金額を、そのまま入力すればよいとは限りません。
生命保険料控除証明書では、一般・介護医療・個人年金の区分と、新制度・旧制度の区分を確認します。複数の契約がある場合は、保険会社ごとではなく、該当する区分ごとに整理しましょう。
地震保険料控除も、証明書に記載された対象保険料を確認します。火災保険料の全額が、そのまま控除対象になるわけではありません。
どちらも、実際の保険料負担者などの条件が関係します。家族名義の契約がある場合は、名前だけで判断しないようにしてください。
今からできる準備は、次の3つです。
- 令和8年分の証明書がそろっているか確認する。
- 電子データで受け取る契約がないか調べる。
- 契約変更後の金額や、申告に使う欄が不明なら保険会社に聞く。
控除のために契約を増やす前に、今ある契約の証明書を正しく確認しましょう。
2.社会保険料は「給与天引き分」と「自分で払った分」を分けます
給与から差し引かれた社会保険料は、通常、勤務先で把握されています。一方、自分で支払った国民年金保険料や国民健康保険料などは、別途確認が必要です。
例えば、転職までの期間に支払った保険料がある方は、給与天引き分だけで確認を終えないようにしましょう。
国民年金保険料などは控除証明書を確認し、そのほかの保険料も、支払額が分かる通知や記録をまとめておきます。
家族の保険料を支払った場合も、誰の保険料かだけでなく、誰が実際に負担したか、どの方法で支払ったかが関係します。家族の年金から天引きされた保険料などを、自分が支払ったものとして扱わないよう注意してください。
家族間で同じ支払いを二重に申告しないためにも、負担者を確認しておくことが大切です。
3.iDeCoは、生命保険の「個人年金」と別の控除です
iDeCoと個人年金保険は、どちらも老後の準備として使われますが、申告上の区分が異なります。
iDeCoの本人が支払う掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象です。生命保険料控除の個人年金保険料の欄に入れるものではありません。
また、対象となる小規模企業共済の掛金も、この控除に関係します。事業の経費と個人の所得控除を混同しないようにしましょう。
確認したいのは、その年に支払った対象掛金と証明書です。給与天引きなどで勤務先が把握している分がある場合は、別に入力して重複させないよう、勤務先の案内に従ってください。
まだ加入していない方は、「年末だから急いで加入すれば、すぐ今年の控除にできる」と決めつけないことが大切です。手続きや初回の払込み時期、加入条件を確認し、将来の資金計画に合うかを考えましょう。
4.医療費は、領収書だけでなく給付金なども整理します
医療費控除を確認したい方は、医療費通知や領収書を、受診した人や医療機関ごとに整理しておきましょう。
「医療費が10万円を超えなければ関係ない」と思っている方もいるかもしれません。しかし、総所得金額等が200万円未満の場合には、その5%が差引基準となります。10万円だけで対象外と決めないようにしてください。
また、支払った医療費からは、入院給付金や高額療養費など、医療費を補てんする金額を差し引いて計算します。
ただし、補てん額は、その給付の目的となった医療費を限度に差し引きます。余った給付金を、関係のない別の医療費から一律に差し引くわけではありません。
資料をまとめる際は、次を区別しておきましょう。
- 誰のために、誰が医療費を支払ったか。
- いつ、どの医療機関などに、いくら支払ったか。
- どの医療費に対して、いくら補てんされたか。
医療費通知の記載と領収書を重ねて集計し、同じ医療費を二重に数えないことも大切です。領収書などは、申告後も必要な期間の保存を続けてください。
5.寄附は「支払った記録」と「手続きの予定」を確認します
寄附金控除に関係する支払いがある方は、寄附先、寄附した日、金額、証明書の受取状況をまとめましょう。
ふるさと納税でワンストップ特例を利用する方は、申請したかどうかも確認してください。寄附しただけで、その後の手続きがすべて終わるわけではありません。
医療費控除などのために確定申告をすると、ワンストップ特例の申請は無効になります。その場合は、特例を申請した分も含め、その年のふるさと納税を寄附金控除の計算に含めて申告する必要があります。
また、控除には上限があります。年末の寄附を追加する前に、今年の所得やほかの控除などを踏まえて確認しましょう。
6.家族に関係する控除は「昨年と同じ」で済ませないようにしましょう
配偶者や子ども、親などの状況が変わった方は、家族に関係する控除も確認が必要です。
