「BCPを決めてもどうせ守れない」を解消する、無理のない訓練と見直し

はじめに

BCPをつくる前から、次のように考えてしまうことがあります。

「大地震が起きたら、計画どおりにはいかない」
「忙しい社員が内容を覚えられるとは思えない」
「一度つくっても、すぐに古くなる」
「守れない計画なら、つくっても意味がない」

確かに、災害時にBCPの内容をすべて予定どおり実行することは難しいでしょう。

しかし、BCPの価値は、計画書に書かれた手順を一字一句守ることではありません。

事前に考え、試し、問題を見つけ、修正することで、会社の対応力を高めることにあります。

1.計画どおりにいかないのは当然

災害の規模、発生時間、従業員の居場所、設備の被害は、発生するまで分かりません。

平日の昼間に起こる場合と、休日の深夜に起こる場合では、必要な対応が異なります。

会社の建物が無事でも、仕入先、道路、電気、通信が止まる可能性があります。

そのため、BCPは「未来を正確に予測する計画」ではありません。

想定外の状況でも、優先順位を考えて判断できるようにするための準備です。

計画どおりにいかなかったから失敗なのではありません。

計画と現実の違いから、次の改善点を見つけることが重要です。

2.守れない計画になる主な原因

担当者だけが内容を知っている

総務担当者が一人で計画書をつくり、ファイルに保管しただけでは、災害時に他の社員が動けません。

連絡先が古い

退職、異動、取引先の担当変更などにより、連絡先は変わります。

年に一度でも確認しなければ、必要な相手へ連絡できない可能性があります。

実際に試していない

安否確認システムを導入していても、社員がログイン方法を知らなければ使えません。

バックアップを取っていても、復元を試していなければ、データが使えるか分かりません。

内容が複雑すぎる

災害発生直後に、何十ページもある文書を読み込む余裕はありません。

初動で必要な内容と、復旧段階で必要な内容を分ける必要があります。

実行できない前提になっている

社員全員の出社、通常と同じ生産量、特定の一人による承認など、災害時には難しい条件を前提にしていると、計画全体が機能しなくなります。

3.負担の少ない訓練方法

訓練というと、大がかりな避難訓練を想像するかもしれません。

しかし、短時間の確認でも効果があります。

安否確認の送信訓練

指定した日時に安否確認を送り、社員が回答できるかを確認します。

回答率だけでなく、回答方法が分からなかった人や、通知を受け取れなかった人を確認します。

連絡網の確認

緊急連絡先が正しいか、担当者と代行者へ実際に連絡できるか確認します。

机上訓練

会議室やオンライン会議で、仮の災害状況を提示し、参加者で対応を話し合います。

例えば、次のような想定です。

「平日の午後2時に大地震が発生。社屋は立入禁止。停電が続き、社長とは連絡が取れない。主要取引先から、明日までに納品可否を知りたいと連絡があった」

この状況で、誰が何を確認し、どのような順番で判断するか話し合います。

データ復元の確認

バックアップしたデータを、別の端末で開けるか確認します。

バックアップが存在するだけでなく、実際に業務へ戻せることが重要です。

代行訓練

普段の担当者が不在という前提で、別の社員が業務を行います。

これにより、作業が特定の社員だけに依存していないかを確認できます。

4.訓練で確認するポイント

訓練は社員を評価する試験ではありません。

計画の弱点を見つけるためのものです。

次の点を確認しましょう。

  • 連絡は届いたか
  • 誰が責任者か分かったか
  • 必要な情報を見つけられたか
  • 判断に迷った点は何か
  • 特定の人がいないと止まる業務は何か
  • 代替手段は本当に使えるか
  • 取引先へ説明できる情報はそろっているか

「社員が手順を間違えた」で終わらせず、「なぜ迷ったのか」「計画の書き方や共有方法に問題はなかったか」を確認します。

5.見直しを習慣にする方法

BCPの見直しを特別な業務にすると、後回しになりやすくなります。

そこで、既存の業務に組み込みます。

例えば、次のような時期です。

  • 人事異動や入退社があったとき
  • 新しい設備やシステムを導入したとき
  • 新しい拠点を開設したとき
  • 主要な仕入先が変わったとき
  • 年度計画を見直すとき
  • 防災訓練を行った後
  • 実際に地震や停電を経験した後

半年または一年に一度、経営会議や全体会議で確認する方法もあります。

見直しでは、計画全体を書き直す必要はありません。

連絡先を更新する、代行者を変更する、バックアップ方法を追加するといった小さな修正でも、実効性は高まります。

中小企業庁も、計画の認定後に訓練と見直しを行い、実効性を高めることが不可欠としています。

まとめ+要約

BCPは、書かれた手順を完全に守るためのものではありません。

大規模地震では、想定どおりに進まないことが前提です。

重要なのは、計画を試し、実行できない部分や判断に迷う部分を見つけ、少しずつ直すことです。

訓練は、大がかりである必要はありません。

安否確認、連絡網の確認、机上訓練、データ復元、担当者不在の代行訓練など、短時間で実施できるものから始められます。

守れない計画を放置するのではなく、守れない理由を見つけて、実行しやすい形へ変えることが大切です。

FAQ

Q1.訓練はどのくらいの頻度で行えばよいですか?

会社の規模やリスクによりますが、少なくとも定期的に実施し、人事異動やシステム変更などがあった際にも確認することが望まれます。安否確認だけを短時間で行うなど、内容を分けても構いません。

Q2.訓練で社員が間違えた場合はどうしますか?

個人を責めるのではなく、なぜ迷ったかを確認します。説明不足、情報の見つけにくさ、権限の不明確さなど、仕組みの問題を改善する機会にしましょう。

Q3.忙しくて見直す時間が取れません。

既存の会議や人事異動時の手続きへ組み込む方法があります。一度に全体を直さず、連絡先や担当者など、変化した部分だけを更新することから始めましょう。