BCPをつくって終わりにしない。会社を強くするBCMという考え方

はじめに

BCPをつくると、ひとまず安心したように感じます。

しかし、会社の状況は毎年変わります。

従業員が入れ替わる。
取引先が変わる。
新しい設備やシステムが入る。
新しい商品やサービスが始まる。
事務所を移転する。
働き方が変わる。

会社が変わっているのに、BCPだけが数年前のままであれば、災害時に役立たない可能性があります。

そこで大切になるのが、BCMという考え方です。

BCMは、計画書を一度つくることではありません。

事業継続の取り組みを、経営の中で継続的に管理し、改善していくことです。

1.BCMとは何か

BCMとは「事業継続マネジメント」のことです。

BCPをつくり、従業員へ共有し、訓練を行い、問題を見つけ、見直すという一連の活動を継続する考え方です。

BCPが「計画」だとすれば、BCMは「計画を使える状態に保つ経営活動」と考えると分かりやすいでしょう。

例えば、次のような取り組みがBCMに含まれます。

  • 災害リスクを定期的に確認する
  • 重要業務を見直す
  • 責任者と代行者を更新する
  • 従業員へ内容を共有する
  • 安否確認や机上訓練を行う
  • バックアップを復元できるか試す
  • 訓練や実際の災害で分かった課題を修正する

2.BCPとBCMの違い

BCPとBCMは、対立するものではありません。

BCPを実際に役立つものとして維持するために、BCMが必要です。

例えるなら、BCPは地図です。

しかし、道が工事で変わったり、目的地が変わったりすれば、古い地図だけでは正しく進めません。

BCMは、現在地と道の状況を確認し、必要に応じて地図を書き換え、実際に歩けるか試す活動です。

「BCPをつくったから大丈夫」ではなく、「今の会社で、このBCPは使えるか」と問い続けることが重要です。

3.BCMに取り組む経営上のメリット

経営上の弱点を早く見つけられる

BCMを続けると、災害対策だけでなく、日常業務の弱点も発見できます。

  • 一人しかできない仕事
  • 一社に依存した仕入れ
  • 更新されていない顧客情報
  • 復元できるか分からないデータ
  • 社長不在で止まる承認
  • 故障すると代わりがない設備

これらを改善すれば、災害だけでなく、病気、退職、故障、通信障害などへの対応力も高まります。

従業員が安心して働きやすくなる

災害時の行動や連絡方法が共有されていれば、従業員は「何かあったとき、会社はどうするのか」という不安を減らせます。

また、本人と家族の安全を優先する方針を明確にすることで、会社への信頼にもつながります。

取引先へ説明しやすくなる

取引先から災害対策について確認された際に、単に「BCPがあります」と答えるだけでなく、次のように説明できます。

「毎年、緊急連絡先を更新しています」
「年に一度、安否確認訓練を行っています」
「重要データの復元確認をしています」
「主要設備が使えない場合の代替方法を検討しています」

このような具体的な取り組みは、取引先にとって安心材料になります。

投資の優先順位をつけやすくなる

防災対策には、費用がかかるものもあります。

しかし、すべてを一度に導入する必要はありません。

事業への影響が大きい弱点から対策することで、限られた予算を効果的に使えます。

例えば、地震による棚の転倒が重要設備の破損につながるなら、まず固定対策を行う。データ消失が事業停止につながるなら、バックアップと復元確認を優先する、といった考え方です。

変化に対応できる組織になる

BCMでは、正解を一度決めて終わるのではなく、状況に合わせて改善を続けます。

この習慣は、災害対策以外の経営にも役立ちます。

問題が起きる前に弱点を確認し、小さく試し、結果を見て修正する組織は、環境変化への対応力も高まります。

4.小さな会社でもできる改善の流れ

BCMを難しく考える必要はありません。

次の四つを繰り返すだけでも、備えは少しずつ強くなります。

一つ目:決める

安全方針、重要業務、責任者、代替手段を決めます。

二つ目:共有する

経営者や担当者だけでなく、実際に動く従業員へ伝えます。

三つ目:試す

安否確認、机上訓練、データ復元などを行います。

四つ目:直す

試して分かった問題を修正します。

例えば、安否確認の回答率が低ければ、社員の意識が低いと決めつけるのではなく、通知方法や回答手順を見直します。

代行者が業務を行えなければ、手順書や必要な権限を整えます。

この小さな改善の繰り返しがBCMです。

5.今日から始める三つの行動

最も止めたくない仕事を一つ決める

売上、顧客への影響、社会的な役割などを踏まえ、自社で最も優先する仕事を一つ決めます。

社長が不在でも判断できる人を決める

第一、第二の代行者を決め、どこまで判断してよいかを共有します。

15分の話し合いを行う

次の問いを、経営者と担当者で話し合います。

「明日、大地震で会社へ一週間入れなくなったら、何を最初に確認するか」

この問いだけでも、連絡、データ、設備、顧客、仕入先など、準備すべき課題が見えてきます。

最初から完璧な計画を目指す必要はありません。

大切なのは、考え始めること、試すこと、見直すことを止めないことです。

まとめ+要約

BCPは、災害時に重要な事業を継続し、早期に復旧するための計画です。

一方、BCMは、BCPを共有し、訓練し、見直し、改善し続ける経営活動です。

会社の人員、設備、取引先、商品、働き方は変化します。そのため、一度つくったBCPをそのまま保管しているだけでは、実際の会社と合わなくなります。

BCMとして継続的に見直すことで、災害への対応力だけでなく、属人化、仕入先への依存、データ管理、権限集中など、日常の経営課題も改善できます。

BCPを完成させることをゴールにせず、「今の会社で本当に使えるか」を確認し続けることが大切です。

計画は一度で完成させるものではありません。

会社とともに育てるものです。

FAQ

Q1.BCPとBCMは、どちらから始めればよいですか?

まずは簡単なBCPをつくり、共有、訓練、見直しを始めましょう。その一連の取り組みがBCMになります。

Q2.BCMの担当部署を設ける必要がありますか?

必ずしも専任部署は必要ありません。小規模な会社では、経営者、総務、現場責任者などが役割を分担して進める方法があります。ただし、最終的な方針には経営者の関与が欠かせません。

Q3.一度にどこまで改善すればよいですか?

事業への影響が大きく、比較的取り組みやすい課題から始めましょう。安否確認、データのバックアップ、代行者の決定など、一つずつ改善する方法で構いません。