例えば、次のような変化はありませんでしたか。
- 配偶者が働き始めた、勤務時間を増やした。
- 家族が副業を始めた、事業の売上が変わった。
- 子どもがアルバイトを始めた。
- 結婚、離婚、就職、退職などがあった。
年末調整では、年末までの見込みを含めた所得確認が必要になる場面があります。給与だけでなく、ほかの所得がないかも家族と確認してください。
税法上の扶養と、健康保険などの扶養は別の仕組みです。一つの基準だけで、すべて判断しないようにしましょう。
令和8年分の申告書や勤務先の案内を使い、不明点は提出前に確認することが大切です。
経費の領収書と、控除の証明書は分けて管理しましょう
個人事業主や副業をしている方は、「仕事の経費」と「個人の所得控除」を分けて整理すると、申告準備が進めやすくなります。
仕事に必要な支出は、業務との関係を確認して必要経費を計算します。一方、生命保険料控除などは、所得控除として別に確認するものです。
同じ支払いを経費と所得控除に重複して計上しないよう注意してください。
開業届を出すことと、各種控除が使えることも同じではありません。会社員やパート勤務の方でも、条件を満たせば利用できる控除があります。
今日できること:資料を「そろった・待っている・確認が必要」に分けましょう
すべての資料が届くまで、準備を待つ必要はありません。手元にある資料を、次の3つに分けてみてください。
| 状態 | 進めること |
|---|---|
| そろった | 対象年分と記載内容を確認し、提出・入力用にまとめる |
| 待っている | 発送・取得時期と、電子データで受け取れるかを確認する |
| 確認が必要 | 疑問点、確認先、確認する予定日をメモする |
提出期限までに証明書が届かない場合は、自己判断で省略せず、勤務先や発行元に対応方法を確認しましょう。
紙と電子データが混在する場合も、「どこに保存したか」が分かるようにしておくと、後から探す手間を減らせます。
よくある質問
Q1.控除証明書があれば、記載金額がそのまま戻ってきますか?
いいえ。証明書は、対象となる支払額などを確認する資料です。所得控除額の計算と、実際の税負担への影響は別に考えます。
Q2.夫婦のどちらに控除を付けるか、自由に選べますか?
税率だけで自由に選べるものではありません。実際に誰が負担したかなど、控除ごとの条件に沿って判断します。同じ支払いを二人で重複して申告することはできません。
Q3.医療費控除を受けるために確定申告をする場合、副業も確認が必要ですか?
必要です。一定の給与所得者に関する20万円以下の申告不要の取扱いに該当していても、確定申告を行う場合は、その副業所得も原則として申告に含めます。控除だけでなく、所得全体を整理しましょう。
Q4.控除資料が多く、何から始めればよいか分かりません。
まず、勤務先の提出期限を確認し、届いている証明書を一か所に集めてください。その後、今年支払った医療費や寄附、自分で支払った社会保険料などを順番に確認すると進めやすくなります。
まとめ+要約
- 控除は、対象となる支払い、実際の負担者、手続き方法を分けて確認しましょう。
- 生命保険料、地震保険料、社会保険料、iDeCoなどは、証明書や支払記録を整理します。
- 医療費は補てん額も確認し、寄附はワンストップ特例と確定申告の関係に注意します。
- 家族に関係する控除は、今年の所得や家族の変化を反映させましょう。
- 資料を「そろった・待っている・確認が必要」に分けると、次の行動が明確になります。
年末調整や確定申告の準備では、新しく支出を増やすより、すでに支払ったものを正しく確認することが先です。
今日、証明書を一枚確認することからでも構いません。分からない点を残したままにせず、必要な相手に確認していきましょう。
次回は「副業20万円」の誤解と、収入・経費の整理を取り上げます
Day3では、給与と業務委託の違い、収入と所得の考え方、所得税と住民税の申告について、具体例で整理します。
「売上が少ないから何もしなくてよい」と思い込まず、自分に必要な確認を進めていきましょう。
控除資料の整理で迷っている方へ
「何の証明書か分からない」「保険や家計の資料も一緒に整理したい」という方へ。
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最初のご相談では、マイナンバーや口座番号などを送らず、確認したい内容をお知らせください。個別の税務判断や申告書作成は税務署・税理士、年末調整の提出方法は勤務先にご確認ください。